野生の森
高瀬志穂



 忘れな草。44  にょ *

「あ、す…。」

 キラの目がとろんとしたものになると、アスランはゆっくりと唇を近づけた。すると、キラも自分からアスランの唇に自分のそれを近づけた。そしてゆっくりと重なり、離れ、また重なる。
 アスランがちらりと目を動かすとそこにラクスの姿はもうなかった。
 いないことを確認し、アスランはベッドの上へと乗り、キラの背中へと腕を回す。キラが求めるようにキスをすると、うっとりした表情へとどんどん変わっていった。
 しばらくしてアスランが唇を離すと、キラは名残惜しそうな顔をした。それからアスランの服に手を伸ばそうとするのだが、アスランはその手をとった。

「キラ…お前が欲しい。いいか?」

 じっとキラを見つめてそう問い掛ける。アスランの力によって快楽を求める身体となっているキラはアスランを物欲しそうに見つめた。けれどそれだけではなかった。キラのほんの少しの意識があるのか、少しだけ考え込んで、頬を染めて首を縦に振った。
 それを確認し、アスランはキラの首筋にキスを落としていく。

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 短くてすいませ…。エロ入れなくてすいませ…。もう少しです。

2006年02月07日(火)



 忘れな草。43 にょ

 キラの力がアスランの命となる。
 キラを死においやる力。けれどそれはアスランにとっては救い。そしてそれをキラから取り除くことによってキラも救われる。

「それでキラが助かるんですね。」
「えぇ。その力だけをあなたの身体にとりこめば…。あなたの身体に入ってもあなたの身体が拒否反応を起こせば、あなたはキラの変わりに新月の晩に死にますわ。それでも…構いませんか?」

 それは最後の選択。逃げられない事実。
 けれどキラを救えるかもしれない唯一の方法。
 自分を危険にさらすのは構わない。けれどキラを危険にさらしてしまうことは確かだ。
 それでも何もせずにこのまま二人で死ぬよりは何倍もいい。
 アスランはラクスの目を見つめて首を縦に振った。生きた目をして。

「そう…。分かりましたわ。私はただ成功することを祈っておりますわ。」
「…ありがとう。」

 アスランはラクスに深々と頭を下げた。今までの事への謝罪と感謝の気持ちをこめて。

「私の力で今晩キラを無理矢理にでも覚醒させますわ。…ほんの一瞬ですけど。その時力を使ってください。そうすればキラはしばらくの間目覚めていられますから。」
「その時、キラの心はどこに…?」
「キラにとっては夢みたいなものになってしまいますわ。完全に目覚めるわけでもなく、寝ている訳でもなく。それでもあなたの言葉は少しは通じるかと。」

 キラは夢の中。けれどアスランには現実。さらには片方だけの思いでキラを抱くことになる。力を使って合意という形になるとしても。

「彼女はあなたを求めてきますわ。…それは力の影響だけではないことを忘れないでください。」
「え?」
「力は力。思いは思い。本当に嫌いならキラはあなたを求めたりなんてしませんわ。」

 初めてここでキラに力を使わされた時もキラはアスランを求めてきた。それは心の中にアスランを求める気持ちがあったから。その気持ちを引き出すのがアスランに備わった力。

「終わったらまたここに来てください。」

 そう言い残してラクスはどこかへと消えてしまった。

「今夜…。」

 キラは許してくれるだろうか。キラを抱く事を。待って欲しいと言ったのにその言葉を無視することを。

「けれど…けれどそれ以上にお前が死ぬのだけは耐えられないんだ…!!!」

 アスランは拳を強く握りしめる。辛さに耐える為に。
 全ては今夜。



 ラクスとの話を終えてアスランはまたキラの部屋へとやってきていた。ベッドの横にある椅子に座り、キラの手を握りしめる。

「愛してるよ、キラ。他の誰でもなく、お前だけを。」

 そして軽い口づけを交わし、そのまま夜になるまで手を握りしめ続けていた。



 真夜中。一度部屋に戻ってきたアスランは病院内が静まり返ってしばらくした後にキラの部屋へとやってきた。

「お待ちしておりましたわ、アスラン。」

 するとその部屋には屋上でしか姿を見た事のなかった少女がいた。

「あぁ。頼む。」

 アスランがそう合図をするとラクスは大きな鎌をふわりとキラへと振りかざす。するとキラのまぶたがかすかに動いた。
 アスランはキラへと近づき、キラの瞳が開くのをじっと待った。そしてゆっくりと目が開くと同時に視線が合った。

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 さて、ぼちぼちエロ凸乳…違う!突入です。どんな変換ですか…。
六日連続更新しましたが…明日は微妙です…。

