よるの読書日記
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2006年03月24日(金) 君の匂い

『世界の中心で、愛を叫ぶ』<片山恭一/小学館>
ふつーに書棚に並んでいたので、何か感慨深いものがありました。
ブームは去りにけり。
ドラマのごく一部と映画は観ましたが、思いの外静かな話でした。
中学高校と成長していく二人のむずがゆいときめき。
映画やドラマの印象から時代や地域や固有名詞がどっさり出てくる
のだと思い込んでいたけれど、じつはそうでもなく、
ざっと読む分にはどこにでもある地方都市の、どこにでもいそうな
爽やかカップルなのです。
病床にあって不思議に明るさを失わない彼女。
キスシーンより無人島での一夜より、パスポートと着替えを
持ち出すために彼女の家に忍び込むシーンが妙に胸に迫ります。
彼女のブラウスに顔を埋める彼。ちょっとフェチっぽいね。
でも嗅ぐ、という原始的な行動が描かれているこの場面が、
最も生身の人間の話らしいと感じました。


2006年03月23日(木) マリコのオススメ

『20代に読みたい名作』<林真理子/文芸春秋>
友達のオススメ本第3弾。今気づきましたが文庫化にあたっては
タイトルが『林真理子の名作読本』と変わっただけでなく、
第2章が付け加えられているそうです。
でも図書館で借りて読もうとするとこれしかなかったんだ。(買えよ。)
私は富山市と金沢市しか住んだことがないのでわかりませんが、
富山市立図書館のハードカバー偏重システム(勝手に命名)は
時々不便。
まー確かに文庫やノベルスはたくさんの読者に貸すには傷みやすい
かもね。でも、金沢泉野図書館は新しいせいもあるにしろ、
文庫コーナーがすっごい充実してたしティーン向けのライトノベルにも
理解があってかなり冊数があったし(ただし人気シリーズは常時貸し出し中)、
書庫も半地下になってて開架されてて、雑誌のバックナンバーも自由に探せて
借りられて、良かったなー。

えー、この本、五十四作品を取り上げているのですが、私が読んだと
はっきり断言できるのは、何とたった十五作品。三分の一以下ですよ。
がーん。
自分に言い訳するならば『氷点』も『太陽の季節』も『放浪記』も、
あまりに有名すぎて何度も映像化されたり舞台化されたり、
どこかであらすじを目にしてもう読んだ気になっちゃってたり、
『限りなく透明に近いブルー』とか大分前の直木賞・芥川賞受賞作とか、
リアルタイムで読むのは簡単だけど後の世代は返ってあんまり読まないでしょ
という気持ちや、『キッチン』書かれた時もう林さん20代じゃない
じゃないですかなーんて逆ギレな気分もあるのですが。
でもまあ、自他ともに認める書痴のあたくしに、知らない名作が
いっぱいあるというのはやっぱりちょっと面白くないので
しばらくこの本をガイドに名作行脚してみようかなー。
意地悪をいうとこれ一冊読めばかなりの本を読んだ気にはなりますがね。
『火車』について「ミステリーなので結末について触れるのは控えるが」
なんて文言がありますが、純文学なら触れていいなんて誰が決めた。



2006年03月22日(水) フリルの日傘が欲しくなる

『下妻物語』<嶽本野ばら/小学館>
WOWOWでやってて、あまりのぶっ飛んだばかばかしさに
途中からだったのに最後まで観てしまった映画の原作。
ロリータファッションの桃子とヤンキーのイチゴの青春友情物語。
下妻の人が怒りはしないかというくらい執拗にヤンキー文化が跋扈する
田舎っぷりを描いていますが、たぶんSAGA佐賀も我が富山も
状況は似たようなものだと思われます。

それと同じくらい熱をこめて(語り手が桃子だから)
ロリータファッションについてもページが割かれています。
十七歳の頃って、自分でも頑なだと思うくらいラブリーなものを
敬遠する傾向にあったのに、最近そうでもなくなってきた。
むしろ大好きなのかもしれません。
うっかり作中に出てきた実在のブランドのサイトを見ちゃったり。
何やってんだか……。


2006年03月21日(火) 平安の言霊

『QED 百人一首の呪』<高田崇史/講談社ノベルス>
友達のオススメ本第2弾。タイトルだけ覚えておいて図書館で検索。
文学と歴史に詳しい薬剤師が百人一首にまつわる謎を解明する
ついでに殺人事件を解決。
この後龍馬暗殺の謎にも迫るらしいです。
殺人事件がわりとあっさりしていて、正直そんな小難しいこと
こねくり回さないでも、
被害者の最期の言葉に注目→検死で薬物検査→向精神薬検出
→ということは……。
てな科学的アプローチで何とかなりそうな気も……するかな?
ま、私のミステリ原体験は良くも悪くも金田一耕助なんで、
多少陰惨で残虐で非道でないとつまらないというろくでもない
感性が磨かれてしまっているのですが。

