よるの読書日記
DiaryINDEX|past|will
『英国こんなとき旅日記』<江國滋/新潮社> 書かれたのはたぶん湾岸戦争の頃。 あとはご自身の体調とか何とかも含めて、 「こんなとき」という語に結びついたのでしょうが、 戦争やってる国に行くとはいうものの、 まあ戦闘地域は中東ですし。 乗った飛行機がハイジャックされてビルに突っ込むかも、とか 観光に向かった所で自爆テロに巻き込まれるかも、というほどの 危機感はなかったと思われます。世情の悪化ここに極まれり。 暗澹たる気分になりました。 旅日記そのものは軽妙洒脱。池波さんのエッセイとか、旅慣れてる おじさんの文章はゆとりがあって楽しい。
| 2004年01月07日(水) |
術で記憶を蘇らせたい |
延期さんに借りた『吉備真備 陰陽変』<片桐樹童/学研M文庫> そういえばブーム来ませんでしたね……。 この記事を探すために延々私達の愛のメモリーを読み返してしまいました。 まさかこんな前の記事だったとは。無駄に記憶力がいいのも考え物ですね。 つーか改めていつも色々ごめん。
元正天皇というと『美貌の女帝』<永井路子/文芸春秋>のイメージが 強いのですが、吉備真備は出てきてたっけ。読んだの高校生だったと 思うのですが、あんまり内容ははっきり覚えてません。 どうなってるんだ私の記憶力は。情けなし。 陰陽道はブームにはなったものの、安部晴明に始まり安部晴明に 終わっちゃった感じですな。 しかしパソコンで立派に変換できる点で評価するなら日本の陰陽道の始祖たる 真備さんの方がずっと上。ま、政治の表舞台における貢献度が違うので当然か。
子供子供した少女との凸凹コンビぶりがかわいかったです。 続編が読みたい感じ。この子がああなってこうなるんだけどねぇ。 この作者さんならどう解釈するのか、興味あります。 しかしあの時代姉妹が同じ男に嫁いだり。(持統天皇とか) 後世と違って未亡人が天皇位につくのも(同上)決して珍しく なかった訳でしょう。何故隠す?その辺の説明、忘れてたらごめん。
『風の帰る場所』<宮崎駿/ロッキング・オン> 宮崎監督のインタビュー集です。 このお人はもう歩く雑学事典みたいにお話も面白い。 長い期間(副題が「ナウシカから千と千尋までの軌跡」)の インタビューである分、アニメに対する変わらない思いが 伝わってきます。 何となくインタビュアーと話が噛み合ってないような 部分も所々あるような気もしましたが。 まぁどれだけ長いお付き合いでも、こんな矛盾だらけな おっさんの言わんとすることをその場で読み取れる 理解力と教養のある人ってなかなかいないかもな。 偉そうなことを言ってしまったが読んでいても理解できてるか 自分でもアヤシイし。 でもしゃべってることをその場で100%わかってもらえる 実感があるなら、きっともう映画なんか作らないで2時間一本 数百万円とかで全国講演して回ってるわな。もしくはパパッと できる実写映画を撮りまくるとか(←それって弟子では)。 で、きっと作った映画にピント外れな絶賛を浴びせられる度に 「そうじゃなんだよなー!」 と次の作品の原動力になると。良くできている。
『日曜の夜は出たくない』<倉知淳/創元推理文庫> 恋する女の不安を描く表題作を含む短編集。 挙動不審は恋愛に夢中な人の専売特許みたいなものですから、 わからないでもない。 何かと仕掛けのある意欲作のようですが、正直、面倒くさいぞ。 一行一行丹念に読むタイプの人には向いてるかもしれません。 ざっと読んで、もう一回読み返す系(そして読み飛ばしてた ページがあったことに気づいたりする)の私にはハードルが 高かった。作品そのものはどれも面白かったのですが。 河童の話とか怖かった。
『オルガニスト』<山之口洋/新潮文庫> 完璧を求めるがゆえに、時に天才は狂気に陥る。 自らの才能すらも冒涜して。
何だか背筋のぞくぞくする話でした。そこまでして 音楽やりたいか!というか。 義手・義足・義眼・ドーピング・ペースメーカー・臓器移植・ 乳房再建、そのどれとも似て非なるこの違和感は何だろう。 私個人は開腹手術はおろかピアスもしたことない人間なんで 身体にメス入れる、とかいうのがそもそも苦手なんですが。 やっぱり普通に生活する面では何ら問題ない――そこら辺に 認識のずれがあるとは言え――のにアレコレするのが どうも受け付けないようで。 でもなくしたものを取り戻したいと思うのもこれまた人の性って ものなのかも。哀しいなぁ。
|