2006年02月06日(月)



 忘れな草。42 にょ

「キラ…!!」

 自分はこうして手を握り続ける事しか出来ないのかと、アスランは思う。キラに何もしてやれなくて悔しさがこみ上げてくる。

「少しだけ待っててくれるか?」

 アスランはそう言って握りしめていた手を離した。



「話がしたい。」

 屋上についたアスランがそう口にするといつもの場所にラクスは座っていた。

「えぇ。キラのことですわね。」
「…俺がキラを救う方法は全くないのか?」

 アスランの力ではもうどうにも出来ない。医者の力であっても。あと頼れるのはラクスだけ。

「一つだけ…けれど失敗したらどうなるか分かりませんわよ。」

 そんなラクスの口からアスランにとってこれ以上ないほどの希望の言葉が出た。

「!!あるんですか、方法が。なら教えてくれ!」

 一つしかなくてもいい。たった一つでもあるのなら。

「……キラの身体のことはご存知ですか?」
「昔から身体が弱くて、色々と手術を繰り返していることは…。」
「キラはただ身体が弱いのではありませんわ。内側にある力が強すぎるために肉体に負担を与えているのですわ。」
「力…?」
「えぇ。前にアスランにお話になりませんでしたか?他の人とは違った力を持っている事を。」

 確かにキラはアスランに言った。死が見える、と。

「その力が余りにも大きくてキラの身体が支えきれないのですわ。」

 内側からの力が強すぎる為にキラの身体は弱くなっている。どんなにすごい力をもっていようともそれにあった器がなくては意味がない。

「じゃあ一体どうしたら…。」
「その力をキラの中から取り除いてしまえばいいのですわ。そうすればもうキラは内側の力によって押されることはありません。上手くいけばあなたのその命も元に戻りますわ。今のアスランはキラの中のその力によって動いているのですから。あなたが動くことによってキラに負担を与えていますけれど、あなたがキラの中の力を使うことによってキラの身体への負担を減らしているのも確かなのですから。」

 キラの力を取り除く。そうすればキラは死なずに済む。普通の女の子のようにはしゃぐ事が出来る。
 けれど先ほどラクスは失敗したらどうなるか分からないといった。それほど難しいこと。失敗すればキラの生命力を吸い上げてしまい、そのまま死に至ってしまうのだから。

「しかしどうやったら…。」
「方法は前に言ったのと同じですわ。命を貰う方法と。けれど上手くその力だけをあなたの中に取り入れなければ…。」


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 とりあえず文章じゃないけど…こんな流れって感じで急ぎ足で。
だって会話しか…ここは会話しかないんだもん!!

2006年02月05日(日)



 忘れな草。41 にょ

 なんで忘れていたのかそれも思い出した。ずっとふせぎこんでいて、けれどある日彼女が現れて。
 前と変わらずピンク色の奇麗な髪をなびかせて、月を背に現れた。あの時の血まみれな様子とは違い、黒いドレスを身にまとって。
 そして持っていた大きな鎌を軽々と動かすと身体の力が抜けていった。多分あの時、ラクスがアスランの記憶を封印したのであろう。
 だからと言って忘れていいはずがなかった。封印されたとしても、ラクスの存在を消していいはずがなかった。
 彼女は確かにそこに存在したのだから。その存在したという証拠が記憶なのだから。

「けれどそのままだったらお前は壊れていただろ…?」

 確かにカガリの言うとおりだった。あのままだったら壊れていた。まだ幼かった目で友人が血まみれの姿になったのを見てしまったから。

「カガリは…俺がまたあんな風にならないように気を使ってくれていたんだな。」

 カガリは一言も彼女のことを言わなかった。彼女の存在を無にするのはとても辛かった。けれどそれ以上に壊れてしまいそうな人が彼女の側には二人いた。
 アスランとキラ。
 キラもあの日以来、しばらく誰とも口をきけなくなっていた。カタカタと身体を震わせ、ずっと何かに怯えていた。
 そのキラが声を出せるようになったのはアスランがまたキラの元に遊びにくるようになってからだった。

「私は…私も悲しかった。ラクスが突然いなくなって…。けれど泣き叫ぶことも…出来なかった…。」

 辛かったのはキラだけでもアスランだけもない。カガリもそうなのだ。けれどすがれる相手などおらず、ずっと気を張っていた。自分が強くなくてはいけないと。
 あの時のことを思い出すようにカガリの目からはつぅっと涙が流れた。ずっと二人の前で流す事の出来なかった涙が。

