眼花、井に落ちて水底に眠る
坂瀬

日記&BLの個人的感想。ネタばれ基本。まずは下のリンクのHOMEへ。


 青田買い2003年2月・3月・4月

2003年2月

松幸かほ/南野十好/ゆりの菜櫻/鳥城あきら

今月の青田買い
雑誌でしか見ないような新人さんの話の感想を書いてみることにした。新人扱いは、個人的に単行本が2,3册出た所まで。将来有望かが基準ではなく、あくまで私の好みに合う話を書くようになってくれるかどうかが基準。

・人の気も知らないで/松幸かほ(ショコラ2003年3月号)
建設会社に働く受は社長の息子の攻に好かれている。弟のように思っていたが、残業をしていたある日の夜、告白されたが将来を思って身をひく…。
デビュー作。PNを「あきた小町」から変えたよう。
受の性格は真面目で好感が持てたが、受にふられて荒れる攻は実際側にいたらウザイヤツだろう。仕事で私事を引きずって他人にあたったり穴を開ける人間は最低だと思っているので、あまり好感が持てなかった。チーマーの頭悪い攻なので、変に真面目でも設定的に合わないのは分かるが。今後単行本が出たら設定如何では買うつもり。

・close to you/南野十好(リンクス1号)
大手機器メーカーに勤める受は残業後、酔っぱらいに絡まれたところを助けられたがその相手に強○されてしまう。そんな出来事の後で止めた先輩の手がけた設計を修正することになり…。
小さく綺麗にまとまっている感じ。この話は受が攻を好きになった過程が分かりにくい。相手を認める過程は分かったが、それが恋愛に至った所が分かりにくい。強○ではじまっているわりに、終わり方の後味は悪くない。でも単行本を買うにはもう一枚何かが弱い。

・最凶の男/ゆりの菜櫻(シャレード2003年3月号)
受は弱小スポーツ雑誌社勤務、攻はランキング3位のテニスプレーヤー財閥の息子。受と同居するために色々画策する…
まさかこのアホっぽいタイトルを二度目に目にするとは思わなかった。内容もトンデモ。オチはストーカーの話が出た時に分かったが、別に推理物ではないのでそれは構わない。ただ、ストーカー行為の描写がテンプレのようで、それはあのオチなので仕方がないのかもしれないが、ただの筆不足にしか見えなかった。全体的にエピソードの連結がぎくしゃくして見える。攻は金持ちのトンデモ設定ならもう少しそれらしく書いて欲しい。鬼畜というよりは電波。中途半端な感じ。もう少しコメディタッチで書いた方が設定の滑稽さが生きた気がする。全体的に微妙。

・クレーム受けます前編/鳥城あきら(シャレード2003年3月号)
重機器会社の話。続編。本が1册出ているが、まだこのリフト物とその単行本の話しか読んでいないので、一応載せてみた。
前回の話は、エピソードの繋がりがいまいちで受攻のお互いの距離感が縮まっていくのが分かりにくかったけれど、今回のは非常にバランス良く書かれていた気がする。二人とも仕事熱心で頑張っている姿は気持ちが良い。
ただこの作家さん、この手の企業に勤めていたので仕事内容に詳しいようなので(金糸雀も似た業種だった)、それ以外の設定でどんな話しを書くのか。
個人的には色々な話に挑戦して作家の幅を広げて欲しい。金糸雀の話は好き系ながらツボを外した内容だったが、この話は面白いと思った。単行本化されたら買うつもり。
ついでにいうとエロシーンは久々に萌えた。受が膝頭で撫でる描写は自分にとって目新しかった。ごちそうさま。



2003年3月

羽室遊宇/三岐ともき/佐伯まお/冴島久美/紫端とおる

今月の青田買い
雑誌でしか見ないような新人さんの話の感想を書いている。新人扱いは、個人的に単行本が2,3册出た所まで。将来有望かが基準ではなく、あくまで私の好みに合う話を書くようになってくれるかどうかが基準。
面白い作家さんだけを挙げるか、つまらなかった作家さんも挙げるかはその時の気分。

