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2007年08月31日(金)   exhausted*ever after

疲れている間に八月も終わった。そして疲れている間に九月も終わり今年も終わり来年も再来年も終わっていくことだろう。疲れない日なんかない。生きているかぎり疲れる。逆にいえば疲れるということは生きているということだ。生者の特権。悪いことじゃない。めいっぱい疲れてしかるべきなんだろう。多分。


2007年08月30日(木)   exhausted*30

案の定二日酔いおよび胃の具合が最悪で疲れる。疲れると分かっていて何故出かけるのか、水で割ったような薄い生ビールを退屈や憂鬱や居心地の悪さをごまかすためだけに流し込むよりネット通販で買い込んだベルギービールをおそろいのグラスに注いでミステリでも読みながら味わって飲むほうがよっぽど有意義でそのうえ安上がりでもあるだろうに、いったい何故出かけてしまうのか、人懐かしさの捨て方がいくつになっても分からなくて疲れるよまったく。


2007年08月29日(水)   exhausted*29

昔々の話をするのに疲れる。退屈で憂鬱で居心地が悪くて疲れる。まったく無駄な時間を過ごしたので五割増で疲れた。今更アドレッセンスの焼き直しをするつもりは、ないよ。


2007年08月28日(火)   exhausted*28

道に迷うたびに貴方を思い出すので疲れる。貴方はいつだって筋一本曲がり角一つ間違わず、正しいところへ導いてくれた。なのに最後の最後になってとんでもないところで手を離したものだから、ひとりでは迷って、迷って、迷うばかりで、こんなに疲れているというのに、もう帰れそうにない。


2007年08月27日(月)   exhausted*27

炎天下、自転車に乗って、行くところ行くところ見事に定休日、サドルからずり落ちそうなくらい疲れた。そろそろ食欲がなくなってきて、そろそろ水物しか喉を通らなくなってきて、そろそろ本格的に疲れてきたけれど、夏もようやく、疲れてきたようで、セミのモーニングコールはもう聞けなくなった。月が太って夏が痩せる、そして空が遠くなる。苛烈であったものが弱っていくさまは、どこか寂しい。


2007年08月26日(日)   exhausted*26

だらだらだらだらと一日中エアコンの効いた部屋で大きな画面に映し出される鍛え抜かれた肉体の競演を眺めていただけのくせに疲れただなんてまったく同じ人間として生まれながら何故こうまで違ってしまうのかと羨望と感嘆の入り混じったため息を洩らしながらとりあえず腹筋だけは欠かさないようにしなくてはならない。


2007年08月25日(土)   exhausted*25

さて今回も無事に着陸、したところで見渡す限り真っ白である、疲れる。制限も禁止もない、疲れる。何を読んでもかまわない、何を書いてもかまわない、どこへ行ってもかまわない、誰と何をしたってかまわない、なんて残酷な言葉たち、疲れる。


2007年08月24日(金)   exhausted*24

そして今日もデスクの前で青い空と白い雲を犠牲にして疲れ、空の青みか、と呟きながら『青空』を本棚から引っ張り出す短絡的な思考に疲れ、何年かぶりに読んでみて何年か前のあまりに貧弱な読みが情けなくて疲れ、こんな男はどうしようもない、でスルーしてもまったくかまわないと思いかけて「人間的事象の本質的相対性に耐えることのできない無能性が」、なんていうクンデラの揶揄が思い出されて、白黒つけたがる「無能性」に疲れた。


2007年08月23日(木)   exhausted*23

青い空も疲れるが白い空はもっと疲れる。青くても白くても赤くても疲れる。空がそこにあるかぎり疲れる。そういうものだ。


2007年08月22日(水)   exhausted*22

空が青すぎて疲れる。太陽の放つ強烈なエネルギーを前に焦燥感ばかりがつのって疲れる。だから雨が降ってほっとしたけど、雨があがったあとのひんやりとした空気のなかには終りの予感が漂っていて、この秋はきっと、より寂しいに違いない、という漠然とした怯えのようなものがこみあげてきて疲れた。ひょっとすると夏が好きなのかもしれない。


2007年08月21日(火)   exhausted*21

右手と左手がまったく別のことをしているので疲れる。或いは右目と左目がまったく別の文字を追っているので疲れる。或いは右耳と左耳がまったく別の音楽を聴いているので疲れる。ようするにまっぷたつに引き裂かれていて疲れる。意味なんかあってもなくてもかまわないからとにかく何を欲しているのかくらいは明確にできないものだろうか。


2007年08月20日(月)   exhausted*20

ここで糸を切ったらおしまいだから、と無理矢理に時間を緊密な糸で縛り上げようとして疲れる。何故ならなんらかの根拠や理由に基づくでなくそんな糸を縒ろうとすることはただひたすらに意味の脱落と戦うことであるから疲れないわけがないのだ。それをして何になる、どんな意味がある、という問いかけを黙らせることほど疲れることはそうそうない。


