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■ 赤花【ヴァルリナ】
ヴァルリナ→ガーヴ
written by みなみ
そこに憎しみがなかったことを知っていたか 愛しささえ覗かせていたことに、気付かなかったのか
「俺たちは、良く似ている」
彼はそう言った。 兄弟に向けるような、親しげな笑みを見ただろう?
金色の瞳が、眩しそうに細められる。彼の目にはいつも赤が映っていた。 「おまえが殺さなければ、俺は今でもあの人といられたんだ」 真っ直ぐな眼差し。今はもう、彼女だけを見ている。 その色の中に、同じ色を重ねて。 「女々しいわね。いったいあいつから何を学んできたのよ。あんたは」 リナは面倒臭そうな素振りを見せて、男に背を向けた。 彼の言葉は的外れで、(無論彼自身も承知の上だろうが)責める相手を間違えている。 けれどそのことには一切触れず、リナはただ背を向けて、歩き出した。 その小さな背中に、彼はまた、光を見たときのような仕草で瞬きをする。 「おまえに何が分かる。俺のことも、あの人のことも知らないくせに」 深夜の静寂を切り裂く溜息。 振り返り暗闇に覗いたのは、色褪せない赤。 「……ヴァルガーヴ。あんたこそ、いったい何を理解出来てるって言うのよ? あいつがあたしと戦った理由は? あいつが最期まで想ってたことは? あんたに答えられる?」 無様な傷の残る彼の体に、平行に向けられた小さな体。どちらも目を背けたくなるような痛々しさが覗いている。 それでも彼女は真っ直ぐ背筋を伸ばして、黙り込んだ彼を見た。 「あたしは答えられるわ」 夜の常闇。 それは深く、果てしのない。 全ての色を呑み込むほどに。 「あした、あたしがあんたと戦う理由と同じよ」 ぽつんとひとつ。 どこにも混じれない赤色がひとつ。 「そして」
目を惹く色。 どんなに遠くても、どんなに小さくても。 それと識別できるたったひとつの色。 目指す星に相応しい鮮やかな色を、持って生まれたその意味は。
「……多分、あんたがあたしに勝てない理由だわ」
「俺たちは、良く似ている」
恐怖と畏敬と、わずかな好意を抱いて 彼女は男を見上げた。 生を受けたその日 もっと形の違うものであったなら 例えば手を握ることもできただろう。
けれどそれさえ一瞬。
交わした視線の後先に、どちらが先に笑っただろう。 同じ色の誓いを掲げ、過ちさえも塗り替える華やかな花火があがる。 それが合図。
「さあ始めよう。生きる為の戦いを」
「あんただけじゃない、あたしだってあいつを愛してたわ」
同じ思想、同じ信念、同じ色。 出逢ったその瞬間感じた郷愁は、家族へ向けるもののようだった。 体に触れて、全てを交え、喘ぎ声を洩らして。 たった一日だけ、愛し合った恋人を想う。
それはまるで、花火のよう。
「出来るなら、この手で殺してあげたかった」
2006年02月08日(水)
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