2019年09月24日(火) |
送り火 / 高橋 弘希 |
第159回芥川賞受賞作品。
転勤族の少年・歩が青森県平川市近郊の廃校寸前の中学校に三年生の一年間だけ通うことになる。 そこで歩は五人の同級生の力関係を観察し、その中にうまく自分を位置づけることに成功する。それは今までも転校生だった歩の処世術である。 リーダーの晃と仲良くなり、同級生らのナイフの万引きに参加し、時折暴力的ないじめが噴出する中でも、うまく中立的な観察者の立場に身を置いたかに見えた。
最後の場面で廃校するがゆえにいつもより暴走した先輩からの暴力に耐えかねて爆発する稔の怒りは、自分をいじめてきた晃ではなく、歩へと向かう。それは日本社会のあちこちで廃れる行く農村の、さらに底辺に押し込められた稔の反撃だ。その情念が人の形をしたマガゴトを焼いて村の外に流す他者排除の「習わし」と重ねられているように思う。
稔の怒りが卒業生やイジメてきた晃ではなく歩に向ったのは、たぶん転校生だから、どうせ村からいなくなって自分らとは生活していかないからの、都会者に対する深層心理なのだろう。
そして・・・傷ついた歩は助かるのか、それとも空を見上げたまま死にゆくのだろうか。。。
最後まで淡々とした語りというか静かに終わるのかと思ったのに、こういう展開もあるのだなぁと。
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