| 2022年06月05日(日) |
雨が降り出しそうなくらい重たげな雲に一面覆われた朝。あまりに見事な曇天なので一枚パシャリ、残すことにする。同じ場所から同じ空を毎日毎朝撮っていると、言葉通り、同じ日なんて一日たりとてあり得ないのだということを痛感する。ベランダの、決まった位置から眺め続けているだけなのに、これほど色とりどりの空があり得るんだろうかというほど、毎日毎朝違う。異なる。神様は世界を、一体どんなふうに作ったんだろう、とぼんやり思ったりもする。 ワンコと散歩していて、改めて紫陽花に注目してみると、こんなにもたくさんの種類があったのかとびっくりする。ご近所に、ヤマアジサイと八重のガクアジサイ、しかも青色のを見つけ、立ち止まって見惚れてしまう。何て深い青なんだろう。あまりに見事なので、さんざん迷った挙句、そのお家の方に頼んで一枝わけていただくことにする。挿し木で何とか育ててみたい。 帰宅し、まず水切りをしてきれいなお水を吸わせる。たっぷり吸ったところで葉を半分に切り落とし、いただいた枝を2等分にして、合計4本の小枝をプランターに挿す。さあ、ここからは祈るのみ。たっぷり水を遣って、心の中繰り返し唱える。育て、育て、育て、根っこ、無事出ろ、がんばれ紫陽花…。
食材の買い出しにスーパーへ行くと、そういう季節なのだ、青梅がたんまり売られているのを見つける。これはちょうどいい、母に我が家の梅エキスの作り方を教えてもらおう、ということで、1キロ購入する。 母のLINEに早速、作り方教えて!とメッセージする。夕方になって母から返信が。「洗った梅の実に串かホークで穴を開けて砂糖をかける、そのまま待つだけ。水分を入れなけばカビない。しなびるまで繰り返す」「手っ取り早いのは皮を剥き砂糖をまぶし1〜2日足しながら置く。味をみながら。甘い方が良いよ。薄めて飲むのよね?同量以下、鮮度によるから、エキスが採れるまで」。穴をあけるというからフォークで4、5回突き刺して穴を開けてみた。それで十分かと思いきや、「私は竹串を束にしてがんがん穴開けしたけど大変で皮をむいてみた、どちらも大変たけど」と作業を始めてから続いてメッセージがきて、ずっこける。そんなに穴を開けるのか?! やはり、作り方を訊いてよかった。知らないことばかりだ。 正直、母の料理に対しては切ない思い出が多い。その中に時折、たとえば母が良く作っていたパウンドケーキやパン、そしてこの梅エキスがある。今頃になって、そのレシピを教わりたいと思うようになった。母は今年八十。もういつあの世に手招きされてもおかしくない歳だ。父の家系でも母の家系でも、八十を越えて生きてるひとはほぼいない。癌になっていないのも母だけだ。今日青梅に出会い、購入し、思い切ってレシピを訊いてよかった。これでまたひとつ、誰かにいつか伝えられるかもしれない事柄が増えた。 いつか誰かに。そんなことを若い頃は思いもしなかった。そんな余裕なかった。でも何だろう、この歳まで生きると思っていなかった自分がこうして生きて、できることといったら、やっぱり、「いつか誰かに伝えて」ゆくことくらいなのだ。 若い頃もっと習っておけばよかった、とか、もっとこうしておけばよかった、というのが全くないわけじゃない。こんな母娘関係であっても、もっと訊けることがあったんじゃなかろうかとは思う。でも、私達はそこまでの親しさがなかった。いつでもたいてい、緊張関係だった。だから、これでいいんだと思う。この歳になってはじめて、気軽に、教えて、いいよ、と言い合える関係になれたのだから。これでいいんだ。 無事梅エキスができるといいな。実家の味の梅エキスが。 |
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