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2006年06月30日(金) 復讐の音色 / ブロークン・フラワーズ / 親切なクムジャさん

映画の感想を。劇場でブロークン・フラワーズを見ました。ジム・ジャームッシュの新作というのと女優陣が非常に豪華というのがありましたが、特に筋とか主人公(ビル・マーレイ)に期待する所はなかった。自分の目的といえば、ジャームッシュの映画はサントラが重要なんですが、中でドゥームメタル(激重)のSLEEPというバンドの曲が流れるらしいがどんな場面なのか、というのと、よく文学系のアヴァンギャルドな作品に出ているティルダ・スウィントン(ナルニア国物語で魔女をやってた方です)がどんな役で出るのか、というのが知りたかったです。実際は同じ場面でしたが。田舎の小屋みたいなのに住んでて、つなぎを着て小汚い(失礼)のが新鮮だった。でもちょっとしか出なくていきなり泣き出して終わりかよ!!同じ敷地内に住む兄貴どもと一緒に主人公に蹴りを入れたい気分でした。

サントラはとてもよかったです。主人公が隣人に背中を押されて昔の恋人たちを訪ねるという物語なのですが、その近所に住む友達が地図とか切符と一緒にCDRを焼いてあげてるんですね。見てると何枚もあげてるみたいなのですが、これがエチオピアのジャズということで、劇中でかかってるのがとてもよかったです。なんというか、フレーズを取り出してみるとコルトレーンっぽい感じ(逆か、コルトレーンがアフリカ音楽を取り入れてるんですよね)なんだけど、このサックスの音があきれるほどく人なつこくてかわいらしい。同じフレーズをしつこくループのように繰り返して、解決することなくひたすら続いて行くのがまたどうしようもなくて憎めない。なんか日本の演歌っぽい親しみやすい歌い口だなと思いました。

とても昔、これも劇場でストレンジャー・ザン・パラダイスでフリーキーなブルースの流れる中で無表情のジョン・ルーリーのたたずまいがたまらなくおかしくて、どうしよう、ここで笑っていいものかとプルプルしながら見ていたのを思い出しました。懐かしい。そのスクリーミン・ジェイ・ホーキンスのI put a spell on youが人生で初めて聴いたブルースであることを告白しておきます。やばいね…そこと対比するのであれば、やはり旅立ち前夜にダイニングでひとりシャンパンを開けて(ジャージで)マーヴィン・ゲイの曲をかけている場面でしょうか。リンクした公式サイトで2番目に出てくる画面の所です。けっこうまんざらでもない表情で聴いてるのがおかしくて最高。私もちょっと聞き惚れてしまいました。マーヴィン・ゲイいいですね。

今日の題名はそれにかけているのではなく、親切なクムジャさんでした。音楽がすばらしくてエンドロールをチェックしていたらヴィヴァルディの曲が多かった。それでTSUTAYAで探して聴いてました。うーん、ロックくさい(これも逆ですが)、展開がねちっこくて感情的であの映画によく合っていたんだな。子供の頃にピアノでヴィヴァルディの曲を弾いたりしたことを思い出しました。なかなかトニックに落ちないんですよね。短くても長くてもしつこく続くフレーズの応酬、憂いのある通奏低音が続いて、違うキーのマイナーコードで幾重にもたたみかけるような所があって、とか。あの映画のキッチュな映像にもバロック音楽はとても合っていると思いました。オリジナルのテーマ曲もよかった。音楽担当のチョ・ヨンウクカルというホラー映画でもうまくクラシック音楽を使ってました。あれもとてもよかったです。

映画の中身に関してはまだちゃんとは書けないのですが、というかこの監督の映画はいろんな要素を詰め込み過ぎて(2、3本分の情報が入ってるのではないかと思う)なんかよくわからないというのが正直な所です。この作品も、終盤の遺族の復讐の話だけで一本つくれそうですよね。加害者を拉致してきて被害者を集め、法に任せるか自らの手による復讐かを選ばせて対面させるという所が非常におもしろかったです。コメディとして処理されているのが韓国的なのだろうか。遺族に殺されるチェ・ミンシクがすごい楽しそうに見えたな。この方はすごい。殺すのも殺されるのも楽しそうってどんな人なんだ。

たまたまECDIARYを読んでリンクした所があって、引用できるまとまったフレーズは探せなかったんだけど、確か自分の憎しみを他人や社会に委ねてはならない。ひとりひとりが無力だからこそ、そこにとじこめておかなければならないものがある。殺す権利を個人に認め、各々が悪しき感情に向き合い、堪能し、自らの責任においてその権利を行使しなければいい、といった文章があって、それを思い出しました。映画の遺族も結託して加害者を殺してしまったと言えるけど、自ら手を下すということでそれぞれが自分を逃れられない場所に釘付けてしまったのだなと思う。空中に居る自分にとってはなかなかリアルに感じられるものではないのですが、なんかいろいろ考えてしまう。


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