野生の森
高瀬志穂



 忘れな草。34 にょ

「ハッキリとは分かりませんけどね。何か決定的なものは。」

 多分、似ているから引かれたのであろう。アスランが彼女に興味を持つように。
 逆にキラは違うから好きなのかもしれない。自分に持っていないものを持っているから。

「・・・早くお帰りになった方がよろしいですよ。今を大切にするために。」
「思い出も記憶も存在もなくなるのに?」

 このままアスランが死んだら、アスランという存在そのものが消える。誰からの心からも消え、もともと存在しないということになってしまう。
 それが消滅。アスランを待ち受けているもの。

「そういうものではないでしょう。あなたには今という時間があるのですから。・・・彼女が大切なら彼女を悲しめるようなことだけはしないことです。そして・・・。」
「?」

 少女は何か含みのある言葉を良い、ポケットから何かを取り出した。そして、その手をアスランへと差し出す。

「もし彼女を抱きたいならこれを付けてください。」
「これは?」

 それは指輪。誰のものか分からないおもちゃの。どこにでもある、小さい子なら持っていそうなものだ。

「奇跡、なんてものを信じてはいけませんけどあなたなら。」
「だから何ですかこれは。」

 はっきりとしない言葉に、アスランは眉を寄せた。彼女が一体今何を思って何を言っているのかよく分からない。

「力の制御装置です。普通に彼女を抱けば一度で死んでしまうでしょう。あなたはからからに乾いたスポンジ。そこに生命力という水が加わったらどうなるか分かりますね。」
「それを抑えるものだと。」

 少女は首を縦に振った。

「えぇ、けどそれはその逆流。あなたの中にある生命力が彼女へと流れます。ほんの少しですけどそれでも今のあなたにすれば死に値するでしょう。」
「・・・。」
「あなたが他の方から生命力をもらって彼女に分け与える。そうすれば彼女は流れに逆らって助かります。二人分の生命力が溜れば二人とも助かるかも知れません。」
「・・・。」
「けれどそれはあくまで推測です。それを使った人間はいません。抵抗したのもあなたが初めてですからね。」

 鮮やかなピンク色の髪の毛が月明かりに照らされ、風によってゆらゆらとなびく。




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サイトをあまりにも更新してないのでこっちくらい更新しておきます。




2005年03月08日(火)
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