「…すまない。今日は帰るよ。」

 カガリは自分の手で涙を拭った。見られたくない、と。そんなカガリをアスランは見上げた。

「ごめんな、ずっとカガリも辛かったのに気づいてやれなくて。」
「お前はキラしか見てなかったからな…。キラにお前が近づくのは気に入らないけれど、お前が側にいるとキラが嬉しそうに笑うんだ…。私は、キラが笑ってくれるのが一番嬉しいからな。」

 そう言ってカガリはキラに一言声をかけて部屋から出て行った。
 二人きりの病室。そこは外からの音と、二人の心音と息づかいのみの音が存在していた。

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 キラが出てこなくてすいませ…いや、いるんだよ。寝てるだけで。
しかしまだ終わらない…長いなぁこれも。


2006年02月04日(土)



 忘れな草。40 にょ

 目が覚めたら一番に目の前にいたかった。けれど、キラはいつ目覚めるのか。もしかしたらこのまま目覚めないのかもしれないとアスランは不安に思う。

「ただ寝てるだけだっていうのに……俺は弱いな…。」

 死と隣り合わせでずっと生きてきたキラ。アスランも自分の死と隣り合わせになっている。けれどそれよりもずっとキラが死んでしまうのではないかと思う方が怖かった。
 そんな時、がちゃりと扉が開き、勢い良く少女が部屋へと入ってきた。

「キラ…!!!キラは!!」
「……。」

 キラと同じ顔をした少女、カガリはまっすぐにキラにかけよった。しかしかなりの大声を上げたのにも関わらず、キラはぴくりとも動かなかった。

「一体…どういうことなんだ、アスラン!!」

 カガリは何も言わずただキラを見つめて手を握りしめていたアスランを怒鳴りつけた。けれどアスランもキラと同じように全く動かなかった。

「答えろ!!」

 カガリは泣きそうになりながらも声を絞り出した。

「……ラクス…。」
「え?」
「カガリは覚えているか?ラクスのことを。」

 その名前をはっきりと耳にしたカガリは先ほどまでの勢いを止め、小さくこくりと頷いた。

「俺は忘れていたんだ。何もかも…存在も全て。」
「それは…。」

 カガリは覚えていた。そして知っていた。ラクスがいたこと、そしてアスランの目の前で死んだ事を。
 血だらけになって動かなくなってしまったラクスを目の前で見て、そしてその身体を抱きしめたことも。
 それ以来しばらくアスランはふせぎこんでしまい、キラのもとどころか家からもほとんど出なかった事を。
 だからカガリもその名前を口にすることはなかった。アスランがまたあんな風になってしまったら大変だから。
 いつの間にか、アスランも元気になっていた。いつの間にか、というのは語弊があるかもしれない。ある日突然、普通にキラのもとに遊びに来るようになっていた。あの事故もラクスも何もかも忘れてしまったかのように。
 カガリはアスランがただ元気になったのだと思った。いつまでもふせぎこんでいては駄目だからと思い直したのかと思った。
 だから何も言わなかった。

「辛い過去全てを封印したんだ…。彼女と過ごした日も一緒に。四人で過ごした日は凄く楽しかった。けれどそれ以上に思い出すと辛くて…。」



++++++++++++

 苦悩アスラン。
とりあえず書きたいシーンの為に頑張ります。
もう少しでエロに入れるかと…思うのですが。けれど今ちょっと一番書きたい裏な見せ所はアスキラじゃないのですが。
ここまできてアスキラ以外といえば…みたいな。
いや、一度描いてみたいんですもの!あくまでアスキラ前提なんですが。だってそうじゃなきゃ書けないし、書きたくないし。
アスキラは何があっても離れる事ないバカップルです。あたしの中で。

……しかしなぜかうっかりルナマリアを虐める話が書きたいです。エロいやつ。メイ+アス×ルナなやつ。

2006年02月03日(金)



 忘れな草。39 にょ

 彼女はどうしてここに現れたのか。恨んでいないというのに、どうしてキラの魂を連れに来たのか。
 どうしてアスランのことを助けてくれるのか。
 アスランには分からない事だらけだ。一体自分は何を知らないのか。
 けれど自分の事よりも今はキラのこと。

「目が覚めたら…教えてくれるか?それとも…。」

 握ったキラの手をさらにぎゅっと握る。けれどそれは握り返されることはなかった。



 そのままずっとキラの側にいたいと願ったのだがそういう訳にもいかず、アスランは部屋へと戻ってきた。寝たくない。寝られない。けれど自分が無理をすればキラに負担がかかるし、キラが目覚めたときにアスランがぐったりしていたらキラが心配するであろう。
 アスランは仕方なく目を閉じた。すると自分の意志とは反対にすぐに眠りについた。何かに引き寄せられるように、夢の世界へと向かった。


