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| 2002年07月26日(金) ■ |
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| ホームベースに神がいる… |
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家を出るとき、緒戦から一貫して「今日は負けるから」と母に告げて出ていく。もうすでに4回目、一種のジンクスになってしまい、今更「今日は勝てるかも」などとは言えなくなってしまった。
負けてもともと、どん底のチーム状態を目にしている以上、ここまで来ただけで充分。今日もそういう心構えでグランドが放水で湿っていくのを見守っていたが、場内アナウンスを聞いたてそうでもなくなってしまった。さあ、大変。世界中の神様、仏様や四方に散らばっている運や勢いをかき集めてでも、この試合、勝たせてあげたいなどとらしくもないことを思ってしまった。
その原因は、今日の先発ピッチャー・植村投手にある。6/23付の日記で書かせてもらった選手が、実は彼のことだ。日記では「もし彼が公式戦に登板したら、名前のアルファベット表記を外ししょうか?」と締めくくったのだが、まさかそんなときが本当にくるとは思っていなかった。ごめんなさい。
しかし、チームがこの先勝ち進むにおいて、彼の登板は必須事項だったのかもしれない。すでに2人のピッチャーが登板しているが、正直、ピッチャーはたくさんいるに越したことはない。監督さん、粋な計らいを見せてくれますねえ。
みんなしっかり守って、打ちまくってください。そう願をかけたころ、プレーボールの声がかかった。
結局、同点に追いつかれた6回に降板してしまったけれど、よくがんばったんじゃないかと思う。確かに中盤からは四球が目立ち始めたけれど、ピンチのときでもストライクがズバズバ決まっていた。最後の夏、確かに足跡を残したと思う。出来たら、ゲームセットの瞬間をマウンドで迎えて欲しかったけど、これでも充分だと思った。
さて、試合はクライマックスへ。1点をリードされたままで迎えた9回表、ツーアウトランナー二塁、打球はレフト前にポテンと落ちるヒット。ランナーはすでに三塁ベース付近。レフトがバックホーム、ランナーは本塁へ向かう、キャッチャーがボールをキャッチ、ランナーが駆け込んでくる、キャッチャーがすばやく姿勢を変えてランナーにタッチ、ランナーはそんなキャッチャーから精一杯体をそらしてホームベースに手をかすめる…。
アウト!夏が終わった…。 私はそう思った。
そして、今までのことが走馬燈のように駆けめぐろうとしたとき、主審が砂ぼこりの向こう側で手を水平にしていた。
セーフ! スタンドが沸いたことが言うまでもない。そのとき私が思ったこと。“ホームベースに神がいる…”。
「んな、あほな」と思われるかもしれない。野球を知る人は「キャッチャーのおいタッチなんじゃないの?」と言う。また、日々の鍛錬の成果だと言う見方のあるだろう。全て間違ったことを言ってはいないし、私より遙かに視界が広いと思う。でも、乏しい野球知識しかなく、選手が日頃どういう練習をしているか知らない私は、あの極度な興奮状態の中、そこまで冷静にはなれなかった。
裏の守りだったため、延長に入ってからは緊張感が高まるばかり。裏の攻撃をしのぐと虚脱感に似た気持ちで、深いため息をついてしまった。しかし、延長11回に一挙5点をあげ、その裏1点を入れられなおも満塁のピンチではあった(このチームらしいといえば、らしいのだが)けど、どうにかしのいだ、勝利を収めた。
11回表、6点目の入り方も実は9回と似ていた。ランナーの積極果敢な走塁。足の速い選手ではあるが、きっとそこに何か確信めいたものを感じたんじゃないかなと思ったりする。
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