5年でオシャカになったオーブンレンジを買いに電気屋に出かける。 レンジはともかく、オーブンがないと、どうにも我が家は寂しいのである。
最近の電子レンジの機能は、なんだかすごいことになっている。
「最新型を使えば、台所での煮炊きは一切不要になります、天ぷらも大丈夫です」と得意な店員の話を、Hと二人で口をポカンと開けながら聴く。
何とかかんとか適当なオーブンを購入する。 車に積み込みながら、Hが吐き出すように「天ぷらはちゃんと揚げたのを食べたいよなあ」と言う。
火を使いこなしてこそ人間である。 注意深く調理しながら、青々した葉を色鮮やかにゆであげる喜びも、天ぷらを香ばしく揚げる喜びも、最新式のレンジはもたらしてはくれないのである。 そういうものは、私達の暮らしには不要である。
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大型電気店に行くとつくづく思うが、一体、なぜあんなに沢山の種類の電化製品があるのだろう。
電気酒かん機、電気おかゆ鍋、電気毛玉とり器、卓上小型扇風機、空気清浄機、掃除ロボット、そして数々の電気健康機器。電気美容機器。 もはや、人間の知恵や能力を衰えさせる数々の道具という風である。
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一方で、こうしたニュース。
自民党環境部会は、地方自治体が雇用を創出するための具体案をまとめ、6日に開かれた同党の景気・雇用創出ニューディール推進プロジェクトチームの会合に提出した。日本版グリーン・ニューディールの要素となるもので、約15万5千〜21万2千人の雇用と約4兆3千億〜5兆3千億円の経済効果・費用を見込んでいる。これにより、公共施設の家電製品を省エネ型に交換するとともに、エコポイントの仕組みや省エネ診断員を活用し、家庭における省エネ機器への買い替えを支援する。経済効果は全世帯の1割が照明・エアコン・冷蔵庫を省エネ機器にした場合に約二兆円、雇用は省エネ診断員として47都道府県に計1500人としている。
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省エネルギーをうたうのならば、余計な電化製品は買わなければいいのである。
エコエコ唱えながら、買い替えよ、節電せよ、の一点張りに、私は経済界の姑息な感じを否めない。 購入せよ、しかし使うなと言っているようなものである。
2008年02月19日(火) 疲弊 2007年02月19日(月) honey bee 2006年02月19日(日) 踊る阿呆に見る阿呆 2005年02月19日(土) 嘘笑い禁止令 2004年02月19日(木) ファンタジーと生きる その2
Aと「ローマの休日」を観る。
爽やかな物語であるが、一種の悲恋である。 そして、これはお姫様の冒険話ではなく、アメリカ人男性のファンタジーである。
可哀相な女性を男性の力量で幸せにする、乃至は成長させる、というのは、アメリカの伝統ともいえる物語のパターンなのだそうである。
人生が幸せではなかった王女をつらさから解放し、保護し、励まし、一瞬であるが、別の人生を歩まないかと示唆する。
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休日を終えた二人は対照的である。
王女はすっきり爽やか、恋を覚え女性としても少し成長し、宝物のような思い出は王女として生きる明日への礎に昇華している。
片や、グレゴリー・ペック扮するジョー・ブラッドレーは、そう簡単に夢から覚めることはできないと思われる。 そして、その未練たっぷりで宮殿を去る最後のシーンも、なかなかの名場面なのである。
2007年02月12日(月) リスクが顕在化するとき
ラジオで「どうする雇用と経済」というテーマの番組。
企業が労働力を景気の調整弁のように使うやり方は、雇用する側だけでなく、雇用される側にも消費者にも応分の責任がある構造的な問題だという論調で解説がなされていた。
それによると、私達は安い商品が誰かの不安定な生計に支えられていることを知るべきなのらしい。価格競争は原材料の調達方法だけでなく人件費にも反映されている。
そして、雇われる側もまた、仕事に就くまでに心理カウンセリングまでを必要とする後ろ向きな姿勢が、非正規雇用のニーズを生み出した、ということだそうである。
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「適職」という概念は最近のものである。
人が「今の仕事は自分に向かないかもしれない」と思わせるために、リクルート産業が生み出した、営業用の幻である。
沢山のデータベースを持ち、今よりもっと上があるように見せかけ、安定から遠ざける。
そして、そうしているうちに、人は働く意欲、あるいは真摯に働く意欲を吸い取られていく。
