2020年04月02日(木) |
平場の月 / 朝倉 かすみ |
50年生きてきた男と女には、老いた家族や過去もあり、危うくて静かな世界が縷々と流れる。
中学時代にコクって振られた芯の太い女子、須藤と病院の売店で再会した。 主人公、青砥健将。 青砥の胃検診は大丈夫だったが、須藤は大腸がん。 腹膜播種があって人工肛門、ストーマをつけた。
最初は焼き鳥屋でデートをし、それからはお互いの家で惣菜を買っての地味な逢瀬。 徐々に青砥の須藤に対する思いは、心のすき間を埋めるような若者とは違った静かな感情のうねりが湧いてくる。 これは大人の恋愛小説。 そして青砥が須藤に結婚を申し込んだゆえに、須藤は青砥のもとを去って静かに死んでいく。
青砥の気持ちも分かるし、須藤の気持ちも理解できる。
ストーマを点けざるを得ない状態の大腸がん。 腹膜播種も2年半前に亡くなった弟と同じ。 読んだ後、私も静かに弟を偲んで悲しかった。
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