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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2004年03月18日(木) 暗い側面 刑法39条には単純に「心神喪失者の行為は、罰しない」とだけ決められています。「心神喪失」てのがどんな状態かは法律では決められていないのだそうですが、戦前の判例によって「精神ノ障害ニ因リ物事ノ理非善悪ヲ弁識スル能力ナク、マタハコノ弁識ニシタガッテ行動スルノ能力ナキ状態」となっているのだそうです。
刑事事件の裁判なんかで精神鑑定が話題になりますが、あれは実は全体のごく一部に過ぎません。たいていは検察での簡易鑑定で責任能力なしということになれば、裁判をやってもどうせ無罪になるので、起訴猶予ということになります。以前、市内で殺人と思われる変死体が見つかったニュースがテレビ報道されたことがありましたが、翌朝以降新聞でもテレビでもそれを取り上げないということがありました。無罪の人間の犯罪を報道してしまえば、それは人権侵害ということになるのでしょうか。
普通の人が泥酔して「前の晩やったことを覚えていない」という状態で、心神喪失を理由に罰せられないということは、おそらくあまりないのでしょう。ところが、アルコール依存症の人の場合、病気の進行の具合によっては、少量の飲酒で意識障害に陥ることがあります(いわゆるブラック・アウト)。この状態で重大犯罪を犯しても、罪に問われない場合もままあるのでしょう(と曖昧にする)。
精神鑑定というのは、「今どうであるか」ではなくて「犯罪当時どうであったか」を問われるわけなので、しらふに戻った本人は責任能力ありありでも、罰されないというわけです。こうして、公にならない事件というのは結構あるんじゃないのかなと思ったりします。
ずいぶん前ですが、ある人が精神病院に入院していると聞いたので、面会に行ったのですが窓口で断れてしまいました。院長に許可を願ったのですが、それも返事がもらえません。閉鎖病棟の中にいる本人から伝聞で聞いた話では、あと何年間か出られないそうです。処置入院でも年数の目安が決まっている例は聞いたことがありません。アルコール依存症で何年も入院するなんて変だなぁと思ったことから、39条を思い出してしまいました。
まあ、仮にそんなことがあったとしても、先の変死体の事件とは時期が違いますから関係ないでしょう(念のため)。真相は本人に聞いてみるまでわかりませんが、それもあと何年か先の話です。
精神病院、しかも閉鎖病棟となれば、僕にとっても悪夢のような場所ですが(未体験)、刑務所経験者に言わせると「懲役に比べれば天国のようなもの」だそうです。
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