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| 2002年05月03日(金) ■ |
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| 広島市民球場の立ち見席 |
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広島市民球場の外野席の後部、看板下に若干のスペースがある。今日のように人が混み合っているときは、シートに座れない人がここに陣取る。
若い兄ちゃんカップル、野球少年にセーラー服を着た女子学生や家族連れなど、様々な層の観客が足を運んでいたのだが、とりわけ印象に残っている観客がこの立ち見席にいた。
年輩、大体40代後半から50代前半くらいのご夫婦のカープファンだった。旦那さんと奥さんの体格が似通っていて、お二人とも穏やかな雰囲気を持っていて好感の持てた。落ち着いて、内野指定席で静かに見ているのがお似合いだなと思ったので、外野の立ち見席などおられるのが意外だった。
応援する姿を見ても、観戦に慣れておられるとは思えなかったので、どうやら連休の混み具合を知らず、ふらりと「野球でも見に行こうか」と立ち寄られたのかもしれない。とんだ災難だったことだろう。それでも、満足げな表情で、観戦しておわれた。
レフトスタンドだったためか、周りは阪神ファンばかり。そんな中、赤いメガフォンを片手に、カープの攻撃のときは、小声ながら「かっとばせー」と声を出しておられた。
試合は、常に阪神のリードで進む。周りには、気合いの入った阪神ファンはドスの利いた声援が飛び交う。こういう場所、家族連れや年輩の方々にはものすごく居づらいようだ。実際、私の側にいたカープファンの親子は、雨が本格的に降り始めた7回表、風船をくらませて裏の攻撃を待っていたが、延々と続く阪神の攻撃と阪神ファンの口撃(?)に耐えきれなくなったのか、そそくさとスタンドをあとにしてしまった。だんだんしぼんでいくジェット風船に心が痛んだ。
ふと、「あの夫婦、帰ってしまうのではないか」と気になって、立ち見席を見渡した。傘を差した2人を見て、ホッとして、やや心配そうな顔になっていたものの、まだ試合を堪能する余裕があるようだ。
混み合っている上に、応援しているチームに不利な試合展開、その上天候の悪化、またずっと立っての観戦は体力的にも相当こたえるだろうと思う。
このご夫婦は結局試合終了まで、席を離れることなく、観戦しておられた。私はそんなご夫婦の存在に癒され、心強く思えた。野球を愛する人は、まだまだいる。決して恵まれた環境ではない中でも、しっかり野球を見つめている人がいる。それがただ嬉しかった。
グランドにいる選手から、観客席がどういう風に見えているのかわからない。しかし、どんなに視力のいい選手だって、ここにいるご夫婦の表情までは見えないだろう。それがちょっと残念だ。
余談だが、私たちはレフトスタンド最上段に陣取って観戦していた。そこで、すぐ後ろの立ち見席で観戦していた三重県から来られたおじさんと仲良くなった。上には上がいる…。
☆ 今日の午前0時をもって、1987年に起こった朝日新聞阪神支局記者襲撃事件が時効を迎えた。この事件を知ったのは、つい1ヶ月ほど前ことだ。私は記者を目指したことはないし、被害に遭われた方々とも無関係の人間だ。それでも、言い知らぬショックに襲われ、ここ最近はその事件について考えることが多くなっていた。今回の遠征の行きしな、朝日新聞阪神支局の前を通りかかった。運転している相方に、思わず「止めて!」と言いかけたが、その言葉をグッと飲み込んだ。兵庫県警は、今後も捜査を続けるという。
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