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2003年03月17日(月)
『映画はこうしてつくられる Vol.5 六月の蛇』(2)

続きです。

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■『六月の蛇』

22〜23歳の時考えていた/『鉄男』は28歳くらいの時だからもっと前/「ストーカーの役は俺」/当時撮っていたらもっと、歯と歯茎の間から何か水、液体が出るようなえっぐいのを撮っていたかも/今撮ったからたおやかな、やわらかい、枯れる直前のものが(笑)/「暴力とエロ」/『鉄男』と根幹は同じ、鉄のない鉄男/自分としては逆行してると言われると思っていた/武藤「とても洗練された映像になったなと」

白黒のエロ写真/ヘルムート・ニュートン、マン・レイ/これも後付け(笑)/白黒でヌードを撮りたい/女性だけにエロの商品価値があると言うのではない/

ラスト/20年前はりん子さんのマンションにストーカーが入ってきて、台所にあるもの〜ナイフとかフォークで抵抗しようとしたらそれをとりあげて/「フォークで自分の頬を刺しニワトリの奇声をあげる」ってト書きを/りん子さんも「参りました」ってなるじゃない?そんなんされたら/ダンナが助けにきて/逃げる/羊たちの沈黙のレクター博士のように、街に出ていく/だったんだけど

正方形のフレームにしたかった/常にワンショット/1人しか映っていない/1×1のフレーム/武藤「市川崑監督がやってたような…」/技術的に問題があったのと言うのと、やりすぎ?恣意的?狙いが見え見え?/スタンダードサイズにした

予告編はハリウッド映画の予告編を専門に作っているひとに敢えて依頼してみた/王道のやり方/わざとどうなるかなと言う遊びも/武藤「荘厳な感じになりましたねえ」

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■黒沢あすかさん

武藤「キャスティングが意外だった」

『TOKYO FIST』の主役候補、最後の3人に残っていた/中性的な歴代のキャストの中でやや女性より/古くさい言い方だけどピュア、染まっていない/今回は女性的なエロティシズムを求めていたのでイタリア女!と/体つき/肉体的/水泳やってて肩ががっちり/太股もばっちり/脚をがっと開いて立った時に大地に根付いている木のような/土の匂いのする

誰もやってくれないだろうと思っていた/蹂躙されるシーンがあるし/頼むのが怖かった/牽制しつつ/黒沢さんは「りん子は女性であると思うし、りん子は私である」と、そこ迄言ってくださった/1つだけ「このシーンはやれない」って言われた/任せてくれれば僕は撮れる自信があった/むしろ何でもやりますって言っといて、現場で嫌だって言うようなひとより信用できた/ここをカットして、それで全てが繋がるのなら/それならと

ヴェネチアではモテモテ/配給会社の机でごはん食べてたら同席したイタリア男が皆もじもじしてた/ゼアリズのクサカベさんに「黒沢さんをイタリアに連れてきてくれたらあんたにマンション1つやるから」って言うひともいた/黒沢さんにじゃないんですよ、クサカベさんにマンションくれるって/金持ちだって言ってましたけど/目がハート/顔が真っ赤/イタリア人が皆大喜び/公開拡大/プリント20本

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■神足裕司さん

頭のよさそうな演技をするひとじゃなくて、本当に頭のいいひとに/演技が出来なくても/頭のいい顔を持っているひとを/ブヨブヨの身体/顔/肉体/髪/これがほしかった/どうしても撮りたかった/美しい/磨きたい/磨いて撮りたかった/産毛を剃ってハゲをはっきりさせた/カチッと、ツルッと/女のひとが眉を描くやつで線をひいて、こっから剃ってって/ソ連のトランジットで見た白黒っぽいTVに映っていたアナウンサーのイメージ/ロシア/ドストエフスキー/地位がある/立派な格幅のひと/そのひとが崩れていくさまを撮りたかった

本人は喜んでやってくれたみたい/40歳過ぎたらもう楽しいことなんてないと思ってたみたい/まだ45くらい?僕とそんなに変わらないのに

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■小説『六月の蛇』

小説の大変さ/入魂/脚本と違う/映画を作る苦労を紙の上で/脱稿した時は、もう二度と書かなくていいと言う喜び/小説も書く監督のことを、映画で全て、の筈が何故小説を書くの?と思っていた/それを考えながら/答えが出るかな/ひとにやれと言われて、いい機会だとやってみた/わかんなかった/でも魔力が/皆物語が好きなんだ/物語/演劇的とよく言われた/実際舞台をやっていたし/CMの仕事を始めて物語をおいてけぼり/映画を撮る喜びをとっておくためにCMでは物語を遠ざけた/例えば母親の話すおとぎ話は子供にとってとてつもないエンタテイメント/母親の声のキツネの「コン」って音とか/物語の得体の知れない魅力/それにあらがえない/だから小説を書いた

「説明でなく描写でなければならない」/映像で描写するか文章で描写するか/文章だからと言って説明的になるのではなく/「る」「た」/過去形ではなく現在のことを定着させるため

リズムが大事/描写/ただ書きゃいいってんじゃない/リズムを活かすためにどんないいシーンでもカットすることも大事/企業秘密ぐらいのことを言うと/「それじゃ繋がんねえよ」ってよく言うでしょ?でもリズムの方が大事/武藤「ジャンプカットってありますもんね」/自分で編集やっててうまく繋がると「すご〜い、生きてるみた〜い」とかって/自己満足に陥りやすい、うまく繋がったな〜で終わってしまう/やりたいテーマ、流れの方が大事/犠牲にするのも大事/捨てる/だから短い映画になる/同じ感動を貰えるなら短い方がいい

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まだ続きます。