野生の森
高瀬志穂



 LEMON SHERBET

 “ピンポーン”というチャイムが家中に響き渡る。その音を聞いて、パタパタと玄関へと向かった。
「アスランっ、おかえり〜。」
 ドアを開けると、想像通りの人物がそこに立っていた。学校が別々になってしまい、一緒に帰ることがほとんど出来なくなってしまった分、キラはこうしてアスランを出迎えていた。アスランは受験生だと言うのに何かと忙しいらしく、帰ってくるのはいつも夜だった。
「あ、あぁ、ただいま。」
 ここ最近のアスランは、どうもキラを見ると一歩引くような感じがする。
「ねぇ疲れてる?平気?」
 キラがアスランを覗き込むと、ほんの少し疲れた顔をしていたのだが、すぐにそれを消した。いつでもアスランはキラに心配をかけないようにしている。両親にもそうだ。やはり貰われてきたというのが、アスランの心のどこかに引っ掛かっているのだろうか。
「平気だけどどうかしたのか?」
「お母さん、今日帰り遅くなるんだって。」
「あぁ、夕飯か。分かった。」
「ごめんね、帰ってきてすぐなのに。」
 けどお腹空いちゃった、とキラは付け足した。
 時刻はもう七時。いつもなら夕食を食べている時間である。
「姉さん一人にキッチンをまかせる方が怖いよ。荷物置いて着替えてくるな。」
「うん、じゃあ準備してるね。」
アスランはとんとんと階段を上っていく。キラはキッチンへと向かった。
「あーあ、僕がちゃんと料理作れればなぁ・・・・・・。」
料理を作り始めたのはキラの方が先だった。が、何故かいつも鍋が火を吹いたりするものだから、アスランがそれを手伝うようになった。そのうちアスランも料理を覚え、いつしか一人でテキパキと作れる腕になっていた。それはそれで悔しいと思ったのだが、アスランの料理はいつも美味しくて、だんだんとそんなことは感じられなくなり、アスランの美味しい手料理が食べられればそれはそれで満足となっていた。
「おまたせ。さて、何かリクエストは?」
 キッチンに置いてある、いつもは母親がつけているエプロンをつけ、アスランは身支度を整える。
 キラは何がいいかな〜〜と考え、ぽんと頭に浮かんだその料理を口にした。
「オムライス!」
「・・・・この間食べたばかりだろ。」
 そう。この間も母親がいなくてアスランが料理を作った。キラが今日と同じように、同じ料理を注文して。
「だってアスランのオムライスおいしいんだもん。ハンバーグとかも食べたいけど時間かかるでしょ・・・?」
 アスランをほんの少し上目遣いでキラは見上げる。目をうるうるさせて、物欲しそうに。
「そう言われちゃ作らないとだな。」
「やった♪」
手慣れた手付きでアスランはご飯を炒め、ふんわり卵焼きのオムライスが出来上がっていく。
「何?」
 手元と顔をじーっと見つめられ、アスランは首をかしげた。
「何でアスランはそう器用にこなせるのに、僕は駄目何だろうって。」
「鍋から火を吹くのも凄い芸当だと思うけどな。」
 アスランはその時の様子を思い出してくすくすと笑う。しかし、キラは複雑そうな顔をしたままアスランをじっと見つめていた。
「・・・・・・。」
「ごめんごめん。じゃあ今度は一緒に作ろうな。」
「だけど何回作っても駄目で・・・・。」
 今までそう言って何度も何度も作ってきた。けれど、一向に上手くならず、最近は料理を作るという行為事体やめてしまった。
「けど少しずつ上達はしてるだろ。」
「そう、かなぁ・・・。」
「大丈夫だよ、きっと上手くなるって。」
 その根拠がどこにあるのか全く分からないけれど、アスランの言っていることはなんでも実現しそうで、キラはにっこりと微笑んで頷いた。
「・・・・・・・・・。」
 その笑顔を素直に受け入れることの出来ない弟に向かって。

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 4/4の新刊のアスラン(弟)×キラ(姉)でございます。
こんな感じで進んでいきます。


2004年03月22日(月)
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