*妄想*短文劇場-ダニーくんとマーティンくん-
きくちやひろ



 第10話『愛のかたち』Coming Home

NYには毎日のように新たな人生を始めようと人が来ては流れていく。



「その後、どうなの?」
「どうって?なにが?」
「恍けなくてもいいじゃない、マーティンとはどうなの?」
「別に、普通やよ?」
「ふ〜ん」
「なに、その納得してませんって顔」
ダニーは、事務処理中の書類をパタパタさせながら
サマンサに言った。
「なんちゅうか、ほら、あいつってば、俺とは違うて
大事にされ過ぎて屈折してるっちゅうか」
「…よーするに、どうしていいかわからないんでしょ?」
「まぁ、ぶっちゃけ」
少しうつむき加減に話すダニーに、サムは



「感情を表情で表してみたら?ダニーはヘラヘラしてるか、
泣きべそか、どっちかしかないから」
「泣きべそって、成人男性つかまえて、そらないやろぉ。
俺かて、色々な顔もっとるよ?愛を語る顔とか」
「あら、そう?じゃぁ、やってみてよ、マーティンに愛を語る時の顔」
「い?ここでェ?」
「そうよ?ほら、グダグダ言わずにさっさとやる!」
「お、おう」



「…キショ」
「えぇ?!」
ダニーのとっておきの愛を語る顔は、
サムにも効き目がなかったようだった。

2007年06月28日(木)



 第9話「14歳の手紙」Moving On






なんとなくギクシャクとした空気が流れる同棲生活を
送っていたダニーとマーティン。
イライラをダニーにぶつけてしまうマーティンだったが、
ダニーは黙って八つ当たりされていた。
そんな中、1通の書き置きを残し、ダニーが家を出た。
「…ふーん、自分を見つめ直すんだぁ、ダニー」
「まぁ、それはいいんだけど、最初、何が言いたいのか
わからなかったよ」
「まぁねぇ、この手紙、最初の三枚はマーティンへの
ラブレターだものね、肝心の用件が2行って、どうなのよ」
「ホントだよね」
「1週間になるのに、あんまり心配してないのね」
「だって、仕事には来てるし」
視線の隅にはデスクワークするダニー。
「どうせヴィヴィアンのところに転がり込んでいるんだろうしさ」
「あら、うちにいるわよ?ダニーなら」
「へぇー、そうなんだぁー、ふーん」
マーティンはゆらっと立ち上がり、ダニーの元にゆっくりと歩みを
進めると机に向う彼の後頭部を思いっきり殴りつけた。
「だぁー!何すんねん!?ゴラァ!」
「浮気者!」
「はぁ?なに言っとんねん、おまえ」
「なんでサマンサの家にいるんだよ!」
「なんでって、たまたま」
「信じられないよ!たまたまでサムの家に行くなんて!」
「ボスかて一緒やぞ?」
「…3人でなにしてんの?」
「別に、何も?家事とか…」
「家事?」
「うん」
「…ほんと、何してんだよ」
マーティンは、はぁーっと大きく溜息をつき、
「うちに帰ってきてよ」
「マー」
「家事ならうちですればいいだろ」
「…ティン?」
「掃除、洗濯たまってるんだからね」
ダニーは黙ってうなだれていた。




2007年06月02日(土)
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