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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2002年10月05日(土)
寿時くん


 私は、人物名フェチである。10代の頃、小説を書いていたのだが、登場人物の名前を考えるために、いろんな人の名前を意識的に見ていたことに起因すると思う。当然、高校野球の選手名鑑でも真っ先に注目するのが選手の名前だ。好きな字、嫌いな字、組合せ等いろんなこだわりがあるのだが、そんなこだわりにフィットした名前を見つけると、それだけでその選手を応援したくなる。顔のかっこ良さを語ることがあるならば、名前のかっこよさを語るのもOK…ですよね?というわけで、かっこいい名前の選手のお話です。

 秋季京都大会を見に、西京極球場へ出向いた。ベスト8とだけあって、さすがにレベルが高い。特に内野の守備にそれを感じた。バウンドをつけて飛んでくるボールをそっと抱きしめるようにグローブに包みこむ。いいねえ、愛だねえ。

 …と、脱線はここらへんにして。
 今日観戦した北嵯峨ー洛星戦は1点を争う好ゲームとなった。細かいミスはやはりあるが、それもチーム結成から日の浅い秋故のことで、それより試合の流れを綱引きのように懸命にたぐり寄せようとする両校の戦いぶりが強く印象に残った。

 試合が終盤にさしかかろうとしている7回表、場内アナウンスが響いた。北嵯峨は、6回裏の攻撃で代打を出したため、守備位置交代を余儀なくされる。なんとも思わず聞いていたが。

 「ファーストの平山くんに代りまして、新たに“ジュウジ”くんが入ります…」

 ジュウジ?!
 私の頭の中では、すぐに“十字”と漢字変換され、つけていたスコアにもそう記入した。へえ〜、世の中珍しい名前もあったもんだ。

 ところが、そんな私ののどかな驚きは見事にあざ笑われることになる。再び見た電光掲示板には“寿時”の文字。ことぶき?とき?…やられた!これで、“ジュウジ”って読むんだあ。私なんて、まだまだ固定概念から抜け出せない甘ちゃんだ。使うはずないと思っていた消しゴムをリュックの奥深くから取り出した。

 それにしても、かっこいい名前!きっと顔もいいと思う。
 2回の驚きでそのときめきはさらに輝きを増す。グランド内、背番号『3』をつけた背の高い彼はそんなミーハーな観客の存在を知る由もない。

 7回裏、そんな寿時くんは、打席に立った。一死から4番バッターの内野安打に始まり3連打、3−3の同点に追いついたき、更に四球を挟んで、一死満塁。逆転のチャンス。8番ファースト・寿時くん、今日、初めての打席。

 北嵯峨スタンドからは、「バッター、強気で行け〜!」の声。ここで逆転しておけば、後が楽だ。満塁ともあって、スクイズも考えられるか。いや、中盤以降、相手投手は四球が多い。ちょっと難しいかも。それに、彼のバッティングがどんなものか知らないし、監督からの信頼度も分からない。あれこれ、思いを巡らせた。

 初球だった。待ってましたとばかりに寿時くんのバットは、ボールを捕らえた。打球は、鮮やかに一二塁間を抜ける。三塁ランナー、ホームイン。やっぱいいね。かっこいいのは、名前だけとちゃうんや。なんか妙に嬉しかった。

追伸:アナウンスを元に“ジュウジ”くんとしていますが、ホントは“ジュジ”かも?ちょっと自信がない。間違ってたらごめんなさい。