野生の森
高瀬志穂



 拍手より。 にょ

 好き、という言葉。それはとても曖昧で、けれど特別な言葉。

「好きです!」

 そう言われても、気持ちなんてちっとも傾きなんてしなかった。

「俺、他に好きな人がいるんだ。」
「けど、それでも…!!」

 まだ諦めきれないらしい。その気持ちはわからなくもない。

「好きなやつのことなんてすぐすぐ諦めることなんて出来ないよな。けど俺は好きな人がいるから、君の気持ちに答えることは出来ない。」

 簡単に諦められたら楽なのであろうか。それとも、そんな薄っぺらい感情なんて無くてもいいのだろうか。
 軍に入って一体何度そんなことを言われただろうか。ここは軍で戦って何かを守る場所であって、恋愛をする場所ではないというのに。
 けれどそんな思いなんてすぐに消えた。目の前に好きな人がいると何もかもがどうでもよくなるような気持ちがわかった気がする。
 大切な人を、自分の国を守るための戦い。そんな場所で心を奪われる存在に出会って、国も大切だけれども、自分の思いも大切で。
 多分簡単に言えばそういうことなのだろう。

「好き、愛してる。」
「………だから、そういうことをこういうところで簡単に口にしないでよ。」

 そういうことというのは先ほどの愛の言葉。こういうところというのは軍施設内の廊下。

「だって思った時に口にしないとだろ。」
「あのね、そういうことじゃなくて。モラルとか、人として大切なものとかさ。」
「キラがいれば俺はそれでいい。」
「///////。」

 きっぱりと言い張ると、キラはむぅっとしたままも頬を赤く染めた。そんなキラが可愛くて仕方ないと思った。
 今までずっと離ればなれで、けれど今はこうして自分の目の前にいて。

「キラは?キラから俺に言うことは?」
「……変態アスラン。もうちょっと周りのことを考えてよね!」
 そう怒りながらも、キラはぎゅっとアスランに抱きついてきた。さすがにそれはアスランも予想しておらず、びっくりした。
「………好きじゃなかったら、こんなところにいないよ。」

 さらに、小さく呟かれた言葉にアスランはびっくりし、心を躍らせた。
 今まで色々な人からその言葉を何度言われても心なんて動かなかったのに、こんなに小さい声で、はっきりとした言葉じゃないのにも関わらず、誰の言葉よりうれしく思う。
 多分それは、一番聞きたい人の口から聞いた言葉だから。

「俺もキラが好き。キラがいてくれるだけで幸せだよ。」
「こんな…身体だけど?」

 初めて出会ったころのキラは男の子だった。けれどそのずっと前は女の子で、つい最近また女の子になって。
 研究者の子供、さらには実験の末に生まれたキラ。性別が入れ替わってしまうのもこの研究が関わっているらしいのだが、もう研究者はおらず、真実を知るものはいなかった。

「俺はキラが好きでキラと一緒にいたいって思ってるんだよ。それだけじゃ駄目か?」
「…ううん。」

 好きという言葉を君の口から聞くと嬉しくて、好きという言葉を口にすれば君が嬉しそうに笑って。
  とても曖昧な言葉。けれど嬉しい言葉。それが“好き”という言葉。

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苺飴なアスキラです。まぁどの世界でもいいのではないかというネタですが。
簡単で曖昧な言葉。けれど大切な言葉。
キラに恥じらいながら好きとか言われたら…言われたら!!



2007年04月27日(金)
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