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| 2003年11月05日(水) ■ |
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| ツーショット写真 |
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ある年の夏、マウンドにあがってたった1球を投げただけで試合を終わらせてしまった2年生ピッチャーがいた。
予想外の大差をつけられた終盤、急遽彼はマウンドにあがった。エースは、のちにプロに進む好投手で、当時も注目されていた。そのため、彼の出番は公式戦初だったはず。ところが、第一球は物の見事にフェンスオーバー。規定より、コールドゲームが成立してした。
彼のことが気になった。新チームになると、彼はキャッチャーにコンバートされていた。試合を見るにつれて気づいた。彼はすごく気が強く、気性も激しい。練習試合で、ホームに還ってきたとき、ヘルメットの上から相手キャッチャーにタッチされたのが気にくわなかったのか、相手捕手をにらみつけ、拳を握りしめた。あわや乱闘?高校野球にあるまじき空気があたりに充満した。幸い、大事に至る前に審判が止めに入ったので、ことなきをえた。
ああ、こんな子だったんだ。私は打たれて落ち込むけなげな下級生をイメージしていたので、軽いショックを受けた。でも、ちょっと気が楽になった。きっとあのときも、腹が立ってしょうがなかったんだろうね。落ち込む選手の姿を見るのはちょっと切ない。でも、悔しがる選手の姿を見ると応援したくなる。
キャッチャーとして挑んだ最後の夏は、甲子園まであと1勝をいう決勝戦まで残った。結果負けてしまったのだが、試合終了後の球場前に今まで見たことのない顔をしている彼を見つけた。
和やかな空気の中、チームーメイトにツーショット写真を撮ってもらっていた。ユニフォーム姿だったと記憶している。彼女は特別かわいいわけでもない至って普通の子だったが、2人は顔を寄せ合って笑っていた。特に彼の方は今にとろけそうな顔で、悪く言えばしまりがなかった。もう高校球児に恋する歳ではなかったけど、それでも異性である以上、彼女の存在はテンションを下げるには十分な要素だ。でも、そのときは不思議と、「ええやん、別に」と自分の中にいるもう一人の自分をなだめていた。
夏の終わりの形は、誰でもなく選手が作るもの。自由でなければ。 そんな言葉がふと脳裏に浮かんだ。
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