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2001年12月18日(火)
『四谷怪談』

はいはい続きです。蜷川演出。

蜷川さんの芝居は全部観るぞ!と毎年思うのだけど、いつも何本か取りこぼすのよね…。今年の上演本数は6本。入院で『ウィンザーの陽気な女房たち』を鴻上さんに任せてなければ7本ですよ!仕事やり過ぎじゃー!結局『三文オペラ』『ハムレット』を逃した。キー!今年で66歳のじーさんがすげーよなーと思うものの、ここ数年の蜷川さんは死への準備を始めている様に感じる。“NINAGAWA”を知らしめた過去の代表作を、ことごとく新演出で上演している(『四谷怪談』は約30年振り)。新しい役者ともどんどん組んでいる。『マクベス』の唐沢さんへの口説き文句が「はやくやらないと俺死んじゃうからさ」だったって言うしね(苦笑)。不吉とかそういうんじゃなくて、きちんと自分の人生に責任持っている美意識を感じるな。勝手な憶測だけどね…。「伝説になるのが嫌いなんだよ畜生!」って江戸っ子調でね(いや埼玉出身だけど(笑))。

戸板返し、仏壇返し、提灯抜け、着ぐるみのねずみ(これには正直ビビッたが(笑)だって大活躍なんだもん!とんぼ返りすんだもん!)と歌舞伎の様式を使いながら(これは『四谷怪談』の仕掛けのお楽しみでもあるのでやっぱ客もやってほしいし演出でもやりたいよね)、そのタネも皆見せちゃおうと言うイタズラ心が満載で思わずニヤリ。ステージの下半分をぶった切って奈落を丸見えにし、回り舞台を人力でまわしてるの迄見せちゃうんだもん。しかもそれがもう回る回る、ド、ドリフ?みたいな(大笑)。竹中さんとムラジュンもヒゲダンスするしね!なんかこれ観てると、所詮ひとひとりの人生なんて誰かの掌でくるくるまわされてるもんに過ぎないよなあなんてしんみりしてしまう。伊右衛門も、いろんなひとを貶めたけど成り上がる事は出来なかったしね。それにしてもよく回ったな…回すひともう大変(笑)。そのグルグル舞台転換を暗転せず、照明で舞台と客を遮る形式で全部見せてしまう。この照明がすっごい綺麗で鳥肌たった。

スカパラの音楽はバッチリ。庶民の目線、市井のひとびとのテーマ曲にスカパラは絶対ハマると思っていたけど、実際に現物を目にすると本当に楽しくてゾクゾクした。殺陣んとこのブレイクビーツものが無茶苦茶格好よかった。そうそう、この最後の伊右衛門と與茂七の斬り合いシーンは、今迄ごちゃごちゃに込み入っていたセットを一瞬にして全部とっぱらって裸舞台!この舞台転換どうやったの?わかんねえ!面白過ぎる!なんにもない舞台上で、役者ふたりとねずみが美しい照明の中でビュンビュン飛び回る迫力は凄かった。実際の動きよりスピーディーに見えるのは、そう見せられる役者の身体のセンスなんだろうな。粋だったー。

殺陣と言えば、竹中さんは左利きなので動きがちょっと合わせづらそうだった様に見えたのは気のせいかな。間違うと大怪我なのでヒヤヒヤして観ていた。うーんうーんやっぱりもう一度観たいなー。立ち見で4時間はツラいよなー、歌舞伎みたいに幕見させてくんないかなー(苦笑)。

ああ面白かった、蜷川さん、もっともっと長生きして面白い舞台を沢山見せてくださいよ、でももうちょっと本数少なくしてもいいよ…身体に気を付けて。なんて言うと「うるせえ!」って怒鳴られそうだけど。