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あるこのつれづれ野球日記
あるこ
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2002年05月20日(月)
杜の都の解放区(後編)


 バンカラの色濃い両校応援団について、私の見た限りを書きます。
 一塁側、仙台第一高校。

 応援団は、羽織姿で、一部生徒は赤くてやたらでかくてながいメガフォンを持っています。私服の学校らしく、生徒が甲子園で言うとアルプススタンドみたいなところにびっしり詰まっていました。

 7回には一部団員らしき生徒が、海パン(?)姿で外野へ駆けていき、体操のよな裸踊りのようなことをしていました。途中からヒートアップしたのか、白いパンツ(?)一丁になり、人文字を作り、芝生全身で転がっていました。(あとで、芝生を踏みしめてみたのですが、結構深かったです。でも、芝生というより雑草に近かったので、あとでヒリヒリしたことでしょう)

 この踊りみたいなのを見るまでは、テンションにしろ気合いにしろ、仙台二高が一歩リードかなと思っていましたが、これでいっぺんに流れを変えてしまいました。

 勝ったあとは、赤いメガフォンが場内に投げ込まれました。みな肩を組み、延々と校歌た応援歌を歌っていました。「ああ、進学校臭いなあ」とちょっとやかんでみたり(苦笑)。

 試合終了後の応援合戦はかなりの長期戦だったので、人数が多いことをいいことに、後ろの方の子は座っていたり、場内をうろついたりしていました。でも、硬派な雰囲気が漂っていたので、後ろで追試の話をしている地元の女子高生の浮きようったらなかった。そんな彼らですが、「(定期戦は)楽しかった」と言っていました。

 そうそう、スタンドにはいろんな言葉が書かれた手作りのプラカードらしきものがありました。ヤジだったり、応援団長のことだったり、ともかく男子高校生らしい滑稽なことばかりでした。

 その中に「にこ(二高)の校歌は長くてうざい」とありましたが、私からしたら両校とも五十歩百歩です(苦笑)。

 三塁側は仙台第二高校。

 スタンドには、部員一人一人の名前が書いたカラフルな幟みたいなのが掛けられていました。紫、スカイブルー、黄色と色が学年別に分かれていました。

 人数では、ちょっと負けていましたが、一心乱れぬ熱い応援が続いていました。応援合戦中も座るどころか私語をしている子すら皆無でした。応援団は白い短ラン姿でした。5回のグランド整備の間に、応援のリズムで体操していました。(メジャーで言うセブンイニングストレッチみたいなものかなあ)

 応援合戦にもルールがあるみたいで、相手高の応援が終わるまでじっと立って待ってなければならないようなのですが、そのときに女の子と話していた生徒を先生が「(一高が応援をしているのだから)最後まで黙ってなさい」と注意されていた。すげえ、気合い…。

 応援団といえば、声かけみたいなのがありますが、ここもやっていました。たとえば、「二高はよくがんばった」「いえ〜い」みたいな感じで。とにかく熱かったです。「おまえら、試合を見ていて、二高に負けて欲しくないと思っただろ?」「その思いが二高を作っていくんだ」

 余談だけど、「俺は一高が嫌いだぁ〜」というのは、なかなか笑えました。なんのこっちゃ。

 どうでもいいけど、仙台二高の応援歌なのか校歌なのかわからないけど、「♪すすめ〜すすめ〜」というのはあるのですが、どうしてもその後に「アリさ〜ん、マーク〜」と口ずさみたくなりそうでたまりませんでした(笑)。

 両校共通していたのが、やはりその熱さとテンションの高さ。試合前からすでにできあがっており、1回のチャンスから、スタンド最前列のごく狭いスペースのほぼ全員(応援団および補欠の部員)があつまり、フェンスを揺らしてすごいテンションで応援していました。すごい人工密度で、私のいたところからは男子高校生の頭の固まりがうごめいている感じでした。

 ああ、若さのエネルギーが健全に発散されてるなあと思いました。いいなあ、やりなはれ、もっと。

 また、攻撃のときのかけ声は「かっとばせー○○(選手名)、○高(相手高)倒せー、おうっ」でした。「○○倒せ」は確か90年代に暗黙の了解で禁止されています。でも、相手を倒さない以上、勝ちはないわけだしねえ。

 攻撃守備おかまいなく、ずっと応援。動きが止まったのは昨日に日記に書いたホームランのときだけ。

 試合終了後、延々と応援合戦が続くのですが、そこにもきちんと規律がある。下現役の生徒のよる応援合戦が終わったら、外野を陣取る両校OBによる応援合戦が始まりました。

 エールが部員や学校だけではなく、野球そのものやスタンドの後輩応援団にもむけられる(ということは、ラグビーやサッカーでも同じような定期戦があるのかもしれない)。後輩たちはそのとき、外野席に向かって、深く一礼していました。

 
 この雰囲気は何だろうと考えた。もちろんただの練習試合ではない、応援形式が大学野球に似ているような気がするので大学野球かといえな、そうでもない。緊迫する試合展開に早くも日焼けをするほど照りつける日差しに夏の県大会を思うが、それもちょっと違う。

 なんだろう、なんだろう。

 そのとき、ふと思い浮かんだのが「解放区」という言葉。そう、ここは高校野球の解放区。

 「○○倒せ」と言っても注意されない、選手個人名を書いた幟を掲げていても注意されない、降ろす必要もない。フェンスを揺らしても注意を促すアナウンスもなければ、メガフォンの投げ入れも容認されている、外野で裸になっている生徒がいてもそのまま試合は進行する。

 もしかしたら、一昔前の光景がそのまま残されているだけなのかもしれないし、はたまたありそうでなさそうな世界なのかもしれない。

 野球はスポーツであり、若さを発散するところであり。応援はそんな彼らを応援することによって、自分を解放している行為であり。

 とにかく、ここは解放区。何かと規制のかかる高校野球が存在する限り、いつまでも人々に愛されていくことだろう。