ボクがキミを好きになる前に・羽室遊宇
受はコンビニでバイトしている攻と親しくなる。攻は受の幼なじみである少女が目当てで受と仲良くしたいと思っていると誤解しながら、友情を育てようとする…。
悪くないが目新しさは無い。同じ描写が繰り返されてくどく、持って回った書き方の箇所もあるが、書き慣れれば気にならなくなるかも。受が空手をやっている設定は生きてないので、別になくてもよかったのではないか。受はおどおどしすぎかも。友達がいずに孤独だけど、実は周りは友達になりたがっていたとか(受がそこまで注目を浴びている魅力が伝わらない。まさか可愛いという理由だけじゃないよな)、攻がいきなり受に好意的になりすぎていたり、攻が受を好きだという態度に気づかないまま延々と話が進んでいくのは、ちと鬱陶しい。
この作家ならではというのが見えにくい。

HELP!・三岐ともき
大学生受は銀行強盗に巻き込まれ、同じ大学の製薬会社御曹司攻と知り合う。教員志望の子供好きで、攻の弟の遊び相手になっているうちに攻に就職を世話して欲しいからと誤解され…。
面白い。話の切り口が変えてあり新鮮に感じた。最後の義母とのやりとりは展開が甘い感じがしたが、それを棚に上げて、ついでに誘拐事件の過程の出来も棚に上げて、面白かった。
受がへこたれない系で男前で真っ直ぐだし、攻はほどよく鬼畜で壊れ系で美味しかった。挿絵のせいかもしれないが、作風はギャグ突っ込みの少ない水月ありーなのようだ。久々に期待の新人さんか。まだこれしか読んでいないので4月に出るデビュー単行本は是非買いたい。
御布施のつもりだった花丸春号がこの作品のために生きた。てか続きがものすごく読みたい。何度も読み返してしまった。

純情! ハイウエィビューティー・佐伯まお(松本デストロイ改め)
地元でやんちゃしていた攻は、更正のため北海道の叔父の元に送られ、トラック運転手の受の弟子となって修行するが…。
この時代にトラック野郎…。ピカピカデコラティブなトラックに任侠の世界…。誰がこの作品にOKを出したのか。意外性だけを狙って書いたのか。久々に吃驚するような設定に顎が外れそうだったが、飾り立てた愛車のデコトラに言葉もなく立ちつくす攻に向かって「ちょっと地味だったかな」と可憐に頬を染める受に笑った。そして弟子いりした攻が受をアニキと呼び、Hで逝くときにアニキ!と叫ぶ姿は北島三郎ならぬサブの世界。ここまで突き抜けているなら全然大丈夫。大好き。
伝説のトラッカーの受は女性ぽい華奢なスタイル。攻は不良でならしたハンサム系なので本当のサブなわけではない。
正直、花丸の新人作品は、他の雑誌より文章がこなれていなかったりレベル低いのも多いのだが、他ではあまり見ない設定の多さは一番だと思う。色物好きの血が騒ぐ。前作は今一つ印象が薄かったが、この路線で行くなら買う。

追憶・冴島久美
受は高校の時に付き合っていた教師の攻に結婚するから別れてほしいと言われて以来自棄になって行きずりの体の関係を続けている。ある日、ナンパされて寝た男の兄が別れた攻だとしり…
文章はそこそこ書けていると思うが何とも。基本的に躓いて自棄になって堕落するタイプは好きになれないので、受も好きになれなかった。自分がこんなになったのはあいつのせいだと自ら自滅しておいてウダウダ考え続ける人間は鬱陶しい。
間違った方向でも復讐してやるとか、もっと魅力的な人間になってやると開き直った方が好印象。
設定によっては面白く読めるかも知れないが、じめっぽい作風かも。

