せらび
c'est la vie
目次昨日翌日
みぃ


2004年12月21日(火) 夜になったら−11℃になっていた

この時期になると、天気の事が気になる。実に毎日の関心事である。

以前住んでいた街が国境沿いの湖周辺で豪雪地域だったのと比べると、今住んでいる街は比較的雪は少ない事になっている。その代わり、海からの吹き曝しと、大都会らしくビル風が吹き荒ぶのと、それから湖地域からの吹き降ろし効果で、寒さだけは相当なものである。

去年は何度か寒波がやって来た。一番寒い時ではマイナス18℃というのがあって、これがニ三日続いたから、外を歩くのも恐々していた。凍て付いたアスファルトは良く滑るし、雪が降った後なら尚更足型の付いたまま固まって、大変足場が悪いのである。

もっと北の街では、同じ頃マイナス50℃に届いたらしいから、去年の冬は特に寒い年だったのだろう。

この街の人々は、いつもは薄っぺらなレザージャケットなどを着て洒落込んでいるのだけれど、大体マイナス10℃を切る辺りから、ダウン入りのロングコートを着るようになる。これは首元から足元までをきっちりと被い、外の生地は風を通さず、しかし軽い素材の頼れるやつが良い。フード付きなら、尚更グーである。

今時毛皮のコートを着ている人は、ロシア人かヒップホップ業界の成金野郎ども以外見掛けないが、それでもこの位寒くなると偶にいて、大概老人である。老人相手では、カラースプレーを吹掛けてやりたくなるのを、ぐっと堪えるしかない。今にも肺炎に罹りそうな人々を、この期に及んで苛めてはならない。

勿論ニットの帽子にマフラーと手袋の三点セットは、氷点下になった辺りからの必需品である。この三点セットは、寒い地方ではどこへ行っても、外出の際にはくれぐれも忘れずにと繰り返し注意を受ける。それくらい死活問題である。それ以外の衣類が心許無くても、この三点セットがあれば、ある程度まで凌げるからである。要するに、皮膚が出ているところから寒さは侵入してくるのである。

だかそれも、寒さが進むと、どうにも足りなくなってくる。手袋やニット帽は二重になっている物が必要になる。または、二三枚重ねて身に付けたりする。日本で百円で買ったのびのび手袋では、対応が難しくなってくる頃である。


そういうワケでワタシも必要に駆られて、数年前にセールでダウンのロングコートを購入した。伊太利亜メーカーの物らしく、サイズが丁度良かった。色も気に入って、着心地が良かったので、これを氷点下辺りから着始めていたら、去年のマイナス18℃の頃には後悔する羽目になった。身体を甘やかし過ぎてしまったのである。

それで今年は少し我慢して、マイナス5℃辺りまではキルトジャケットか厚手のフリースジャケットのいずれかでやって行こうと決めたのだ。

それなのに、今日はその我慢の甲斐あっていよいよマイナス11℃に届いたというのに、ワタシときたらすっかり怯んでしまって、特に急ぐ用事で無いから、明日になれば少し温むだろうから、と結局外出しないで過ごしてしまったとは、何というへなちょこ振り!ちゃんと朝シャワーも浴びて、出掛ける心積もりはしていたというのに!持ち物も前夜から詰め置いて、コートも三点セットもクローゼットから出してきて、ちゃんと準備していたというのに!おズボンの下に穿くウールのタイツも靴下も毛糸のパンツも皆、ちゃんと枕元に揃えておいたというのに!


ワタシはどうも、寒い土地に長く住んでいる割には、寒さが苦手である。寒いと聞くと、防寒具を更に購入して備えなければと心配になってくる。より暖かいコートやブーツがあると聞けば、どうにも欲しくて堪らなくなってくる。実際の寒さや充分な備えの有無と別のところで、どうも「寒い」というのに、何かがあるような気がする。

これは小さい頃山頂のテントの中で寒さを堪えながら何日も過ごした経験が、トラウマになっているのだろうか。両親の趣味に付き合わされて、充分な防寒具の無いまま耐える事を強要された末の、学習効果だろうか。

何しろ歩き始めた一歳の頃から、毎年二度は長期休暇を取ってあちこちの山に連れ歩かれたから、そのうち何度かは高地で悪天候に祟られ、身動きの出来ない日々があったのだ。幼児体験がその後のワタシの寒さ恐怖症に繋がったとしても、不思議は無いだろう。

そう思いながら、ワタシはスウェットシャツのフードを被り、マフラーを巻き、ダウンベストを着て、ヒーターの前でこれを書いている。


ところで今ワタシが大変気になっているのは、隣の家のイヌが吠えているのが聞こえるという事なのだけれど、これは一体どういう事なのだろう。これは動物虐待と言って良いのではないかと常々思っているのだけれど、隣家の老夫婦はこれについてはどう考えているのだろう。

階下に住む大家の家にもイヌがいるが、これは冬場は大抵室内に入れて貰っているから、泣き声を聞く事は殆ど無い。ところが隣の家のは冬でも始終外にいるので、ワタシが帰宅すると鼻を鳴らして寄って来る。可哀想でならないので、とりあえず金網越しに身体を撫でてやったり声を掛けたりして、適当にしたらワタシは家に入るのだけれど、そうするとそのイヌはまた鼻を鳴らして泣いているのだから、心苦しい事極まりない。

しつこいようだが、今日は今年一番の寒さを迎えた日である。とりあえずマイナス11℃である。幾ら毛皮のあるイヌであっても、外に放置は不味いだろう。

他イヌ事ながら、とても気になる。


昨日翌日
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