 次の日、朝早くからキラの部屋にアスランは向かった。けれどキラはまだ昨日の格好のまま眠っていた。
 アスランは昨日と同じ様にキラの手を握ってキラが起きるのをじっと待った。
ーーーーーけれど、キラはいつまでたっても目覚める事はなかった。

「一体どういうことなんだよ…!!」

 フラガはイライラした面持ちでそう吐き捨てた。ずっと目覚める事のないキラはすぐに検査されることになった。けれど結果に異常はなかった。ただ眠り続けている、という。植物状態になったわけでも、何でもない。普通に眠っているだけ。

「おい、お前は何か知っているのか?」
「……。」

 アスランは何も答えずにキラの手をずっと握りしめていた。アスランは何もしていない。昨日ラクスと話をしただけ。そしてそこでキラが眠ってしまっただけ。
 けれど自分に非がないなんて言えない。

「昨日、キラさんは泣きつかれたって言ってたわよね。」

 マリューにそう言われ、アスランは頷く。

「何か…泣かせる様なことを言ったの?」
「いえ……俺は何も…。」
「じゃあなんで泣いたの?」

 それは自分が見殺しにした人物がそこにいたから、なんて話す事は出来ない。そんなこと信じてもらえる訳なんてないのだから。

「目覚めたくないのかもしれないわね。目覚めると辛いから。……一人の世界は傷つかずに済むから。それはとっても悲しいことなのにね…。」

 マリューはアスランから無理に話を聞き出す事はなく、そう呟いた。

「目が覚めたらすぐに知らせろよな。」

 フラガはそう言い、二人は部屋を出て行った。
 そしてアスランはずっとキラの手を握りしめ続けた。



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 眠り姫突入です。別に入ったからって何かあるわけでもありませんが。
ここから…アスキラ以外のカプ嫌いな人いたらすいません。いや、けどあくまでアスキラですので、これは。

2006年02月02日(木)



 忘れな草。38 にょ

「ごめん…ごめんなさい、ラクス…。」
「キラ!!」

 泣きつかれたようにキラの身体はふわりと横に流れ、そのままその場所に倒れ込んでしまった。アスランは慌ててかけより、キラの身体を抱き起こした。

「早くキラを寝かせてあげて下さい。」
「…しかし…。」
「私は逃げませんわ。逃げられませんもの。またお話がしたくなりましたらここにおいで下さい。」

 ラクスはにっこりと微笑む。アスランはそんなラクスの言葉に頷いてキラを抱えて部屋へと向かった。
 昼間ということですれ違う人が不思議そうな顔をして二人を見ていた。それもそうだろう。キラはぐったりとした様子でアスランに抱かれているのだから。

「あら、どうかしたの?」

 ふとそんな時、一人の看護婦が声をかけてきた。アスランが目覚めたときにいたマリューと呼ばれた看護婦だった。

「え、あ…。何か寝ちゃったみたいで……。」

 一瞬アスランはどきりとしてしまう。キラは自分と違って病人で、そんな子がこんなぐったりとした状態でいるのだから。

「本当に?」

 怖いくらいの笑顔でにっこりと微笑まれ、アスランは苦笑いで返すしか出来なかった。

「……いや、ちょっと泣きつかれたみたいで…。」
「泣かせたの?あなたが?」
「いえ、俺が泣かせたわけじゃ……遠回しに俺も関係してるんですが…。」
「はっきりしないわね…。」

 マリューはキラの顔を覗き込み、その頬に手を当てた。

「まぁ、あなたの言う通りただ寝てるだけみたいだし。早くベッドに寝かせてあげて。」
「はい。」

 そのままアスランはキラの部屋へと来て、ゆっくりとキラをベッドへと横たえる。そしてそのままベッドの隣に置いてあった椅子に座った。
 泣きはらしてほんの少しだけ赤くなっているまぶたをアスランは優しく撫で、それからキラの手を握りしめた。

「ずっと…抱え込んでいたんだな、一人で。」

 病気と、力と。それによって起きてしまった事故。それをキラは一人で抱え込んでいた。誰にも言う事なく、誰にも言えず。

「ラクス、君は一体…。」

 忘れていた、忘れさせられていた記憶。
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 ようやく終わりに向けて話が進み始めました。
もうぼちぼち終わる…かなぁ。
とりあえず最後まで流れは決まったので、それに向けてその間を考えればよいだけなのですが。

2006年02月01日(水)
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