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| 2002年04月24日(水) ■ |
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| 寮長の親心 |
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これから書くのは、今から2年ほど前の話です。この日、私は友人に連れられて、生まれて初めてファームの試合を見に行きました。
鳴尾浜球場の横に、阪神タイガースの寮「タイガーデン」がありますが、そこで寮長の梅本さんとお会い出来たのです。
同行していた友人が好きだった選手(仮にA選手とします)が、この前のシーズン限りで引退(戦力外通告による退団)したので、進路が知りたいからと試合終了後、「梅本さんに聞いてみる」と言い出したのです。
彼の熱心さには感心しましたが、そう簡単に教えてくれないだろうし、まして会えるかどうかもわかりません…。
ところが、梅本寮長がふらっと表に出てきたではないですか! 私と友人は、慌てて追いかけました。
梅本寮長は、友人に質問に快く答えてくださいました。A選手は、今、プロゴルファーを目指して修行中とのこと。どの師匠についているのか、また今どこにいるのかも詳しく教えてくださいました。そして、、「また、寮に電話しといで」とまでおっしゃっていただき、友人もかなり感激していました。
しかし、最後に一言。 「けどな、今はそっとしといてやってくれへんか。あいつは今、一生懸命なんや。ワシもここ2.3ヶ月連絡を取ってへんのや」。
聞いたその瞬間は、「冷たいなあ」と思いましたが、「ああ、これが優しさなんだな」と思ったもの、また事実です。
寮長というのは、私たちファンが知りたくても知ることの出来ない選手のプライベートの奥の奥まで知っている、いわゆる父親みたいな存在。「そっとしといてやって…」も一言もそれ故に出てきたものなのでしょう。
確かに、A選手はプロ野球選手としては成功しませんでした。だからこそ、大事。今は、今度こそ成功するためにガムシャラになってがんばっている時期。それを邪魔してはいけない。寮長の心境はおそらくそんな感じなのでは?と思います。
A選手は、今、野球に対する未練や悔しさと戦っているのかもしれません。私たちは、それをただ見守るしかありません。声をかけない優しさというのは、間違いなく存在するのです。梅本寮長から、そんなことを教えてもらいました。
どんなにすごい活躍をした偉大な選手でも、結果を出せずに無名のまま球界を去ってしまった選手でも、寮長にとってはみな“かわいい息子”。野球を続けていても、また離れても、その「親心」に変わりはないのでしょう。
A選手の次なる成功を祈ると同時に、このような場面に巡り会えたことを感謝しています。
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