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| 2002年07月15日(月) ■ |
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| 来夏の目標 |
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私は、好き嫌いの激しい人間だと思う。だから、“がんばれ”の言葉一つにも好き嫌いが生まれてくる。口にした人の人柄や立場、にじみ出ている潜在意識によって、それはヘドが出るほどイヤな言葉にもなれば、宝石の輝きのようなすばらしい宝物にもなりうる。そんなわけで、今日聞いた“がんばれ”の話をしたいと思う。
今日もまた高校野球京都大会の観戦に出かけた。対戦カードは、塔南ー京都明徳。京都明徳は2年前に男女共学になり、今春野球部が創部されたばかり。もちろん、今回からの初参加だ。せっかくだから、はじめの一歩を見届けたい。そう思った。
初回と2回は、両校無失点。明徳は初参加とは思えないプレーで、確実にアウトカウントを増やした。しかし3回、1点が入ると雪崩のように崩れていく。エラー、長打、盗塁…。さっきまでのナインはどこへ?と問いかけたくなるほどの変わり様。1点取られるとズルズルいく、失礼ながら弱いチームの敗戦パターンだなと思った。
取り損ねたボールをなかなか拾えない外野手、なんでもない併殺を取ろうとするもファーストベースのカバーがなくオールセーフになってしまう、ランナーが走り始めてからボールの後逸に気付くバッテリー…。こういうとき、野球ってほんまに難しいんだと思う。
当日は、再三の雨で試合進行が遅れており、両校ナインはそうとう待たされた上、雨上がりのグランドの蒸し暑さはすごいと聞いた。明徳ナインの集中力が切れたのは一目瞭然。ヒットを打たれ、ホームベースのカバーに走るピッチャーの足どりは重い。ファウルグランドに転がったボールを拾いに行くキャッチャーの足取りも重い。もしこれが他のチームだったら、“何ちんたらしてんねん”と思ってムッとしたかもしれない。
でも、それは出来なかった。そうやんな、疲れるやんな。始めての大舞台。投げても投げても減らないランナー。力も出ないよな。私かて、仕事してたときそういう経験ある。ここでふんばって気合い入れないとと思ってはいるけど、体がついていかない。気持ちを切り替えることは、なかなか困難な作業。
スコアボードには“10”の字が窮屈そうに寄り添っていた。そのときだった。
「ピッチャー、がんばって〜!」
それは、三塁側塔南高校スタンドからの声だった。テレビや雑誌でよく聞くありふれたエピソードかもしれない。でも、実際リアルタイムで耳にするとやはりズキンとくる。
あ、これは好きなタイプの“がんばれ”だなと思ったが…。
声色と聞こえてきた場所からして、おそらく選手のお母さんだろう。自チームが大量リードという余裕があることも一因だろうが、やはり“もし自分の息子だったら”と思うといてもたってもいられなかったのかもしれない。
そのすぐあと、ピッチャーは次打者を打ち取り、スリーアウトチェンジとなった。結局、0−12。5回コールドで京都明徳の初めての夏が終わった。参考記録ながら無安打無得点。
来夏の目標は、初ヒット、初得点。そして、ゲーム中に相手校スタンドから“がんばれ”の言葉をもらわないこと?!
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