ハウマッチ?!・紫端とおる
受は友達の出しているフリマで300円で攻に買われる。家までついていきそのまま勢いでH。で、よく分からない何かで揉めていた。
読むのが疲れた。体よくナンパされて口先に乗せられてHして、1度のHに引きずられて好きな気になって出来上がって、しかも彼氏ーはホテルの社長ー。…身も蓋もない話だった。大概のボーイズのパターンはこういうものだが、その衒いのない話に衣を被せて、第一は愛情で繋がっているのー。体やお金は二の次ーと嘘でも良いから取り繕ってくれないと萎える。



2003年4月

吉田ナツ/すずもと里絵/杉浦ユエ/久我有加

ボーイズ小説・桜の花が散る前に(ビーボーイ5月号2003)吉田ナツ
男関係が激しい兄を持つ受は、ある日兄の元に夜這いに来た攻に一目惚れする。攻は自分が同性愛者か確かめたく兄の誘いに乗ろうとしたのだが、受と付き合うようになり…
前に読んだバンド物が好みだったが、これも面白かった。かな。好みな作家さんに成長してくれそうで将来が楽しみ。攻は真面目なノンケタイプで好感が持てる。受も恋に恋する可愛いタイプではあるが、攻と付き合うことになって「どんどんきれいになる自分」を自覚する下りは女性の感性のようでひいた。
男でもそう考えてもおかしくはないのだろうが、好きなエピソードではない。
受よりも兄が可哀相な話だった。こちらに感情移入したら受が好きでないと考える人もいるかもしれない。次の作品も読んでみたい。

ボーイズ小説・死体より愛して(ショコラ5月号2003)すずもと里絵
冠婚葬祭会社に就職した攻は明るい性格を自負するにも関わらず葬儀部に配属されてしまう。そこで出会った先輩受は、葬儀を愛して止まないフェチな性格で…
設定の着眼点は面白い。リーマン物も学園物も手垢がついているので、変わった業種物が読みたい時は、こういうチャレンジをしてくれる作品はありがたい。攻は明るく熱血。受は天然の入った物静かで冷たい雰囲気で葬儀場にはぴったり。攻視点。攻が受を好きになる下りは説明不足ではないが納得出来ない感じがした。受が攻を好きになった理由はもっと分からないが。もう少し書き込んでくれれば面白くなる気はするが、設定が珍しいから目をひいたので好みの作家さんになってくれるかは保留。
ついでに私事だが、この話を読んでいる時に身内の訃報を聞いた。受の語ったご遺体への心構えを葬儀で思い出してしまった。何となくありがとう。

ボーイズ小説・踊らされたわけですか(ショコラ5月号2003)杉浦ユエ
保険医の受は保健室にたむろする生徒を注意して、その中の一人・攻に保健室でやられてしまう。後日攻が学校を休んでいると聞き、家へ訪ねていきやっぱりやられてしまう…
それでくっついて終わりというやってるだけの話だった。ポルノというにはHシーンが凝っていないのでただのやってるだけ話。攻も受も性格はテンプレ。好みの話ではない。

ボーイズ小説・何でやねん!(ディアプラ10号2003)久我有加
高校生の受は毎日攻から漫才のコンビを組もうと勧誘されている。受は昔、自分の関西弁を笑われ苛められたトラウマからその手一般の話は嫌いになっている。ある日攻に連れられお笑いのライブに行った先で昔率先して苛めていたクラスメートの女子と再会し…
単行本を2册出しているので新人さん扱いしようか迷ったが今回で最後。それなりに安定してきて、作家の特性も出ている。結構面白かった。ただ私が関西出身なので特に受や攻の話に親近感は持ったが、別の地方の人も同じように思ったのだろうかと、ちと疑問に思った。関西弁は馴染みがあるし好きだが、次は関西弁から離れたキャラが見てみたい。
受はキックボクシングをしていて強いが攻には弱い。攻は情けない感じでとても好みだ。次号予告にも同じレーターさんで名前が上がっていたが続くのだろうか。続くとしたら楽しみ。
因みにお笑いは、他人をバカにして笑いを取るタイプより、自分を落として笑わせるタイプの方が好きだ。

2004年06月07日(月)
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