心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2005年02月22日(火) 貯蔵庫

ある時、僕が実家に顔を出しているときに、兄がこう言いました。

「我が家の冷蔵庫は、食物が腐るまで保存しておくための貯蔵庫である」

我が家の冷蔵庫も似たような状態であります。
冷蔵庫という物は調理前の食材を保存しておく恒温槽であります。時には、調理後かつ食事前の食事を保存しておくために使われることもあります。そして、食事後の残りを次の食事まで保存しておく貯蔵庫でもあります。

しかし、その「残り物」は次の食事には登場せずに、冷蔵庫の奥の方へと押し込まれてしまうことがあります。それは「残り物ばかりではなんだから」と新しいおかずを調理するからであり、我が家の場合には隣に住んでいる義父義母が「食事が偏るといけないから」と作りすぎたおかずを分けてくれる結果、我が家でもおかずが余ってしまうことが原因であったりします。

そして、冷蔵庫のさらに奥の方には、さらに年代をさかのぼるおかずが貯蔵されていることも珍しくありません。これを「おかずの地層化」と呼びます。時には、地層の奥深くより「価値あるおかず」が発掘されて食卓を彩る可能性もなくはないのですが、たいていは「さわらぬ神に祟りなし」という金言が適用される状態であります。

きちんとおかずが地層化している場合には、一番手前、もしくは上のおかずが最新であることが保証されているわけですが、冷蔵庫の使用者がずぼらである場合には、どれが最新であるかの情報は、冷蔵庫の主たる使用者である主婦しか把握しておらず、他の者が触れるのは、とってもデインジャラウスになってしまう場合があります。

さて、一家の主婦が風邪(あるいはウツ)で寝込んでいる状態の時には、夫たる者そのピンチヒッターを務めなくてはなりません。この際に、主婦の

「冷蔵庫の中の物を暖めればいいだけだから」

という甘言に騙されてはいけません。冷蔵庫の中で一番手前で発見した「お、こいつはうまそうだな」という容器を電子レンジで温めると、数分後にはキッチンがさながら「生ゴミ入れのペールの中」の様な異臭に包まれ、一気に食欲を失った上に、何もかもやる気を失ってしまう危険性すらあります。
冷蔵庫の中を覗き込みながら、ここ数日、何をどのような順番で食ったかを正確に思い起こせるようでなければ、一人前のピンチヒッターとは呼べません。

しかしながら、結局はカビが生えるまで保存され、生ゴミペールの中に捨てられ、容器を「おぞぞ」という思いをしながら洗わねばならぬとわかっていながら、なぜに残り物を冷蔵庫に腐るまで保存し続けるのでありましょうか? 冷蔵庫というのは、中に物が入っていればいるほど、冷却効率が下がり、電気代は上がり、地球はあったまるという箱であります。

なぜ、このような行為が我が家においても、また実兄の家においても繰り広げられているのでありましょうか? やはり、「もったいないお化け」の呪いなのでありましょうか。

買う予定のないダイエット食品のチラシであるとか、もちろん買う予定のない車のカタログであるとか、用がないのに取ってある物が、身の回りにいろいろところがっています。そういったものでも何日間か時間が経過すると、「捨ててもいいかな」という気持ちになるから不思議であります。

きっと、物は捨てられる前に、ある場所に一定時間とどまらなければならないようにできているのでありましょう。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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