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2005年02月04日(金)
『ヴィタール』3回目

『ヴィタール』@K's cinema

新宿での上映最終日・最終回。ああもっとリピートしたかったなあ。

やっぱり音は新宿の方が好み。予告編の音と全然レベルが違う!極端!金属音もよりキンキンしている。

今回はふたりのお父さんの方にぐーっと心情が寄ってしまった。特に大山さん家のお父さん(三郎)。娘も奥さんも亡くして、ひとりになったお父さんが、「あっちの世界」にいる涼子と会ってきた博史の話を静かな表情で聞いている。あっちで娘は何をしているのか、どんなダンスを踊ったか。博史は楽しそうにその様子を話している。この部分の音は入っていなくて、実際には博史が何を喋っているかは判らない。

その後の三郎が、献体を申し出て亡くなった時の涼子のことを話すシーンがとても印象に残った。ノーカットの長回し、長台詞。多分手持ちのカメラで、向き合っている博史と三郎の周りを撮って行ってるんだけど、いいなあ、ここ。三郎の表情、博史の表情。亡くなった奥さんのことを話す時、ぴたりのタイミングで背景に奥さんの遺影が入り込む。計算され尽くしている。國村さんの声も耳にすーっと入ってくる。

しかしここ、集中して観て・聴いていたら、定期的に摩擦音が入っているのに気が付いた…何だろう?衣擦れみたいな音。音声も一緒に録っていたとしたら、撮影者(=塚本監督?)のすり足の音が入っちゃったとか?ああ気になるよ!でもそういう音が入ってるとこももはや好きだね!

閑話休題。ここを観ていて、死ぬってのは、何もかも置いてっちゃうってことだよなあとしみじみ思った。こういうひとの思いも置いていってしまうんだ。置いてけぼりにされたひとたちは、その思いをどうにかして昇華させようとする。でも、それは無理だ。思いのやり場がない。そしてそれを抱えたまま、そのひとも死んで行くんだなあ。

一方、博史のお父さん(隆二)は生きながらにして「あっちの世界」と「こっちの世界」を行き来している息子をどうしたものか困惑している。もともと事故の前から「段々分からないとこに行っちゃうようで、怖かった」息子だったので、対処も難しい。しかし、最終的には涼子の遺体を片付けず、献体を最後迄やらせてあげていた。これも息子への思いが為せたことだ。

そんな思いは形にはならない。しかしそれがまるで映像に映し込まれているかのような感じすらした。こっちの思い入れが強いってのもあるけど、塚本監督の作品って、映像にはならないものが映像になっているような感じがするんだよね…例えば匂いとか、味とかが映像を通して伝わってくるような。あー好きだ好きだ好きだ。

あとやっぱ浅野さんが凄かったな…何て言えばいいんだろう。ホントにあっちとこっちを行き来してるみたいだったーなんて月並みなことしか言えませんが!髪も瞳も不思議な色をしていて、それがまた効果的と言うか…。博史はあれからどうなるのかな。「まだまだ生きなきゃなんない」博史は。

そういえばmeowさんとこで読みましたが、初日舞台挨拶後に、ロケハンについてmeowさんが質問したそうです。涼子が踊る沖縄の廃屋、あれは仕込みじゃなくて本当にあのまんまの場所があったんだって。見た途端監督は「ここは撮らなきゃダメだ!」と思ったそうです。ビバロケハン!ちなみに「お化けが出る」そうです(笑)が、行ってみたーい!

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■ロケハンで思い出した
以前塚本特集オールナイト@シネアミューズで、塚本監督のトークショウがあった時、『BULLET BALLET』のラスト、ふたりが別々に走って行くシーンの背景の壁に「生」って落書きがしてあって、それってわざと書いたんですか?っててらてらが質問したんだよ(笑)「『生きろ』ってメッセージですか?」って。塚本監督と川原助監督が顔を見合わせて大笑いでしたよ…。
「ああ、気付いちゃいましたか…あれは最初っからあった落書きです。わざとじゃありません。連日の徹夜でへろへろになって編集してて、ああ、写ってんなあ、『生』って…と思ってましたけど、消すに消せないんで」「あっ、でも、いいですね。『生きろ』ってメッセージ!それでいいです」
とのことでした(笑)ビバロケハン