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■ それでも、おもいでとは違って。
あの人が結婚したのは もう3年も前の、秋の日だった。 日にちだってまだ忘れてない。 あたしは泣くことすらできなくて 苦しくて苦しくて仕方なくて あの人のためになる何かを探すことで なんとか自分を繋ぎ止めてた。
もうその頃にはとっくに あたしたちの関係は終わっていて というより、きっと今考えてみると あたしたちの関係、なんて大層なものは なにひとつ、始まっていなかったんだと思う。
誤解できるほど 勘違いできるほど今はこどもじゃなくて、 でも冷静になれるほどおとなでもなくて。
あの頃ね、 あたしのことを もしかしたらほんの、ほんの少しでも あなたが好きでいてくれたりしないかなあって。
それだけでよかったんだよ。 そうやって、考えるだけで あたしは前に進めたし 誰よりも幸せになれたし あなたをずっとずっと好きでいられるだけの 「理由」だってつくれた。
事実なんて後からついてくるもので たとえば3年経った今、23歳になったあたしが ようやく、何も始まっていなかったと気付いたように
あの頃、幸せだと思った日々も 馬鹿みたいに辛くて泣いた日々すら その時、あたしがそう「感じた」ってことに 意味があったような、気がするんだ。
今、たとえその行為が どんなに馬鹿みたいに思えたとしても
その瞬間、あたしが選んで あたしが感じてとった行動なら
あたしは絶対後悔しなくて、 あたしはきっと明日も、十年後だって笑っていられる。
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あたしはあの人の奥さんを知ってる。 子供は写真で見ただけだけど。
大切にしてるあなたが、どこかで好きだった。 あたしのことは平気で切り捨てるくせに、 大事なものとそうでないものの区別がすごく明確で 要らないと思ったらすぐに切り捨てるくせに、 奥さんと子供のことを すごく大切にしてるあなたが好きだった。 どこかで相反するふたつの気持ちを あたしはいつも抱えてた。
あたしのことも、大切にしてほしかったけど、 もちろんそれはそうだけど 大切なものを大切にする そんなあなただから好きなのかもしれない。
そんな風に、思ってた。
だから、 デスクの上の子供の写真。
あなたに似ていて。 奥さんよりはどちらかと言うとあなたに似ていて。
素直にかわいいって 思えるようになったのに。
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相反するふたつの気持ちが ひとつになった瞬間に
あたしはもっと不幸になった。
信じてたものだけは 守りたかった自分と 壊してしまった自分と。
知らなかったほうが幸せだったのか。
あたしはもう、迷ってない。
いちばんずるいのは あのひと?
それとも、あたし?
2004年01月25日(日)
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