寝かしつける3のお題【シルリナ】

これの後日談的な。

written by みなみ



3:添い寝の場合



 「な、」

身支度を終えてベッドに入ると、シルフィールが隣にやってきて布団の端を持ち上げた。いきなりのことに、あたしは目を丸くする。

「な、な、なに、」

「なにって、約束したじゃないですか」

びっくりしてるあたしをよそに、何食わぬ顔でシルフィールはベッドに入り込んだ。

「そ、そうだけど……」

安宿にしては大きめだけど、かといって2人で寝るには距離が近すぎるベッドの上。あたしは口をぱくぱくさせた。
自分で言った言葉を忘れたわけじゃないけど、その後2人して眠ってしまって、なんだかんだうやむやになったものと思っていた。それもこんな内容の約束事、まさか実行するような人とも思わなかった。いや、この人だからこそとも思うけど。

「リナさんが誓いを守ったのに、私が約束を守らないわけにはいかないじゃないですか」

「なんですか、約束って?」

成り行きに口を挟めなかったからか、アメリアが今更会話に混ざってくる。

「リナさんが、薬をちゃんと飲んだら一緒に寝、」

「わーちょっとま、待って!」

慌てて待ったをかけるも時遅く、アメリアのにやにや笑いがあたしを捉えた。

「へぇリナ、かっわいい〜」

「うっさい!あれは、だから、なんていうか……っ」

「ほらほら、2人ともそんな大きな声出さないでください。もう夜なんですから」

「はーい」

「…………〜〜っ!」

この状況で、慌てるでもなく照れるでもなんでもなく、平然とシルフィールは言った。大人って言うより、なんつーか、図太い。
あたしは上手い言い訳もできないままで会話を切られてしまい、もう頭を抱えたい気分だった。そんなあたしの気持ちにやっぱりお構いなしで、シルフィールが寝転がる。

「さぁ、寝ましょう?」

「いいなーリナ、わたしもシルフィールさんと一緒に寝たかったなー。ひとりじゃさみしいわー」

むっかー
どこまでも楽しそうににやにや笑うアメリアに、今度こそ何か言おうと口を開こうとしたとき、シルフィールの手のひらがあたしのほっぺたに触れた。

「寝ますよ?」

にこりと微笑んで、有無を言わさぬ語調でそれだけ言った。
昼間思い出したことを再確認した気分。
そうだこの人、姉ちゃんに似てるんだ……。
そう考え始めると、間違ってももう逆らえない。

「……はい」

「アメリアさんも、からかうのは明日にしてくださいね」

「はーい」

再度アメリアのいいお返事。つーか明日からかわせる気か。そしてからかう気か。
ツッコミは山のようにあったけど、もうどうでもよくなった。
ひとつしかない枕にはシルフィールが頭を置いている。あたしの枕代わりに、伸ばされた腕。……乗せてもいいものだろうか。
少しためらったけど、ま、いいか、と思ってぽんと頭を置いた。
いいに決まってる。だってこれはあたしがちゃんと薬を飲んだごほーびなんだもん。






なんだかんだ甘えるリナ。
多分冗談でなく本気で(シルフィールが)羨ましいアメリア。
どっちも分かってるシルフィール。

2006年02月07日(火)
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