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| 2002年05月17日(金) ■ |
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| キャッチャーミットの“おじぎ” |
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キャッチングにおける欠点を指摘する言葉の一つに“おじぎ”というものがあるようだ。高校の練習試合などをネット裏で観ているおっさんがよく「あいつ、ミットが“おじぎ”してんで」とか言っているのを聞く。
私にはそれがどうもわからなかったのだが、プロ野球の中継を見ていて、最近それがどういうものかがなんとなくわかってきた。
“おじぎ”するとは、ボールを捕球したときに、ミットの上の部分(親指以外の指および手のひらの上の方)で捕球しにいくことなのかなあ、と。そうすると、ミットが“おじぎ”しているように見えるのだ。
ここでご登場願うのは、球界の若手キャッチャー2人。阪神のルーキー・浅井選手と横浜の相川選手だ。
浅井選手のミットは“おじぎ”をしていた。素人目でみても明らか。ボールを取りに行こうという意識が多少強すぎるのかもしれない。また、いいボールなのに審判がストライクを取らなかったという場面が何度かあった。そのたび、「もったいないなあ」と歯がゆい思いで見ていたが、もし私が審判でもボールと判定してしまうだろう。
一方の相川選手のミットは、捕球した後もしっかり立っていた。立っていたという表現はちょっと変かもしれないが、とにかく“おじぎ”をしていなかった。思わずストライクを取りたくなるほど、ボールが気持ちよくミットに収まっていた。谷繁選手が抜けたとはいえ、彼が正捕手同然の待遇で使われている一因はここにあるのかもしれない。
趣味柄、高校野球の選手の父兄さんとお話しさせていただく機会に恵まれてきた。まだまだ未熟な私ではあるが、ほとんどの方が優しく接してくださっている。しかし、そんな穏やかな父兄さんに叱られたことが2回だけある。
そのうちの1回で言われたのが、「癖は簡単には直らない」ということだ。
練習試合を見ていたとき、足が速くて器用な選手がいたのだが、気持ちがはやるのか塁に出るとオーバーランして、刺されることがしばしばあった。そこで私は、「彼の癖が直れば、このチーム、もっと強くなりますよね」と口にしたのだ。
すると、さっきまで穏やかだった父兄さんの表情が急に険しくなった。「癖は、そう簡単に直るもんやない」。私はあっけにとられて「そうですね…」と答えるのが精一杯だった。
その後、父兄さんは何事もなかったかのように元の表情に戻り、試合を見守っておられたが、私はその一言について考えこんでしまった。
確かにその通りなのだ。
欠点がわかり、努力すれば必ず直るのなら、誰だって野球はうまくなるし、みんなプロ野球選手になれるのかもしれない。でも、そうではないから、野球は厳しいものであり、またそれがファンを魅了している。見ているだけの私にとっては、ただ歯がゆいだけなのだが。
浅井選手には、これから練習と経験を積み重ねて、うまくなっていってもらうのを願うだけ。きっと相川選手だって最初っからああいう補球が出来たわけでない。高校を出て8年。長い年月をかけてここまできているのだ。
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