野生の森
高瀬志穂



 女神(仮) にょ

「・・・・・・ん。」
 ふかふかとする。そして温かい。先ほどまで痛いくらい冷たい雨に打たれていたのが嘘のように。そしてだんだんと天井が見えてくる。けれど知らない天井。
「気がつきましたか?」
 今の状況が分からない。なぜここにいるのか。ここはどこなのか。何が起こったのか。しっかりと目を開け、そうしてから声の聞こえてきた方向へと首を動かした。
「こ・・・こは?君・・・は?」
 上手く声が出せない。しかし話さなくては何も分からない。
「ここは私の家です。あなたは・・・森の中で血だらけで倒れていたのですよ。」
 目に写ったのは自分と同じくらいの少女。栗色の髪を持ち、紫色の澄んだ瞳を持った子であった。その少女はなぜか悲しそうに微笑んでいた。
「・・・・・・なぜ。」
「え?」
「なぜ、助けてくれたんだ?」
「・・・血だらけの人間を放っておくことなんて出来ません。ただ当然のことをしたまでです。」
 あの森にはほとんど人がいない。寄り付かない。昔からなぜかそう言われている。近付いたものには不幸が起こる、と。
 けれどその森の奥には楽園があると言われていた。いや、楽園というのは正しく無いのかも知れない。女神がいる。そう言い伝えられていた。
 その女神の住む村はいつでも守られている。天災もないし、誰も不幸にならない。なぜならその女神は不思議な力を持っており、それで村人を守っているからだという。
 森をただ歩いて来た。ということはここがあの言い伝えの村なのだろうか。それとも森の奥に進んだつもりがどこかで変な方向へと曲がってしまい、いつのまにか森の外に出てしまっていたのだろうか。
「そもそも・・・あの森は近寄ると不幸になると言われている。森に入ったものは記憶を全てなくしたり、生きてかえって来れなかったり・・・そんな森にどうして君のような子がいたんだ?」
「不幸・・・そうですね。不幸になるかもしれません。けれどあなただってあの森にいたではありませんか。私がいても不思議は無いのでは無いですか?」
「・・・そうかもしれないな。」
 森と言っても、奥深くではないのなら、人に会ってもおかしくないのかもしれない。不幸になる森だと言われているのだが、それでもその近くに住む人間だっているのだろうから。近くに住むだけで、森の奥に入らなければなんの問題もない。
「・・・・・・声が、したんです。」
「え?」
 少女はぽつり、と呟いた。
「助けて欲しい、と。そうどこかで聞こえたんです。だから私はその声のする方へと歩いていったんです。そしたら血だらけのあなたがそこに倒れていて・・・。」
 息をするのも辛かった。そんな時に人に聞こえるような声が出せたとは思えない。自分の他にも誰かいたのであろうか。その人物の代わりに助けられてしまったのだろうか。
 だって“助けて”だなんて心の中ですら思わなかったのだから。
 死んでも構わなかった。もとより、命なんてあってないようなものだから。生まれた時から自分は自分のものではなかったのだから。とある人物の為に作られただけの存在なのだから。


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 お互いの名前すら出てこないけど新刊はこんな感じ。
まだ書いてる途中でどうなるか分からないくらいやばいですが、目指せハッピーですよー。
だって高瀬だもん。オフはハッピーがいいのです。サイトの小ネタはともかく。

2005年01月22日(土)
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