よるの読書日記
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2006年07月18日(火) 「美しい」謎

『黒と茶の幻想』<恩田陸/講談社>
前に一度出だしで挫折したんですがこの本。今回恩田陸ブームにつき
頑張って読んでみました。最初のおばさんの嘆息みたいのが
何となくダメだっただけでY島(世界遺産)の旅に入ってからは
がーって読んでしまいましたが。それでも大分時間かかったかな。
読むと屋久島行きたくなります。いつかは行きたいです。
学生時代の旧友男二人女二人が(うち一組元カップル)が
旅の間にいろんな「美しい謎」に挑戦し、そのうちある大きな
過去の謎に迫っていく物語。
四部構成でそれぞれの視線から語られていきます。起承転結
の「転」が蒔生なのがポイント。真相と語られる事件とのギャップに
舌を巻きます。
節子さんイイ女だー。お友達になりたい。しかしこの四人の友情関係が
複雑で大人の付き合いですな。自分勝手で自分のことしか考えてない
蒔生氏が、一番もてもてなのが癪だな。

謎と言えばうちの茶の間にはアメリカンファミリーのようにサイドテーブル
やらテレビの上にごちゃごちゃ家族の写真が乗ってますが、
じっくり眺めたら母と妹の2ショットは二枚もあるのに
私と母のそれはない。家族全員のが一枚と、妹と三人で写ってるのが一枚。
謎だ。

ところで物語の鍵を握る謎の美女(回想にのみ登場)憂理は『麦の海に
沈む果実』の少女ですな。彼女の一人芝居に出てくる麗子も。
てころは恩田さんの中では常野みたいにシリーズとしてこの関連の
物語が作られているのか。ブームのうちに既刊なるべく読んでおこう。


2006年07月17日(月) 飄々    

『QED竹取伝説』<高田崇史/講談社ノベルス>
ぼさぼさ頭の飲んだくれ(私から見れば)漢方薬剤師が古代の謎に迫る
ついでに現代の殺人事件も解決する人気(たぶん)シリーズ。
今回のお題はかぐや姫。何か物足りないとか言いつつずっと読んでますが。
アレだな、ホンットに現実のミステリーが付け足しなのが
気に食わないんだな私は。結局加害者も被害者も他人だもんな。
謎を解いたところで犯人はわかるけど誰が救われるわけでなし。
むしろ被害者側の家族なんか
「そんな理由でぇぇぇぇ?!」
って感じになっちゃうし。
毎回語られる謎には目から鱗なんですが。
この際いっぺんヒロインが失踪でもやってみないか。たまには狼狽する
主人公を見てみたいぞ。


2006年07月16日(日) いつか体重計から転げ落ちるとしても     

『いつか記憶からこぼれおちるとしても』<江国香織/朝日新聞社>
今度は逆に女子高もの。連作短編。
江国香織の描く女子高生はやっぱり江国香織の中の女だなあ。
当たり前か。妙に達観してるような、それでいて訳のわからん理屈で
トリップしちゃうところ。主に恋愛関係。

でも女子高特有のいやらしさ(女子高行ったことないけど)が
端々に出てきてそうそう女社会ってこんな感じ!と思いましたよ。
それにまあ江国香織の小説で
「超偉くない?」
なんて台詞が出てくるとは。妙に新鮮。

最後の太目の女の子のネガティブさが怖かった。マグマの如く負の感情が
湧くのも十代ならではかも。私は恨み張とか復讐日記とかつけたことは
ないですが。
わかってるのに食べちゃう、ストレスで食べちゃうというのもわかるのよ。
すっごく。なのに見た目でどんくさそうに見られたり何言っても
傷つかなさそうに思われたり、自分でもひどいこと言われたと感じてるのに
へらへらしてしまって自己嫌悪も重なったり。
私は本当に恨み張とか復讐日記とかつけたことはないですが。愚痴はたれるが。


2006年07月15日(土) 泣くこと厳禁!(泣)

『飛ぶ教室』<ケストナー/岩波書店>
やっぱり、好きな物書きが好きな本は一読に値する。
吉野朔実も言ってたけど、こういう本をちゃんと子供の頃読んでたら
人生変わってたかも。うーむ。
すっごい昔ながらの題材なのに素直に泣いてしまった。
一人一人の少年達(過去、少年だった先生達も含め)が
個性的でかわいい。
年頃の男の子の寮生活ものってドラマ性があって面白い。
恩田陸の『ネバーランド』とか。映画ハリポタのアズカバンで、
夜男の子達がおやつで遊ぶシーンも短いけどほほえましい。

我ながら、現実の中高生男子が群れて現れると
「群れるな!集まるな!騒ぐな!!お前らなんか独特の青春臭がするぞ!
ファブリーズしろ!駐車場でもの食うな!ゴミはちゃんと捨ててけー!!」
と、毎日思ってる人間の感想とは思えませんが。


2006年07月14日(金) 価値あるからこその人質

『女帝の歴史を裏返す』<永井路子/中央公論新社>
永井先生です。最近は小説ではなく評論や歴史の見方みたいな
ご本が多いですね。いや、お年を考えると新作の著作が
あるということ自体すごいんですけれども。
この方がたぶん人生で最初に触れた歴史小説家であったために、
私は女は添え物・道具的な戦国史観では納得できない人間に(笑)。
今回も「女帝は中継ぎ」説を明快にひっくり返しておられます。
素敵。


2006年07月13日(木) ドラマチック近現代史

『ねじの回転』<恩田陸/集英社>
「タイムスリップ」と「2・26」 。あれ?と思った人は
世の中たくさんいるようです。そりゃそうか。
で、大体どっちが面白かったかを書くようです。
『蒲生邸事件』<宮部みゆき/文春文庫>ですね。
まあでも現代人がタイムスリップして台風の目のすぐ側まで
行った話と実際事件の主要人物が台風の目の中にいる話とでは
全然違うと思うけど。
どっちが先かわからんけど、とにかく両方出版されたことに乾杯。

しかし、最初読み出してあまりの難しさに放り出しそうに
なりました。設定がね。かなりの部分が語られてないもんね。
「聖なる暗殺」についても。
こんがらがらが、行ったりきたりしながら読みました。
面白かったがしんどかった。
この本を読めただけまだまだ私も捨てたもんじゃないですな。
(重い本が集中的に読めなかったときって年を感じませんか?)


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