読書記録

2020年11月28日(土) 緋い川 / 大村 友貴美

 明治33年。若き外科医衛藤真道は、身近な医療を学ぶため宮城県北部の鉱山病院に赴任した。そこには赤鉄鉱が採掘される赤い川も流れていた。その村には四つ目の獣を見たとか、人が解体されて流れて来たとか恐ろしい話もあった。近代工業の象徴のような鉱山も人権侵害や労働争議、公害など問題が山積していたようだ。鑑別所の囚人の待遇問題もあった。そんな中で御者が殺され川に流された。人々の診察をしながら、真相の究明に挑む真道。

それにしてもたくさんの人が死んだ。

真道を迎えに来てくれた馬車の御者。
鉱山の社員田之倉。
殿村医師と岡教授。


医者は、病気やケガを治すというが、その後のことまで責任は持てない。患者の人生のほんの一部に関わりながら、その後の人生を左右しかねないことをやっている。考えてみれば、恐ろしい業だ。


医学が進めば進むほど、昔なら死んでいたが、今なら救える、生かすことができるという状況が当たり前になるかもしれない。そして、どこを人間の『死』とするか悩むようになるだろうな。必然的に、『人間が生きている』とは、なにを意味するのか、どのような状態を指すのかも考えざるをえなくなるだろう。


人間に寿命がある限り、死は避けられない。だから、医者がいつも勝ち続けることはできない。いつかは終わりに向き合わなければならない時がくる。その時、医療の基本が見える……そうわたしは思っているんだ。


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