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2003年04月20日(日)
『オネーギンの恋文』(DVD)

オペラにもなっているアレキサンダー・プーシキンの「エヴゲニー・オネーギン」が原作です。19世紀のロシアが舞台。厭世観でい〜っぱいのオネーギンが田舎娘のタチヤーナに手紙で告白されますが、「いや僕は…」てな感じで断っちゃう。ところが数年後出会った彼女は美しく成長していた!しまったやっぱり僕とつきあって!どうにでもして!と今度は自分から手紙を書くオネーギン。しかし〜、しかし彼女は既に人妻〜。「遅すぎたわ〜」とか言われちゃって泣いちゃうオネーギン、ぼんやりするオネーギン、街をさまようオネーギン。そんなオネーギンをレイフ・ファインズが優雅に惨めに演じています。

ああっ本当におまえはダメなコだよ!とエドワード・ノートン@レッド・ドラゴンばりに叱りつけたくなりますがね。しかしそこはファインズ力(なんだそれ)根無し草だけど決して下品にならないんだな〜。これ微妙なさじ加減ですんごくだらしないダメ男になっちゃう危険性がありますよ(ダメ男はダメ男だけどな…)。遺産で暮らす放蕩貴族で、ああ社交界はつまんねえ田舎の詩人は鈍くせえし歌は下手だしああやだやだって感じなんだけど、実際彼の芸術を見る目は豊かだし、社交界が苦手なのも、そこのひとたちの上っ面ばっかりなところを見抜いてるからで。そこらへんの品の良さ、鋭さはしっかり出ていたなあ。

と言いつつタチヤーナとペテルブルグで再会した時は一変。タチヤーナは自分の従兄弟と結婚していて、その従兄弟は社交界でもいい位置にいる様子。対して自分は放浪帰りで地位も名誉もない。「あ、ボンクラだ」と陰口叩かれてたりして情けない〜。そそくさとパーティをあとにするオネーギンの惨めなことよ…この落差を見事に演じていて、流石だなと思いました。

あとよく考えれば、あのオネーギンの召使いがねえ。あんな放蕩くんによく付いててくれるもんだよ…まあ仕事だけども。温かい目で見守ってやってね…これからも宜しくね…と思ってしまう程でした。ほらオネーギン失恋してしょぼくれてるからさ!あなたが面倒見てやらないと寒いのに外に出っぱなしとかで風邪ひいちゃうからさ!頼むよ!

タチヤーナ役のリヴ・タイラーはかわい美しかった〜。序盤はしっかりと田舎娘がハマッていたし。美人だけどどこか鈍くさい、愛想のない彼女がオネーギンに出会ってああドキドキする!熱を帯びた視線にはこっちがドキドキする!彼女のような女性には生きにくい時代だったのね…大変だね…。

手紙を運ぶ子供のスローモーションが印象的。ここ以外にもスローモーションが多用されていました。雪景色に映えてます。あと決闘時の着弾が妙にリアルで怖かった。その後レンスキーの死体を覗き込むオネーギンの表情がやりきれなかったな〜、元々は自分の皮肉が原因だったけどね…。しかしロシアの決闘シーンをきちんと観たのは初めてでして(チェーホフの『三人姉妹』とかは、決闘シーンは舞台にはあげないし)この時代はこんな事してたんかい!やめれ!とかしみじみ思いましたよ…やめれ!やめれ殺し合いは!(泣)プーシキン自身も決闘で命を落としたそうですが…。

それにしても…7本目にしてやっと脱いでないファインズさんを観ることが出来ましたよ(笑)下着と言うか、肌着姿はあったけどね。19世紀ロシアの貴族はああいうのを着てるんだあとまじまじと見たりして。ここ、タチヤーナに会いに行こうとおめかしするシーンなんだよね。これがね〜、えっらい思い詰めた表情でおめかしすんのよ…け、けなげだ…(涙)

動物好きの条件(って何…)は犬でクリア(笑)飼っている犬にニコニコして餌をやってます。かわいいねえ〜。

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そしてこれ、DVD特典映像がめっちゃくちゃおいしいです。この作品が出品された、1999年東京国際映画祭(『オネーギンの恋文』は最優秀監督賞を受賞)での記者会見の模様が収録されています。レイフと、レイフの妹マーサ・ファインズ監督のインタビュー。ま…マーサそっくり!美形!そしてお兄さんより強そうだ!(笑)CMやミュージックビデオを多数手掛けているひとだそうで、受け応えもビシッビシッと明確。打てば響く感じ。そして自分が関係ない話題の時は腕を掻いたりよそ見をしてたりのマイペースっぷりです。ちっちゃい頃は(今でもか?)兄さんより強かったに違いない(ブルブル)「ちょっと兄さん部屋片付けてよ!」「う〜ん眠いよ〜」とかな…(妄想)。ちなみに音楽もレイフの弟(マーサの兄)・マグナスが手掛けています。兄弟総出です。ピアノ演奏のクレジットにもマヤ・ファインズってひとがいたんだけど、何か関係あるのかしらん。

レイフ兄さんはこの作品のエグゼクティヴ・プロデューサーも務めているので、資金繰りについても一生懸命喋ります。しかし慣れていないのか、うっかり「資金を出してくれた会社が倒産しちゃったんだ〜」とか言っちゃって、マーサに「違う!」と突っ込まれた後しどろもどろ。「ええと、僕らのが直接の原因ではなくて〜」とかへなへな話しておりました。うわ〜普段はこんな感じなのね〜(ニヤニヤ)俯きがちで、なかなか前向かないのね…で、ちらちら上目遣いで(うが〜)記者団の様子を伺ったりしてさ!

役についての質問には思慮深い受け応え。オネーギンもそうだけど、社会から必要とされていない人物に興味があるんだ、と言ってました。これよく言ってますね。ああ私はあなたに興味がありますよ!(壊)

あ、あと劇中に出てくるオネーギンの落描きと言うかスケッチはレイフ本人が描いたものだそーです。普段もちょくちょく描かれているそうですね。手慣れてていい感じです。