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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2002年07月28日(日)
夕焼けが知っていた…


 昨日、友人からメールをもらった。何かと思えば、『夕焼けが気味悪い』という。当日は一日家にこもってPCに向き合っていたので、気付いたら夜だった。わざわざ夕焼けを気に留めることもなかった。

 気になったので、どんな夕焼けだったかと訊くと、『青空が残っているのに無理矢理夕焼けにしたような感じで夕焼けが紫なったいましたよ』と返ったきた。そら、気持ち悪いわ。厳密にいうと、青と紫だったそうだ。実はこれ、今日対戦した両校のカラーなのだ。青は対戦相手校のユニフォームの色、紫は応援校のスクールカラー。友人のメール文中でそのことに知った。

 体裁のいいドキュメントなら、これが好ゲームの兆しとして取り沙汰されるんだろうな。でも、今回はさずがにそれはないだろうと思った。ところが、今回はそんな体裁のいいドキュメンタリーと成り得てしまったのだ。


 今日の試合のテーマは、「ええぞ、ええぞー、思い残すことなく打たれてこ〜い」。初回、ホームランを含む5本のヒットでいきなり4点を取られた。いきなり打者一巡した。それでも、私たちは「よっしゃ、よっしゃ、よく4点で止められた!」と拍手を送った。こちとら、勝ちなんて意識していない、気楽なもんよ。

 …ところが、その裏、いきなり3点を返す。左方向に飛ぶ打球を見ながら、「嘘や、嘘や」とうわごとのようにつぶやいていた。その上、2回には同点に追いついてしまった。さあ、大変!相手校も動揺しているかもしれないが、こちらも変な汗をかいてしまう。

 リードされろ、と思った。選手が緊張感を持って試合に臨むにはそれがいいと思ったから。自分たちの力を過信せずに終盤までいけたら…。というわけで、打たれるたびに、「よっしゃ、いいよ、いいよ、それで」とともきちと2人して頷いていた。端から見たら、「どっちの応援してんの?」った感じだったろうな。

 クライマックスは6回裏、ツーアウトランナー一二塁で、相手校のエースが登場。こちらは4番バッター。絵に描いたようなシチュエーションに引き込まれる自分はちょっとらしくないななどと思ったけど。

 相手ピッチャーの投球練習が終わった。応援校の4番が打席に入る。肩をつり上がらせて見守った。試合が決まるとすら思った。2球目、4番打者は素直なセンター返しをしたんだと思うが、いかんせんパワーがある。打球は、打席に込めた気持ちをも乗り移ったかのように左中間奥深くまで飛んだ。俊足のランナーがホームイン。この試合初めて、リードすることになった。

 ああ、怖い。リードだなんてこんな中盤では早すぎる。するなら8回くらいでええねん、8回くらいで。今日もまた、心臓に悪い試合を見守ることになるのか…。頼む、守りにだけは入ったらあかんで。

 7回に1点を返され、むしろ安心した。しかし、グランド内に何かがいるとしか思えないような事態が相手校に襲いかかる。打球のイレギュラーの連続、普段ならあり得ないような守備妨害…。そんな中、懸命に投げるエースピッチャー。前日、平安高校を3安打完封したピッチャーだ。打てるはずがない。実際、球威に押されていた感があったのだが、打球が飛べば、ボールが野手のグラブを厭がるかのようにバウンドする。糸が絡まってにっちもさっちもいかない。そんな感じ。

 「ピッチャー、かわいそう」「一体、どうなってんの」。スタンドではそんな声も出ていた。しかし、私の立場はそう発言することが許されない。油断したら試合の流れなんてあっという間に持っていかれてしまう。結局、相手のエースピッチャーはアウトの大半を三振で奪い、ベンチへ引き上げた。

 さて、応援校のピッチャーも気迫では負けていなかった。8回無死一塁から、こちらもエースの登板。一死一三塁のピンチを2者連続三振で奪い、続く最終回もアウトはすべて三振で奪った。最後のバッターが空振りした瞬間、小柄なエースが手を一杯に広げて、ガッツポーズをし、キャッチャーの元へ飛び込んだ。帰宅しれから、TVで確認すると何かを叫んでいたようだ。彼のあんな姿、初めてみた。ただゾクゾクした。26歳の私が18歳の男の子を“かっこいいな”と思えた。