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題名に、「日記と言うよりメモ」の言葉が含まれた場合は、
母の様子や入院等についての内容が書かれています。
ここに、ガンのコトが少し書いてあります。
| 2002年08月09日(金) |
日記と言うより記録(7/29−3) |
看護婦さんが病室を訪れた。 お世話になった看護婦さん。 ちょっといい?お別れ言いに来たの、 よく頑張ったよねぇY子さん・・・。
じっと見ていた。 私達は泣いていたと思う。看護婦さんは泣かない。
やがて数名看護婦さんがやってきた。 身体をきれいにしますね。 お風呂には入れてあげられませんか? ごめんね、そう言う施設はないの。 そうですか・・・。『汗かいていたのに』 着替えは何かありますか? え?着替えですか? えぇ浴衣とかパジャマとかお洋服とか。 『全然思いつかなかった』ありません。 そっかぁ、じゃあ病院のでも良いですか? お願いします。 では、管とか抜くのでお部屋から出ていて頂けませんか? あ、判りました。 3人で部屋を出る。
この時、父は既に病室から立ち去っていた。 葬儀などの打合せに向かっていたと思う。
何も変わっていない見慣れた風景なのに どこにいるのか判らない気持ちになる。
あぁ連絡しなくちゃいけないね。 そうだね。 伯母ちゃん、悪いけど叔父さん達にお願いします。 私とA子で母の友人に連絡をする。 あ、携帯病室だ。
妹が病室の看護婦さんに声をかけ、携帯を取りに入る。 母の携帯の登録されている友人に、妹と手分けをして電話した。
Y子ノ娘ノZデス。母ハ7時34分ニ息ヲヒキトリマシタ。 この間あった時は元気だったのに・・・。 スミマセン、アノ翌日アタリから急ニ悪クナッテ。後ハ転ガルヨウニ 悪クナッテイッチャッテ。 嗚咽だけが耳に聞こえてくる。 判ッタワ、力ヲ落トサナイデネ。何カアッタラナンデモ言ッテネ。 ○サンニ、ゴ連絡シテイタダケマスカ? 判リマシタ。 アリガトウゴザイマス。
何件に電話したか覚えていない。 でも3件、連絡しなかった。 仲たがいした人・お見舞いにも来てくれた少し変わったご婦人 あと、泣き虫君に。 泣き虫君に連絡することは、ずっと妹と悩んでいた。
やがて看護婦さんが、お化粧どうしましょうか?と 聞いてきた。 『自信がない・・・』お願いできませんか? 母の化粧道具を渡す。
どうぞ。 病室に招き入れられた。 どこも変わっていない部屋なはずなのに、何かが違う。 まだ暖かい母を3人でさわる。
でも時は私達を追いたてる。 泣きながらでも進めと言うようだ。
部屋の明け渡しのための、片付け 母と家に帰るための準備がある。
父が戻ってきたと思う。母を連れて帰る手はずが整った。
ほとんど捨てた。入院の為に揃えたものはほぼ捨てた。 何も持って帰りたくなかった。 母の入院の為に揃えたものを、別の用途に私は使いたくなかった。 母の湯呑み・洋服・手紙・お見舞い等は持ち帰ることにした。
父と母が一緒に家に帰るので 私達3人は一足先に荷物を持ち家に向かう。 叔母が気にしていた。 部屋の中を片付けないといけないね、あちらさん(父方)が お見えになるんでしょ? うん。 人の出入りが激しくなるから片付けようね。 うん。 叔母はいわゆる、火事場泥棒の被害に子供の時あっていて それがものすごく気になっているようだった。
ものすごいスピードで部屋の中が片付く。 取りあえずテーブルの上は何もない状態になり 畳の上にも何もない状態になってくのに 時間はそうかからなかった。
車の音がする。 お母さんだ。 家を飛び出す3人。 ありえないのに、ひょっとしたら・・・と本気で思った私がいた。
母が家に帰ってきた。 母を寝かす布団と肌掛けを用意してくれと言われ慌てる。
母の身体にはドライアイスが乗せられていた。 手はしっかり胸の上で組まされほどけないように レースのリボンで結ばれていた。
葬儀の日程を決める。 明後日なら大きい葬儀場が用意できます。 そう言われたが、一日でも早く母を自由にしたいと思った。 明日できる所を父に押しきった。 今の葬儀は洋風なものもあって、赤いバラもアリだと聞いたので 父に母が私の葬儀のことで要求してきたのを伝える。 菊は嫌い、バラにして。できたら大好きな真っ赤なバラね。 葬儀屋さんも洋風の感じでいきましょうと言ってくれた。
様々なコトを短時間で決める。 全体の予算 時間は何時からか 仕出しは何にするか 香典返しは何にするか 数量はいくつか 何がなんだか判らなくなりそうだった。 泣いている時間はないと聞いていたが 確かにそうだった。 葬儀の打合せに私も参加したが その時、私は泣いていなかった。
気のせいじゃないと思うんだけど 気のせいかもしれないことがあった。 母の携帯電話を探した時 見つからなくて、キーキー私がしていた時 何かが私のお尻にポンとあたった。 ハッ?! 後ろを振り返る。でも何もない。 棚にはお尻は届かないし、何に? え、お母さん? キーキーしなさんな!って叱られた気がした。
一通り打合せが終わり、父が会社に連絡をした。
午後に叔母は帰っていった。
やがて、葬儀などの日程が書かれた用紙が手元に届いた。
妹とも話し合った結果、 それを少し変わったご婦人の旦那さんの職場にFAXすることにした。
気のせいかもしれないことがあった。 母のそばに楓のお骨を置いた。 母の化粧を妹が左側から直し、私は眉毛を右側から手直ししていた。 何かが私の右肘に触れていった。ふわっと柔らかいものだった。 楓だったような気がする。 皆が家に揃ってじゃれ付いてきたような気がした。
お線香をあげたけど、まだ母は暖かい。
夕方前だったと思う。 小姑(父方の叔母達)が来た。
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