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今日社会に起きている雇用問題が構造的なのだとすれば、行き過ぎた情報化社会の弊害として省みてはどうかというのが、件のラジオ番組を聴いた私の考えだ。
私達は、過剰な情報やヒューマンスケールをこえた計算結果に判断を左右され、縁という納得の仕方を大切にできなくなっている。 一人ひとりの存在は、ただの一レコードに貶められ、その固有性や人生という文脈を剥ぎ取られる。だから、
就職情報は働く意欲を奪い、 結婚情報は最愛の人への確信を奪い、 金融情報はお金の役立て方を奪い、 不動産情報は土地に根を下ろして生きる覚悟を奪っている。
やけっぱちな私はもう、そのように結論づけてしまいたいのだ。
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どんなに複雑な計算式で出された結果よりも、どんなに膨大な数のデータベースから「あなたに最適です」と選ばれたものよりも、私は、自分の目で見たものや経験に基づく結論に最もプライオリティをおいて生きていきたいと思うし、そうする権利があると思う。
2008年02月11日(月) 小乗仏教とホスト役 2007年02月11日(日) 根を張り枝を張るもの
立春。 立春も何も、立冬からやり直してはどうですかという暖かさ。
Hは楽しみにしていた-晴れて私のお許しを得た-一泊二日の山行きであるが、 登るべき氷が全て融けてしまい、行先に頭を悩ませている。
この冬はちょっとしたアクシデントが重なって、彼はほとんど氷を登っていない。このまま冬のシーズンが終わるとしたら気の毒になあと、私でも同情する程である。
それでも、イソイソと荷造りする後姿を見るとつい、「いっそ水着でも入れていったら?」と意地悪なことを口走ってしまう。
2008年02月04日(月) 幸福の技能 2005年02月04日(金) 睡眠運用 2004年02月04日(水) 【備忘録メモの日】
夕方、家族がみな揃って、いざ、と豆まき。
Aが去年こしらえた鬼の面を、鬼役のHがかぶる。 ご丁寧に手にはピッケルを持って、通報すれすれのいでたちである。
両手をあげて恐ろしくするHに、 初めのうちは「お面から顔がはみ出しているじゃないか」と笑っていたAであるが、かまわず続けるから次第に怖くなったのらしい。
顔面蒼白になって、おにはそと!ふくはうち!とマシンガンのように豆を投げるから、 あっという間に枡は空になって、年の数食べる分もなくなった。
ちゃんと逃げる演技もしたかったのに、と物足りなさそうなHと、 早く終わってよかったというAと、ただニコニコしている赤ん坊と私で、 とにもかくにも厄払い。
2006年02月03日(金) 2005年02月03日(木) 寒気 2004年02月03日(火) 河川敷の贅沢
「派遣切り」などで、昨年十月から今年三月までの間に失職したか、失職が決まっている非正規労働者が十二万四千八百二人に達することが三十日、厚生労働省の全国調査で分かった。というニュース。
この種のニュースで、人材派遣会社の責任がもう少し表に出てきてもいいのではないか、と常々思っている。もっともテレビを見ていないから、実際のところはよく知らない。
人材派遣会社は、思えば乱暴な事業体である。
派遣社員として働くというライフスタイルを、過剰に喧伝した。 テレビのCMでも、広告でも、それが自由といわんばかりに煽っていた。
企業の社会的責任を問うとすれば、派遣を受け入れていた会社よりも、派遣して利益を得ていた胴元の方だと思う。
2006年02月02日(木) 老賢人はどこへいった 2004年02月02日(月) 何が無事なものか
振り込め詐欺による被害がなくならず、撲滅キャンペーンを再開している、というニュース。
被害額は5億円を超えるとのことである。
手口の巧妙さもさることながら、この景気後退の時代に大金をぽいと差し出すことができる人が存在する、ということも驚きだ。
* 支払能力のない私などは別として、可処分所得が潤沢にある向きには、 それが9割9分詐欺とわかっていても、無下に扱うことに抵抗があるのだと思う。
何しろ、身内の危機がネタである。 万が一本当で大変な思いをするよりは騙されたほうがいいと、そう思ってしまうかもしれない。
だから、件の撲滅キャンペーンの方法としては、 あなたが今振り込もうとしているその金の行く末は犯罪組織かもしれず、 その場合は、新たな犯罪に手を貸すことになるのですよと、そういう示唆も必要かもしれない。
2008年02月01日(金) 冬将軍教室 2007年02月01日(木) 2006年02月01日(水) 2005年02月01日(火) 真贋の話 2004年02月01日(日) 春と氷
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