
|
 |
| 2019年01月05日(土) ■ |
 |
| 母ちゃんが疲れちゃいますから、それが一番困る |
 |
映画「モリのいる場所」(沖田修一監督)から。 30年以上も、自分の家の敷地から出ないという、 伝説の画家・熊谷守一とその妻の生活を描いた作品であるが、 どうして、そんな気持ちになれるのか、とメモしていたら、 面白い台詞にぶつかった。 文化勲章を受けて欲しい、と電話連絡があった時、 受話器を持っている妻に「いい」とボソッと言いながら 「そんなもん貰ったら人がいっぱい来ちゃうよ」と付け加えた。 妻も「それもそうやね、いらないそうです、はい」とあっさり。 さらに、もっと広い土地に移ったらどうかと誘う人にも、 「私、ここにいます。この庭は私には広すぎます、ここで充分。 それに、そんなことになったら、 また母ちゃんが疲れちゃいますから、それが一番困る」 とにかく、愛する妻と一緒に、のんびり過ごすことが望みで、 あまり有名になって、多くの人が訪れることになり、 大切にしてきた今の生活が変わることが一番困ってしまう、 そういうことなのかな、と思ってメモをした。 監督が伝えたかったことは、守一の好きな言葉「無一物」。 禅語「無一物中無尽蔵(むいちもつちゅうむじんぞう)」の一節、 「無一物」とは何も存在しないということであるが、 何ものにも執着しない境地に達することができると、 大いなる世界が開ける、という意味らしい。 「何もないからこそ、そこに豊かさを見出せる」ってこと。 静かだけど、素敵な作品だったなぁ。
|
|