よるの読書日記
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『黒と茶の幻想』<恩田陸/講談社> 前に一度出だしで挫折したんですがこの本。今回恩田陸ブームにつき 頑張って読んでみました。最初のおばさんの嘆息みたいのが 何となくダメだっただけでY島(世界遺産)の旅に入ってからは がーって読んでしまいましたが。それでも大分時間かかったかな。 読むと屋久島行きたくなります。いつかは行きたいです。 学生時代の旧友男二人女二人が(うち一組元カップル)が 旅の間にいろんな「美しい謎」に挑戦し、そのうちある大きな 過去の謎に迫っていく物語。 四部構成でそれぞれの視線から語られていきます。起承転結 の「転」が蒔生なのがポイント。真相と語られる事件とのギャップに 舌を巻きます。 節子さんイイ女だー。お友達になりたい。しかしこの四人の友情関係が 複雑で大人の付き合いですな。自分勝手で自分のことしか考えてない 蒔生氏が、一番もてもてなのが癪だな。
謎と言えばうちの茶の間にはアメリカンファミリーのようにサイドテーブル やらテレビの上にごちゃごちゃ家族の写真が乗ってますが、 じっくり眺めたら母と妹の2ショットは二枚もあるのに 私と母のそれはない。家族全員のが一枚と、妹と三人で写ってるのが一枚。 謎だ。
ところで物語の鍵を握る謎の美女(回想にのみ登場)憂理は『麦の海に 沈む果実』の少女ですな。彼女の一人芝居に出てくる麗子も。 てころは恩田さんの中では常野みたいにシリーズとしてこの関連の 物語が作られているのか。ブームのうちに既刊なるべく読んでおこう。
『QED竹取伝説』<高田崇史/講談社ノベルス> ぼさぼさ頭の飲んだくれ(私から見れば)漢方薬剤師が古代の謎に迫る ついでに現代の殺人事件も解決する人気(たぶん)シリーズ。 今回のお題はかぐや姫。何か物足りないとか言いつつずっと読んでますが。 アレだな、ホンットに現実のミステリーが付け足しなのが 気に食わないんだな私は。結局加害者も被害者も他人だもんな。 謎を解いたところで犯人はわかるけど誰が救われるわけでなし。 むしろ被害者側の家族なんか 「そんな理由でぇぇぇぇ?!」 って感じになっちゃうし。 毎回語られる謎には目から鱗なんですが。 この際いっぺんヒロインが失踪でもやってみないか。たまには狼狽する 主人公を見てみたいぞ。
| 2006年07月16日(日) |
いつか体重計から転げ落ちるとしても |
『いつか記憶からこぼれおちるとしても』<江国香織/朝日新聞社> 今度は逆に女子高もの。連作短編。 江国香織の描く女子高生はやっぱり江国香織の中の女だなあ。 当たり前か。妙に達観してるような、それでいて訳のわからん理屈で トリップしちゃうところ。主に恋愛関係。
でも女子高特有のいやらしさ(女子高行ったことないけど)が 端々に出てきてそうそう女社会ってこんな感じ!と思いましたよ。 それにまあ江国香織の小説で 「超偉くない?」 なんて台詞が出てくるとは。妙に新鮮。
最後の太目の女の子のネガティブさが怖かった。マグマの如く負の感情が 湧くのも十代ならではかも。私は恨み張とか復讐日記とかつけたことは ないですが。 わかってるのに食べちゃう、ストレスで食べちゃうというのもわかるのよ。 すっごく。なのに見た目でどんくさそうに見られたり何言っても 傷つかなさそうに思われたり、自分でもひどいこと言われたと感じてるのに へらへらしてしまって自己嫌悪も重なったり。 私は本当に恨み張とか復讐日記とかつけたことはないですが。愚痴はたれるが。
| 2006年07月15日(土) |
泣くこと厳禁!(泣) |
『飛ぶ教室』<ケストナー/岩波書店> やっぱり、好きな物書きが好きな本は一読に値する。 吉野朔実も言ってたけど、こういう本をちゃんと子供の頃読んでたら 人生変わってたかも。うーむ。 すっごい昔ながらの題材なのに素直に泣いてしまった。 一人一人の少年達(過去、少年だった先生達も含め)が 個性的でかわいい。 年頃の男の子の寮生活ものってドラマ性があって面白い。 恩田陸の『ネバーランド』とか。映画ハリポタのアズカバンで、 夜男の子達がおやつで遊ぶシーンも短いけどほほえましい。
我ながら、現実の中高生男子が群れて現れると 「群れるな!集まるな!騒ぐな!!お前らなんか独特の青春臭がするぞ! ファブリーズしろ!駐車場でもの食うな!ゴミはちゃんと捨ててけー!!」 と、毎日思ってる人間の感想とは思えませんが。
| 2006年07月14日(金) |
価値あるからこその人質 |
『女帝の歴史を裏返す』<永井路子/中央公論新社> 永井先生です。最近は小説ではなく評論や歴史の見方みたいな ご本が多いですね。いや、お年を考えると新作の著作が あるということ自体すごいんですけれども。 この方がたぶん人生で最初に触れた歴史小説家であったために、 私は女は添え物・道具的な戦国史観では納得できない人間に(笑)。 今回も「女帝は中継ぎ」説を明快にひっくり返しておられます。 素敵。
| 2006年07月13日(木) |
ドラマチック近現代史 |
『ねじの回転』<恩田陸/集英社> 「タイムスリップ」と「2・26」 。あれ?と思った人は 世の中たくさんいるようです。そりゃそうか。 で、大体どっちが面白かったかを書くようです。 『蒲生邸事件』<宮部みゆき/文春文庫>ですね。 まあでも現代人がタイムスリップして台風の目のすぐ側まで 行った話と実際事件の主要人物が台風の目の中にいる話とでは 全然違うと思うけど。 どっちが先かわからんけど、とにかく両方出版されたことに乾杯。
しかし、最初読み出してあまりの難しさに放り出しそうに なりました。設定がね。かなりの部分が語られてないもんね。 「聖なる暗殺」についても。 こんがらがらが、行ったりきたりしながら読みました。 面白かったがしんどかった。 この本を読めただけまだまだ私も捨てたもんじゃないですな。 (重い本が集中的に読めなかったときって年を感じませんか?)
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