心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2012年03月05日(月) アディクションセミナー雑感

横浜のアディクションセミナーに行ってきました。正直、金曜日には疲れが溜まりまくっていたので、週末の予定を全部まとめてキャンセルしたいぐらいの気分だったのですが、約束していたこともあったので出かけてきました。

(とは言うものの、僕が行かなかったとしてもそれほどトラブルになるわけじゃありません。行かなければ誰かがちょっとだけ困るでしょうが、僕が空けた穴は別の誰かがきっと埋めてくれるでしょう。それは僕がそれほどの重要人物ではないということです。しかしやはり穴は空けるべきではありません。軽諾寡信とは老子の言葉)

午前中は自分たちの分科会の部屋にいたのですが、午後はメインホールの体験発表(スピーカー)を聞いたり、他の団体の分科会を覗きにいったりしていました。そこで感じたことをいくつかメモ的に書き残してお気ます。

アディクションセミナーには様々なグループ・団体の人たちが来ていますが、アルコール・薬物の物質依存系の人は少ない感じでした。薬物の人は多かったけれど、あれは昼休みに琉球太鼓を披露する人たちが来ていたからで、それがなければもっと少なかったのではないかと思います。あの琉球太鼓は、人前で演舞をすることで、いままでの生き方で張り付いてしまった否定的な自己像をぬぐい去る効果を狙っているのだと聞きました。AAの分科会も(毎度のことですが)10人以下のこぢんまりした感じでした。

午後のメインホールでのAAのスピーカーの人が、「AAメンバーは内向きで、AA以外のことに関心を持たない。今日来て初めて知ることばかりだ」と言ってましたが、AAメンバーが内向き過ぎるというのは、その通りだと思います。

だいたいAAのオープン・スピーカーズ・ミーティング(OSM)というのは、アルコホリズムのことや、そこから回復する手段であるAAのことを世間に広く知ってもらい、回復できる手段があることをまだ知らない人に伝えていくための手段です。だから「オープン」なのです。だとすれば広く世間に広報して、関心のある人に来てもらい、参加者のうちAAメンバーの占める割合が半分以下とか、もっと少なくても良いぐらいものであるはずです。

しかるに、現実に行われているAAのOSMは、参加者の実に9割以上がAAメンバーというとんでもなく身内感覚のイベントで、「(他地区・他県から)来てくれたAAメンバー数が多ければ成功」などという評価基準になってしまっています。これじゃあAAのメンバー数増加が頭打ちになるのも当然と言えます。AAメンバーの視線はAA内部に向けられていて、世間の中で「まだ苦しんでいるアルコホーリク」のことは無視されています。

むしろ、ギャンブルやACやひきこもりのような、物質嗜癖以外の分野の人たちが元気でした。HA(ひきこもり・アノニマス)は小部屋で分科会をやっていましたが、(確かめたわけではありませんが)HAメンバーよりそれ以外の人のほうが多く、ニーズがたくさんあるのだろうと感じました。

注目すべきは、午後のメインホールでのスピーカーで、お二人が発達障害について言及していたことです。お一人はADHD、もう一人はアスペルガーという話でした(どちらも女性)。発達障害が「生きづらさ」の原因になっている場合があり、その部分には12ステップが解決になってくれないわけで、回復しようと努力していても、何年経っても変わらないってことが起きてしまいます。その場合、変えられない部分は変えられないことを受け入れて、別の部分を変えようと努めるようにするしかないわけです。発達障害ゆえの特性は特性として、それ以外の二次障害の部分には12ステップによる変化あり得るということを示してくれたように思います。お二人のスピーチは賞賛に値すると思います。

ただどちらもACのジャンルの人たちでした。発達障害は分野を問わず、アルコールの人にも、薬物の人にも、ギャンブルの人にも、またそれぞれの家族の立場の人にも存在するはずで、将来、そうした立場の人で発達障害を自認する人の話が、ここで聞けるようになると良いのですが。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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