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2003年04月18日(金)
『ベイビー・オブ・マコン』

『セブン』を観た帰りにスパゲティを食べて友人にいや〜な顔をされた自分ですが(無意識だったんだよ…悪気はなかったんだよ…)『コックと泥棒、その妻と愛人』を観た後は、流石にごはん食べたくなくなりました。『ZOO』もそうだった…悪趣味の権化(ほめてます)、キッツイのでなかなか軽い気持ちで頻繁には観られない、でも観ると確実に面白い。そんな変態監督ピーター・グリーナウェイ作品と久々のご対面。ファインズが出てるって言うから…。以下ネタバレです。

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不毛、不妊の田舎町マコンに久し振りの赤子が生まれる場面から物語は始まる。『ベイビー・オブ・マコン』と言う舞台劇を上演しているのだ。娘は本当の母親から赤子をとりあげ「この子は神の使いだ、自分が処女懐胎したものだ」と言う。恩恵を賜ろうとたくさんの人々が娘のもとに集まる。金の亡者と化した娘は「金持ちになれる!金持ちになれる!」と連呼する。

娘は赤子の出生を疑う司教の息子をヨゼフに見立て、自分はマリアを気取って地下室へ連れていく。地下室はキリストが生まれた馬小屋を模し、藁が敷き詰められ、牛やロバ、羊、あひるたちが歩き回る。娘は本当に処女で、多分女を知らないであろう司教の息子を誘惑するのだが、そこへ現れた赤子が奇跡の力を使って牛を操り、司教の息子を惨殺してしまう。

司教の息子を殺した牛を、後に赤子をも殺した娘は罪に問われ、姦死刑に処せられる。死んだ赤子は、恩恵を求める町のひとびとから服を剥がされ、髪を切り取られ、腕を、足をもがれ、最期迄搾取し続けられる。

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バックステージでは役のない役者が役を求めて歩き回る。芝居見物に来ていた、後のフィレンツェ大公・コシモもいつしか舞台上の役者と言葉を交わし、結果的には物語のクライマックスを提案する形になる。どこ迄が芝居なのか?現実なのか?それを取り囲んでいるのは観客なのか?群衆なのか?姦死刑シーンの前、娘役の女優は「もう終わりよ、カーテンで仕切られているこちらは客席からは見えない」と言うが、それも空しく彼女は208人の男に強姦されることになる。

絢爛豪華な衣裳、装置。17世紀のバロック的美術が圧倒的。舞台中継の趣もあるのでワンカメラで退きの長回しが多用されている。よって役者の顔のアップはあまりない。かなりエグいシーンもあるのだが、豪奢な画面、そして話を進める力がとにかく強力。全然退屈しなかった。…それもどうかと思いますが(笑)

さてファインズさん。司教の息子!コスチューム・プレイが映えるね〜、ドレスっぽい白い衣裳が似合い過ぎ!シルエットがとても美しい。脱いだら脱いだで綺麗な身体だし(笑)劇中劇の体裁だったこともあり、声の張らせ方とかは舞台のそれなんだろう、かなり濃いです。特に序盤の、娘と言い争いをするところ。頭でっかちな息子だね〜ってイヤ〜な感じがよく出ています(笑)ああ舞台で観てみたい…。

娘に誘惑されるシーンではちょっとぎこちなくてかわいいですよ。赤子が現れた時は「いやんどうしよう!」って感じでまごまごするし(大笑)娘の身体についた藁をさりげなくとってあげたりしてます、優しいのね。ああそれなのにあんな最期。まあね、毅然としてた割にすぐ誘惑に負けちゃったからね…ダメじゃん。それにしても動物たくさん出てきたな〜、ファインズさんは動物に囲まれて嬉しかったですかね(それどころなシーンじゃありません)。

映画の真ん中辺りで死んでしまいますが(涙)最後の挨拶で、死化粧を施された彼が運ばれてきます。これがこの世のものとは思えないほど(まあ死んでるから最早この世のものじゃないんですが)美しい!舞台がはねて、登場人物は役者に戻り、笑顔でカーテンコールに応える。でも、牛と娘、司教の息子は立ち上がらない。あ、後味悪〜。

あと娘役のひと、『レジェンド・オブ・フォール』に出ていたジュリア・オーモンドでした。彼女も舞台畑のひとだったんですね。腹から声が出てましたよ〜、世俗的すぎるマリアを力演してました。こ、怖かった。凄かった。

面白かった〜。でも腹いっぱいです。また当分は観ないでいいや、グリーナウェイ作品(笑)