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■ 未来を照らす言葉
bitsの編集会議に参加している途中 写真家 杉野シンさんから電話が入る。 色々と相談事があって、留守電を残してはいたのだが 忙しいのだろうと思い、返信は期待していなかった。 しかし、シンさんは快く「今からスタジオに来なさい」と 誘ってくれた。
言わずと知れたカナダNo.1のコマーシャル・フォトグラファー であるから、仕事中に友達のように遊びに行ける関係ではない。 車の撮影も余裕なほど巨大なスタジオ。 恐る恐るスタジオの扉を開けると 大人数のスタッフがせわしなく行き交う撮影現場。

TELUSという携帯電話の広告を撮っているところだった。 このTELUSをはじめ、街にはシンさんが撮った広告が溢れている。 街を歩いていて
ここは大人しくしなければ、と気を引き締めてると スタッフの女の子が優しく 「コーヒーでもどう?」と語りかけてくれた。 う〜ん、こういう気配りはいいね。 オイラもいつか、こんなスタッフが欲しい。 ていうか、写真家っていいな。 シャッターを押すのは一人かもしれないが そこに辿り着くまでに大勢の人の協力がある。 いわばチームプレイだ。 それを率いるリーダー シンさんの存在感はデカイ。 求心力と言い換えてもいい。 「この人について行けば大丈夫」という絶対の安心感の中で 彼らは仕事ができるのだから。
程なくして撮影は終了。 スタッフが後片付けに走り回る中 オイラとシンさんは、5分と離れていない場所にある 彼のメイン・オフィスへ。
今日はBitsから対談のオファーを持ってきている。 年末の【Tokyo Doll2】で来加する写真家【FRUITS】でお馴染みの 青木正一さんとの対談のセットアップを頼まれているのだ。 ここ数日、色々と考えた対談の切り口や意図を 一通り説明させてもらったのだが、シンさんの口からは 「面白くないね」と、バッサリ・・・。 あまりの即決に、軽く動揺する。 「じゃぁ、どんな企画だったら乗れますか?」と聞けば 暫く考えた末、「このデザイナーは面白いね」と 参加するデザイナーの作品を指差した。 「俺がモデルを用意して、このデザイナーの服を撮るよ」 え・・・ マジっすか!?
急転直下の企画変更で、とんでもない大事になった。 先日行なわれたシンさんの個展で発表された Tin Typeという手法を使って、ポートフォリオを撮る! そして、この新鋭デザイナーとの対談! こんなデカイ手土産を持たされたオイラは 嬉しさ半面、怖さ半面。
仕事の話はそれで一段落して 会話は自然とアートの話となる。 ここからが、本当の意味で今日の収穫となるのだが オイラに面と向かって苦言を呈してくれるのは 実はこの人以外には居ない。
作品の弱点 アーティストとしての心構え ビジネス パブリック・イメージ
そのどれもが的を得ていて、全く反論できない。 ただ一つ褒めてくれたのは 「Tomoは成功する要素を全部持っている」ということ。 10の苦言に対し、たった1つの褒め言葉。 その一言だけで充分に救われた思いがした。
スタッフが帰宅し、誰もいないスタジオで コーヒーを飲み、煙草を吸う。 二人だけでこの空間にいるのが不思議な気がした。
普段付き合っている友達や友人 決してその人達の言葉が軽い訳でも、浅い訳でもない。 しかし、シンさんの一言には重みがある。 自分にとって先人である事、 未だ見ていない、これから見るであろう風景を すでに経験している余裕。 これからオイラがどういう道程を行くのか この人には見えているのだろうか? そんな奇妙な気持ちにさせられるほど その言葉は未来を照らしていた。
2004年10月12日(火)
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