上述の理由もあり、あと被害者一族の生前の行動が、ねぇ。
いくら金持ちのワンマン社長って言っても、今の時代家父長的強権が
どこまで通用するのかってのが疑問。
息子だって親父が気に食わなきゃ大阪でも福岡でもニューヨークでも
地球の裏でも好きなとこ行けばいいだし。
素材が素材だし、もっと設定を前の時代にしちゃえば
良かったんじゃない?というのが素人意見ですが、しかしそうなると
このページ数では実現しなくなっちゃうだろうなぁ。

あと、『妖怪ハンター』(これは延期さんのオススメ。この話はまたいずれ)
読んだ後だと、主人公が自分の知の欲求を満足するだけに謎を
解決するのがなんとももったいない。
これで論文書いたりするわけじゃないですからね。
色々難癖つけつつ、結構面白かったので続きも読みます。
取り合えず龍馬暗殺までは頑張る。


2006年03月20日(月) 旅行の友 (別名お荷物)

乗り物酔いのくせに、つい本を用意してしまう。
待ち時間とか停車中とかあんまり揺れを感じないような時に
切れ切れに読むために。あるいは、宿で暇を感じないために。

金沢一泊旅行のために、バスの待ち時間に買ったのが
『恋』<小池真理子/新潮文庫>
言わずと知れた直木賞受賞作。最近の(と言っても京極さんと
江国さんのしか読んでないけど)直木賞って作家に
あげてるんじゃないの?!という私の中での印象がようやく
弱まりました。何か偉そうだな。つまりえー、××さんが
直木賞受賞、とニュース見て、受賞作!と帯ついてる作品を
読みたい、物知らずでいたいからなんですが。
だって前述の二人に限って言えば何故数ある著作の中からこれが
受賞?!って感じだったんだもん。大体『後巷説百物語』なんて
タイトルから明らかに続編じゃん。ビギナー向けじゃないと思うわ。

そういう私も小池真理子という人はミステリー作家だと長らく
思っていて(そういうアンソロジーに短編が収録されていたから)
どうも好みの作家ではなかったのですが、タイトルに惹かれた
『狂王の庭』で完っ全にノックアウトされてしまいました。
もしいきなりほれ、直木賞受賞作だよって渡されたらこの本を
読んでたかは怪しいですが。だって『恋』ですよ。気恥ずかしい。
でも、人が人に惹かれる、正に恋そのものを描いているのに、
何とまあ非倫理的で残酷な物語なんでしょう。
そして何より美しい。
普段着で来た痩せっぽちの女学生が片瀬夫妻と出会う
桜舞い散る華やかなガーデンパーティは何だか本を閉じても
目に浮かびます。
ヒロインはこの時点でもう一目ぼれ状態だったんだろうなー。
この貴族的な空間の外では学生運動が真っ盛りで、自分にも
同棲してる活動家の恋人がいるのにですよ。
子爵のご令嬢という言葉が何がしかの力を持っていたり、
まだそんな時代。

社会的には何の力もない妻の恋人がユートピアを壊す
悪魔のように描かれているのも興味深い。読者が見ても、
抗いがたい魅力はあるけどいい人に見えないの(笑)。
自分でもどうにもできないのが恋ってことでしょうか。

ちなみに今回、行きの高速バスではものすごい混んでて
補助席に乗せられて食べ物の臭いがして読むまでもなく酔いかけ、
旅行中は皆で盛り上がり、帰りのバスではうとうとして、
それでも三分の一は読んだかなぁという感じ。
残りはおうちでゆっくり楽しみました。
何故か薄い本や上下巻の上だけ持ってった時に限って、
読みきっちゃうんだよねー。


2006年03月19日(日) 贈り物は心を映す鏡

『食べ方のマナーとコツ』<渡邊忠司 監修・伊藤美樹 絵/学習研究社>
大学時代のお友達6人と金沢で集まった時文庫交換という
イベントをしまして、その戦利品。文庫じゃないじゃん!
しかし、選んでくれた子が私に当たる場合を危惧して、
絶対読んでなさそうなのを探すべく本屋で3時間かけて
選んでくれた逸品です。買いかぶり過ぎや。
この本を既に持ってるというS嬢の方が断然すごい。

可愛いイラストでとってもためになる内容。
レディ必読の書と言っても過言ではないでしょう。
確かに自分ではまず買わないタイプの本ではある。
しかも一冊あると何か安心。ありがとうよ相棒。

ちなみに私が選んだのは『光の帝国』
『時雨の記』にしようかとも迷ったけど、一応不倫なので
こっちに。
私の本棚、死体・殺人・不倫・鬼・幽霊・アンハッピーエンドが多過ぎ。
この際人は死んでも、希望の持てる終わり方の本といったら
本当に選択肢なかった。


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