2007年08月19日(日)   exhausted*19

とにかく眠くてならないのは疲れているせいだろうか、おそらくそれだけではない気もするがとにかく水分を摂っては眠り、眠っては汗をかいて目覚め、の繰り返しである。見る夢はとてつもなく馬鹿げているかとてつもなくいとおしいかのどちらかで、瞼を開いたその先に広がる世界に自分を繋ぎとめておくことが難しい。自分が、自分でしかないこと、自分でしかいられないことに、疲れている。


2007年08月18日(土)   exhausted*18

朝6時に起きて散歩して掃除して洗濯してたら荷物がたくさん届いて梱包をとくのに疲れたけどそれなりにヒトの部屋らしくなったのでうれしくてシャワーを浴びて汗を流して申し訳ないけどキンキンに冷やした部屋で昼間からビールを飲んで酔っ払って昼寝するという最高の贅沢を楽しんだが夕方起きたら二日酔いというのかなんというのかとにかく頭の芯がぐらぐらしていて自分の自堕落さ加減に疲れたのだった。


2007年08月17日(金)   exhausted*17

もはや芸術的な暑さである。まるで自分自身を消毒でもするかのように真上から照りつける太陽に焼かれたアスファルトに立ち尽くして疲れた。萎れていく植物のイメージ、地中で狂ったように根を伸ばす球根のイメージが押し寄せてきて、多分その瞬間熱帯雨林の幻覚をみていた。午後からはブラインド越しの直射日光にやられて脱水症状に陥って疲れた。だがまあ、こんな疲れ方も悪くはないと思うのだった。


2007年08月16日(木)   exhausted*16

エコ的な観点から自分の部屋では極力エアコンを使わないようにしているがさすがに昨夜は寝汗びっしょりで目がさめて午前4時にリモコンのスイッチを押した。北極海のシロクマやアザラシにごめんなさいとついあやまってしまう自分のマクロな精神構造に疲れるがどうしようもない。暑すぎ。午後10時45分現在、裏の神社のセミはまだ宴会中。疲れないのか…?


2007年08月15日(水)   exhausted*15

一日中頭痛が酷くて疲れる。疲れる疲れると毎晩書き続けるのも疲れるがここにきて身体的な疲れが精神的な疲れを追い越した。すると俄然、なんだこんちくしょうふざけんなよとかなんとか対象の定まらない罵詈雑言がはらわたの底からわきあがってきて、疲れた疲れたといいながらでもどうにかなりそうな気がしてくるから不思議だ。


2007年08月14日(火)   exhausted*14

お盆休みだけあってあれだけ騒々しかった電話機がうんともすんともいわないので8時間をもてあまして疲れる。雑談が咲き乱れおやつが飛び交う長閑な空気に逆らってどんどん渋い顔つきになっていくのを押し留めるのに疲れる。これまでのことこれからのことを訊ねられて疲れる。今か今かと発熱の機会をうかがっている扁桃腺の痛みをこらえるのに疲れる。やれやれ。


2007年08月13日(月)   exhausted*13

毎年のことだがマンションの玄関先で迎え火を焚くので火災報知器が鳴り出しやしないかと気をもんで疲れる。今年は鳴らさずに済んだ。祖母が実家にいるおよそ20年ぶりの盆であり、そしてキミの初盆である。般若心経を唱えながら、まさかキミを思う日がやってくるなんて思いもしなかった。例年は疲れるはずの写経も今年は二百七十八文字を、噛み砕くようにして書いた。ねえ疲れたよ、疲れたんだと、生前のキミに伝えたことはなかったね。


2007年08月12日(日)   exhausted*12

少し眠ったら猛烈な貧血で起き上がれないくらい疲れていた。そうすると必然的に昨夜未消化のまま飲み込んだ言葉が反芻されてきて、ボクの惚れる女は皆心に闇を抱えてるなんていう科白を恥ずかしげもなく口にできるその神経に疲れ、またしてもノルウェイの森ごっこに付き合わされたかという口惜しさに疲れ、そうはいっても自分にも責任があるに違いないのだと気づいて疲れた。自分で傷を抉ってみせてこんなに傷ついているんですだから助けてくださいなんて生き方は決してしていないつもりなのだがもしかするとあなたにこれが救えますか救えるものなら救ってみなさいという脅迫的な身振りを知らず知らずのうちに示しているのかもしれない。


2007年08月11日(土)   exhausted*11

なんのことはなくてただ単に暗い血液が身体のなかで澱んでいただけのことで毎月毎月こんな具合なものだからいいかげんいちいち疲れるのなんかやめれば良いのにやっぱり疲れる。豊饒な血液が無駄に死んでいくなかで朝一番のセミが鳴きはじめるような時刻まで稚拙な言葉で語られる浅薄な精神分析を聞かされたものだからそれはもう、殺意を覚えるくらい疲れた。これだからハルキ教信者の男は嫌いだ。


