江草 乗の言いたい放題
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2007年04月03日(火) ダムを飲み込むダム        ブログランキング投票ボタンです。いつも投票ありがとうございます。m(_ _)m 携帯用URL by Google Fan

 青森県と秋田県の県境付近は白神山地と呼ばれ、広大なブナの原生林が広がっていて自然遺産に指定されている貴重な地域である。ただ、全体の面積は13万haもあるのにユネスコの世界遺産(自然遺産)に登録された地域はそのうちのわずか1万7千ha(169.7km²)に過ぎない。指定外の地域では開発や破壊が行われてるのが現状である。ちなみに白神山地が世界遺産に登録されたのは1993年であり、この時同時に指定されたのは法隆寺、姫路城、屋久島である。それだけでもどれほどこの白神山地の自然が日本にとって貴重なものであるかがわかるだろう。

 ところがここに巨大なダムが計画されているのである。しかもそのダム、津軽ダムというのは実に馬鹿馬鹿しい目的で造られる予定なのである。オレがいつも語ってるイナカモンドリームが炸裂するこの馬鹿事業のために、そして田舎の土建屋や利権議員どものために1600億円もののゼニが使われ、貴重な自然環境が破壊されるのである。すでに買収が完了したのか地元民たちの多くは反対の声をあげることもなく、むしろ歓迎ムードなのである。さて、この津軽ダム建設がいかに馬鹿な事業であるかを説明しよう。

 津軽ダムの建設予定地は現在存在する目屋ダムの60m下流である。それを聞いて「えっ?」と思うのが普通の人間の反応である。もともと存在するダムとたった60mしか離れていない場所になぜダムなんかいるのか。それはこの津軽ダムというのが、ダムを飲み込むためのダムだからなのである。以下東奥日報の提灯記事を紹介しよう。読んでいて腹立たしく思うならばあなたの感覚は正常であり、なんとも思わなかったらすでにあなたもイナカモンドリームの毒に冒されていることは間違いない。

津軽ダム新年度本体工事着手へ
国が二〇一六年度完成を目指す西目屋村の津軽ダムは、〇七年度から本体関連工事に着手する。一九八八年度の実施計画調査着手から約二十年の歳月を経て、総事業費千六百億円規模の巨大プロジェクトが具体的に動きだすことになり、地元関係者からは、世界自然遺産・白神山地と並ぶ地域資源として早期完成への期待が高まっている。
 津軽ダムは、現在の目屋ダムの約六十メートル下流側に、洪水調節や農業用水確保のため高さ(ダム堤体高)九七・二メートルの新ダムを建設するもの。〇七年度の同ダム建設事業費は三十七億二千万円。
 国土交通省東北地方整備局津軽ダム工事事務所の阿部幸雄所長は「千六百二十億円に上る総事業費のうち五百億円余りが支出済みだが、〇八年度に本体工事に着手すれば、ピーク時の年間事業費は百五十億円規模になる」と説明する。
 〇七年度の主な事業は、ダム建設用コンクリート骨材を採取する「原石山」への進入路約一・四キロと、ダム建設場所からの掘削土砂搬出や資材搬入に使う進入路約〇・八キロの整備。これらの工事は、ダム建設に向けた付け替え県道が完成する今年七月以降に着手するほか、ダム本体関係の調査設計や猛禽(もうきん)類などの環境調査も予定している。


 どういうことかおわかりになっただろうか。昭和38年に完成した目屋ダムはすでに大量の土砂で埋まってその貯水量のかなりの部分が機能しなくなっている。それで超巨大なダムを下流に造って、現在のダム湖をすっぽりと覆ってしまうということなのだ。そのために1600億円掛けるのだ。おそらく今度造ったダム湖が同様に堆砂で埋まってしまえばさらに巨大なダムを下流に、今度は3000億円くらいの規模で造るのだろう。一回ダムを造れば寿命は約40〜50年、そしてそのダムが埋まればまた次の土木事業ができるというわけでこのダム建設は地元の土建屋にとって打ち出の小槌みたいなものなのである。

 オレは津軽ダムで検索を掛けてみて津軽ダム工事事務所というWEBサイトを発見した。壮絶な破壊プロジェクトをを行う連中が「世界遺産白神山地の大きなふところに抱かれて自然の恵みと毎日の暮らしを潤し未来への支えとなりたい」とわざわざ書いているのである。なんと矛盾したことを言う連中だろうか。これは強姦魔が「女性の人権を守れ」と主張するのと同じレベルの茶番劇である。オレはあまりのむちゃくちゃさにあきれてしまったのである。
 
 昭和38年に目屋ダムを造ったのにその後も洪水などの被害が度重なったのはなぜか。それはダムによって治水できるという発想が間違っていたからである。目屋ダムの上流に造られた弘西林道はブナの原生林をかなり破壊して開通したのだが、その建設の結果として頻繁に崖崩れが起きるようになり、それが堆砂を増やしてダムの寿命を縮めることとなったことを忘れてはならない。建設は途中でストップしたが、さらに白神山地をぶちぬく青秋林道を造るという計画もあったのだ。もしもそんなものが造られていたらいったいどうなったのか。おそらく世界遺産の指定からははずれていただろう。

 自然林が持つ洪水などの調節機能を破壊したのは他でもない人間の側である。そこに目屋ダムが存在するということが既に壮大な環境破壊だったのであり、その反省をするどころか現在の状況を勘違いしてさらに大きな破壊で応えようとしてるしているのである。まともな頭で考えればそのオカシサに気づくわけだが、ゼニの誘惑に負けるとそんな当然のことが見えなくなるのである。何しろこの総事業費1600億円のダム工事が始まれば、毎年100億以上のゼニが地元に落ちるわけだ。ちなみに西目屋村の人口は1599人(平成17年度)、ダムの総事業費は1600億円だから村民一人あたり1億円ということになる。なんとも大盤振る舞いしたものである。

 不思議なことは、オレがネットでこの津軽ダムの検索をしても、なぜか建設工事反対運動のサイトにはたどり着けないのである。もしかしたら反対運動が存在しないということなのだろうか。ダム周辺に棲息する貴重な動植物についての記事は発見できるのだが、だからどうこうするという内容の記述はない。そのうちオレはこれらの記事が全部八百長であるような気がしてきたのである。ただ単に「このような貴重な生物が確認されましたよ」という報告で終わっていて、ダム建設によってそれがどうなるのかという肝心の部分が抜け落ちているのである。これらの御用調査は「いちおう調査はしました」という単なるアリバイ作り程度の意味しか持たないのである。

 イナカモンドリームをなんとしても実現したいというイナカモンのスクラムは強力だ。地方議員や土建屋を巻き込んでなんとしても巨額の税金を国から引っ張ってこようとする。それだけの税金を投入する意味などないのにである。1600億円もそんなものに使うくらいなら、毎年50億円ずつの農業補助金を30年ばらまけばいいのである。30年ごとにダムを作り替えるのとほぼ同じ経費で環境破壊なしに効果が上げられるだろう。オレはいつも思ってるのだ。「そんなにゼニが欲しいのならみんなくれてやれ!そのかわり環境はそのまま維持してくれ!」と。イナカモンたちも何もしないでゼニだけもらえるのならその方が嬉しいはずである。

 こんなダム建設に簡単にGOサインを出したところを見ると世界遺産白神山地の破壊はこれからもどんどん進むだろう。中国からは黄砂と酸性雨がやってきて日本海側の森林を痛めつけている。我々が後世に残せる自然としていったい何が生き残るのだろうか。


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