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千  夜伽に聞かせようかこの日々を

 水面が日光を反射して眩しいくらいに輝いていた。揺れる反射光が辺りを照らし、水の中のようだった。川の水はさらさらと滞ることなく流れていたが、その淵では流れは緩み、ゆるゆると流れから外れた水がゆるゆると流れに戻っていた。
 ギンはそれらに背を向けて川辺に座っていた。膝を抱え、何をするでもなくぼんやりと目の前の葉を食べている青虫を眺めていた。
「何してるの、ギン」
 背中から乱菊が問いかける。水の跳ねる音がした。
「虫眺めとる」
「食べたくはないからね、あたし」
「ボクかて食べんわ、こんな細い虫。腹も膨れん。ええから早う着物洗って水からあがり。ボクも早う入りたい。暑い」
「一緒に入ればいいのに」
「それはあかん」
「ギンがこっちを見なければいいよ」
 乱菊の言葉にギンは盛大な溜息をついて見せた。
「どうしたって目に入るわ。こんな狭い淵なんやから」
「はぁい」
 背中で激しい水の音がするのを聞きながら、ギンは頭を抱えた。一緒にいるようになって二年と半年を越えた。ギンが出奔したり乱菊が怒ったりと色々あるにはあるが、二人はうまく暮らしているだろうと思える。思えなくもない。
 でもこの慣れ具合どうにかならへんもんやろか。
 嬉しいわ嬉しいけどそうやけどでもなあ。
 ギンは溜息をこっそりとつく。成長の遅い自分達にもゆっくりと時間の流れが押し寄せていることを、ギンは薄々気づいていた。





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Life is but an empty dream