2007年08月10日(金)   exhausted*10

6時45分に退社したらそのまんま坂を自転車で駆け上って成城石井に飛び込んでヒューガルデンホワイトを6本買い込みわき目も振らずに部屋に帰って瓶からラッパ飲みしながら別に悲しいこともないのに、悔しいこともないのに、耐えられないほどつらいこともないのに、唐突に涙が溢れだしたりするあたりそろそろ疲れすぎている。


2007年08月09日(木)   exhausted*09

このまま最後までなだらかな下降線が続いているのだろうという予感に疲れる。抗うことを想像してみるだけでさらに疲れる。弱さ脆さにあこがれることのくだらなさに疲れる。約束が拘束でしかないことに疲れる。日々を違った色で染め上げなければならないという脅迫めいた要請に疲れる。もう、なにも、変わらなくていい、このまま最後まで、という無限ループが完成するので無限に疲れる。


2007年08月08日(水)   exhausted*08

デスクの上に無言のまんまで次々と書類をのせられるので疲れる。任せておけば安心だと思われているのならそんなの単なる買いかぶりだから疲れるし、面倒くさいことはこいつにやらせとけと思われているのならそれはそれで腹立たしくて疲れる。どっちにせよいつの間にか何やら得体の知れないものに組み込まれていることに疲れる。それはさておき朝ベランダに出しておいた観葉植物を部屋に入れようとした途端、あろうことかセミが葉っぱの裏にへばりついていて腰を抜かして絶叫した、何よりも疲れた。


2007年08月07日(火)   exhausted*07

大企業の名前をタテに無茶な注文を平然と繰り返してくる輩に疲れる。そういうものだから仕方ない、それがパワーバランスってものだ、と自分を納得させるのに疲れる。社会の仕組みとは、なんて考えるだけで鬱陶しくて疲れる。必然的にいまだもって社会的なるものを忌み嫌っていることじたいがみっともない、というところまで思考が流れて疲れる。結局おまえは単なる怠け者なのだ、という声が聞こえはじめて疲れる。トカトントン、トカトントン、気取った苦悩ですね。


2007年08月06日(月)   exhausted*06

月曜日だから問答無用に疲れる。昼休みに外に出るとアスファルトがべちゃ、と音を立てるのではないかというくらいに暑くて疲れる。それでもかたくなに長袖を着るしかないので疲れる。記憶を抹消できても傷跡は抹消できないというあたりまえのことに疲れる。居場所が定まらなくて疲れる。ひどい無駄を繰り返しているようで疲れる。なにはともあれ今日もとても疲れた。


2007年08月05日(日)   exhausted*05

およそ2週間ぶりの休みだというのに朝6時にセミどもにたたき起こされて疲れる。はりきって掃除をして疲れる。もういっちょはりきって美容院に行って疲れる。とはいえなかなかキレイな髪になったのでさらにはりきって観葉植物を2鉢も買ってしまい疲れる。緑があるというだけでヒトの部屋らしくなったのがうれしくてチェストを注文しておいたらさっき売り切れましたのメールがきてどーんと疲れる。いつになったら、という問いを反復し続けることに疲れる。なんだかんだいってやっぱり今日もとても疲れた。


2007年08月04日(土)   exhausted*04

部屋から一歩出たとたんにむわっとした熱気が身体にまといついて疲れる。自転車に乗ってさらに疲れる。つまらない話にいちいち律儀に笑って疲れる。華やかな世界を横目で眺めやることに疲れる。ため息をつくことに疲れる。いいかげんこの非人間的な部屋をなんとかしなければならないのだがチェストを買うのかシェルフを買うのか一向に決められなくて疲れる。現実逃避に走って疲れる。まったくもって今日もとても疲れた。


2007年08月03日(金)   exhausted*03

お金に羽が生えて飛んでいくので疲れる。泣きながら仕事をしていた人の補佐に東京からやってきた人があまりにもキミにそっくりで、もしもキミが元気で、もしも仕事をしていたらきっとこんなんだろうと考えて悔しさやら悲しさやらやるせなさがこみあげて疲れる。すれ違いざまに卑猥な言葉を投げかけられて疲れる。変化を受け入れることができなくて疲れる。そんなこんなで今日もとても疲れた。


2007年08月02日(木)   exhausted*02

朝起きて鏡を見た途端たるんだ目元を前にして疲れる。洋服を選ぶのに疲れる。鳴りっぱなしの電話に疲れる。自分の仕事をしない人を相手にして疲れる。泣きながら仕事をする人を見て疲れる。その人にさらに仕事を押し付けて平気な人を見て疲れる。蓮實重彦の文体に疲れる。メールの返信に疲れる。その他もろもろ今日もとても疲れた。


2007年08月01日(水)   exhausted*01

疲れた、という言葉はかなり以前、海綿によって禁止されたのだが、あれから2年と3ヶ月、いまや海綿も既にその任務を終え、どこかの引き出しの奥のほうでころんと転がっているだけであるのでここはひとつ、いったい何に、どのように、疲れているのかを明らかにしてみたいと思う。とにかく今日は間に挟まれることに疲れた。


nadja. |mailblog