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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2002年06月10日(月)
言葉で挨拶しよう。(読書感想文)

 読んだ本:中村ブン著『風の中の天使たち〜ボクらの甲子園〜』(東京新聞出版局)

 内容:筆者が出会った東京都内にある少年野球チーム「上馬北パワーズ」について、ドキュメンタリータッチで書かれたノンフィクション。折に触れ、現在の教育について筆者が思うことや、筆者自身の過去を振り返る箇所も出てくる。

 
 私は子供が嫌いだ。あんな正体不明な生き物、他にない。

 でも、球場でもそばにユニフォームを着た子供がいると、「かわいいなあ」とじっと眺めていることが多い。だから、野球少年だけは別。

 そんなわけで、前々から少年野球を見てみたいと思ってはいるのだが、とっかかりがないまま、今に至っている。

 そういう話を友人にしていると、その友人の口をついたのが、この作品だった。

 筆者中村ブン氏は作家ではないため、文体が柔らかい。(「〜なの」という語尾が大半なので、柔らか過ぎるとも言えなくはないのだが)なんか、喫茶店に張って、向いの席でアイスコーヒーでもすすりながら、おしゃべりを聞いているような錯覚に陥る。

 そのため、少年野球初心者である私にも、少年野球チームとはどういう団体で、何をしているところなのかを把握することが出来た。

 このチームの子供たちは、まぶしいくらいまっすぐで素直な子ばかりだ。実は、この作品は平成の始めのものなので、彼らはだいたい私と同世代ということになる。

 私の周りにいた同級生の男の子に、こんないい子は一人たりともいなかった。ヘドが出そうな小学校時代を過ごした私は、「ああ、あのとき、こういう子と出会っていれば人生変わっていたんだろうなあ」と改めて、出会いの大切さを痛感した。

 指導者は、野球だけではなく、礼儀や思いやりといったものも教えていく。私はひねくれものなので、そういうまっすぐすぎる教えで社会に出てかえら子供が苦しむことになるまいかという心配も多少しないではないが、やはり知っていると知らないとでは全然違う。

 一番、印象に残ったのは、[「アリアターシター」という言い方ではなく、「ありがとうございました」って、はっきり言ったのね]という箇所だ。

 「アリアターシター」とは、実によく言い得ている。確かにそう聞こえる。日頃から野球に携わっている人や、長年野球を見ている人は、それを「ありがとうございました」と言っているように思えるものである。

 しかし、実際は「アイアターシター」である。

 アマチュア野球選手の多くは、挨拶もし、礼儀正しいと言われる。でも、あれは挨拶なんだろうかとふと思うときがあるのだ。

 何言ってるかわからないのだ。「こんっちわ」なんていうのは、ずいぶんまともな方。こっち見て礼をしているので、挨拶だとわかるが、言葉は、「うぃっす」なのか「ちっす」「よっす」なのか…。

 う〜ん、やっぱりわからない。挨拶の仕方を教えるのは、先輩か指導者か知らないけど、何故ああいう他人に伝わらない挨拶がまかり通っているのだろう。

 野球部だから?野球部独特の?

 挨拶は、野球部の人だからするんじゃないよ。一人の人間としてやるんじゃないの?そんなの関係ないよ。

 「ちっす」や「ういっす」ではなく、「こんにちわ」。
 「アリアターシター」ではなく、「ありがとうございました」。
 「っしまっす!」ではなく、「お願いします」。

 ま、こんなところで、私がいくら吠えたって、野球部のあの挨拶が変わるわけなないんだけど。実際、ちゃんと「こんにちわ」という言葉で挨拶しているチームに出会ったのはたった1回しかない。年間70ほどの試合を見る私でも、である。

 あ、そう言えば、阪神の安芸キャンプに行ったとき、阪神の打撃ピッチャーの人は、少年ファンにちゃんと、「おはよう」と言葉で挨拶してたなあ。