眼花、井に落ちて水底に眠る
坂瀬

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 小説・運命はすべて、なるようになる上下:五百香ノエル

ボーイズ小説・運命はすべて、なるようになる上下(ホリーノベル)五百香ノエル

幼い頃、借金の形に売られて男娼になった受は、テニス界の帝王攻1のプレイを見てテニスを始める。ワイルドカード出場を果たし、攻1に認めて貰いたいと頑張るが…。
好きな作家さんの新刊なので買った。悪くないプラス2。
受はテニスプレーヤー。日本人。男娼。10歳の時借金の形として父親に売られ香港に連れてこられ高級男娼になる。攻1の影響でテニスを始める。182センチ。絶品と言って良い優れた容姿はファッションモデルのよう。まっすぐな高い鼻梁。一文字に結ばれた赤い唇。繊細そうな眉目。全体的に鞭のようにしなやかな中東の若者を想像させる。足で拾うタイプのプレイヤー。蜂蜜をクリームでのばしたような甘い色の肌。繊細で芸術的な顔。知的で挑戦的な眼差し。数カ国語が話せる。黒髪黒い瞳。
攻1はテニスプレーヤー。グランドスラムの帝王。アメリカ人。既婚者。子供は無し。頭の固いカトリック。パワーヒッター。美形で最強、愛想も良いクリーンなチャンプ。きれいにカットされた本物の金髪。知的で思索的な碧眼。中世の騎士や王様を思わせる面貌。
攻2はテニスプレーヤー。攻1の弟子。フランス人。モデル経験有り。バイ。秀麗な眉目。パワーヒッター。クリームのように淡く白い肌。金茶色の巻き毛。透明度の高いエメラルドアイ。裕福な家庭で育つ。派手で華やかな周囲。
一歩間違えば荒唐無稽になる話を、作家さんの筆力と力業で感動的で素敵な話に仕上げていた。読んだ後も勝手に頭に作品中のシーンが浮かび何度も反芻していた。こういうのは久しぶり。こんな作品を読むとやっぱりこの作家さんが好きだとしみじみ実感する。
以下かなりネタバレなので注意。


話自体は男娼だった受が攻1に憧れテニスを始めライバルになりたいと奮闘し、攻1の心に残り愛されるが、攻1が亡くなり抜け殻のようになってしまう。それを助けるため受を好きだった攻2が受の主人として君臨し受の憎しみを引き受ける。みたいな流れ。
最終的にくっつくのは攻2とだけど、攻1も充分メインを張っていたので当て馬ではなくこういう表記。因みにさんぴーシーンは無い。
受が可哀想過ぎると萌えを通り越してただただ可哀想になってしまうので、男娼設定は駄目なパターンが多いのだけど、この作家さんの受は嫌がりながらも体は気持ち良くなるので気にせず読めるというか。
それでもパトロンとのHや悲惨な少年時代の話は読んでいて辛かったが、どん底から文字通り生死をかけながら身一つではい上がっていく受のキャラが強烈でぐいぐいと引き込まれてしまう。
攻は二人出てきたがそれぞれに魅力があり、受が好きになる気持ちも充分理解できた。
特に攻2は持って生まれた才能と美貌に恵まれ裕福な家庭で育ち勝ち組人生を歩んできたにもかかわらず、受に恋して受のために自分を殺して人生をかけている姿が、健気で痛々しくて可愛らしくて愛しい。受もその好意の上にあぐらをかいている訳ではなく、最後は攻2の努力が報われ相思相愛になる過程がとても良かった。この攻2は本当によく頑張った。
受を買って調教した中国人の老人が、後半では受の事を気遣って行動するのは出来すぎている気もするけれど。
例えば小さい頃、正義の味方な主人公が死闘の末悪者を改心させる話を読んだり観たりして感動していたが、少し年が行くと悪者が早々改心するはずがないと思うようになる。実際悪人で無くとも人の気持ち(特に年をとった人)を変えるのはとても難しいと分かってくるからだけど、でもそういう疑念をねじふせ説得力のある人の心を動かす話が読めたら今でも心が躍る。
悪人側であった中国人の老人の心も、受の生命力というか存在に少しずつ変化していったのではないか。
「悪人」としての立ち位置は変わらないけど、悪人なりの情の示し方を受にしたのだとしたら、「悪人」を改心させた主人公の話を読んだ時と同じくらい、心を踊らせてしまう。
老人も作中で受が人形から人間になったと語っているし。受と接する内に受への認識が物から人へと変化して、受に情が沸いたとしても頷ける。
闇社会で実力を持っていた老人の気持ちを動かすほど受のキャラが強烈だったのも魅力的。
最後は受の妹が出てきたみたいなんだけど、流石に売られて海外に行った事は知らないよね?
も一つ攻1の墓参りは妹が出てきたエピソードより後、「はるかに大きく年輪を重ね」という文からも、攻1が亡くなった32歳より結構な年になっていると考えて良いんだよね。こういう時間を感じさせるエピソードに弱いのでエンドマークの文章にじんとした。
くっついた後の二人のいちゃいちゃが読んでいたいけど、あのエンドの後では蛇足になるのか。でも読んでみたい。
Hは多め。本命よりパトロンとのHの方が多いぐらいかも。
次も地雷で無い限り買う予定。
テニス物。男娼物。再生物。人生物。テニスプレイヤー×テニスプレイヤー。攻1が32歳、攻2が18歳の時、受は20歳(本当の年齢は17歳)。年上攻。年下攻。攻死亡。受は男娼のため他の男にやられている描写が多い。


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男娼設定について。
つらつらと思い返すと苦手とは言わないが萎えることの方が多い。
萎えるパターンの大きな理由は二つ。
一つは借金の形や無理矢理男娼になり、受が心底嫌がっていて痛みだけで辛い感情が表に出過ぎると、ただただ受が可哀想になり萌えが吹っ飛ぶ。
もう一つは、好きだった人に振られた腹いせとか己の環境の悪さを理由に男娼に墜ちるタイプ。元々親が悪いから不良になりましたみたいなキャラが好きでないので、他人のせいにして蓮っ葉に構え、褒められないけど楽な方に墜ちる時、他人にされた事を言い訳にして自分を棚にあげる人物が好きじゃないからかも。
それ以外の他人とHするの気持ちいいから男娼になりましたとかいう理由なら、気にせず読めるしお仕事頑張れとも思えるのだけど、男娼物と言えばほぼ上の2パターンが多いので、地雷な事が多いか。男娼設定自体が駄目な訳ではない。

2010年12月20日(月)
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