浅間日記

2008年02月01日(金) 冬将軍教室

二月をあらわす「如月」の語源のひとつには、絹更着、
すなわち衣服をもう一枚着るという意味があるのだそうである。

一年で最も寒い月とされているのだから、寒いのは当たり前なのだ。
コブシや梅が早々に花芽をふくらませる暖冬よりはいい。

だからといって一方的に凍えているわけにもいかない。
頭からつま先まで羽毛に身を包んだいでたちで、ほとんど一日中過ごす。
まるで俺のヒマラヤ仕様だとHに揶揄される。



自分のことはさておき、
この土地の寒さの中で子どもを育てられることには、感謝している。

冬の寒さは、間違いなく自然の厳しい在り様のひとつだ。
でもそれは災いではない。誰かの悪意や自己実現でもない。

人間の存在などに目もくれず、ただ寒風を吹き降ろし、
コトリとも音を立てずに冷気を運ぶ。

冬の寒さは、誰のせいにもできないのである。
こういう在るべくして在る厳しさは、社会装置ではつくれない。

受け入れるしかない厳しさの中で、じっと耐えたり、
それなりの知恵をしぼって安楽を見つけるという経験は、
人間の中に、替えがたいタフな精神性を育んでいく。

手や足にものすごいしもやけやあかぎれをこしらえながら、
嬉しそうに川原へピカピカ光る氷をはがしにいったり、
白い息をはずませながら冬の歌を口ずさむ子ども達を見ていると、そう思う。

この問答無用の厳しさをこうして耐えられるのならば、
将来出会う俗世の出来事に−それがどんなに厳しくつらいものであっても−自分を損なわずにいられるだろう、
少なくとも、私よりは上手くやっていかれるだろうと思う。

2007年02月01日(木) 
2006年02月01日(水) 
2005年02月01日(火) 真贋の話
2004年02月01日(日) 春と氷


 < 過去   INDEX  未来 >


ipa [MAIL] [HOMEPAGE]

My追加