-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 レクチャー

今朝まで掛かって講義用のファイルを制作。パワーポイントを使って、色んなアニメや立体人形、そしてTokyo Doll参加アーティストの画像をスライドにする。一応、台本みたいなのも作って、話の流れに沿って投影する予定。

2時間ほど仮眠を取り、朝9時から再びペインティングの作業に戻る。現在4枚目の仕上げ中。今晩中にもう一枚だ。

午後1時にTokyo DollスタッフのMさんと待ち合わせて、一緒にEglintonにある学校へ。この【Le Citadelle International Academy of Arts & Science】という学校は私立で、下は3歳半から16歳までで全校生徒160人程の学校。英語、フレンチをはじめ、日本語、ドイツ語、イタリアンなど8ヶ国語の授業があるという珍しいシステム。それだけに、人種も様々であるが、平均して上流階級の子供たちが多い印象。

学校に着くと、ちょうどダイスケくんが工作の授業を行っており、そこに飛び入り参加。日本でも一昔前に流行った【ドリームキャッチャー】を作る授業。生徒はみな人懐っこくて可愛い。だって、自分から「Hi,My name is Hannah」とか挨拶してくるし、紙に名前を書いてポケットに入れてきたりした。こんな子だったら子供にしてもいい(笑)

続いて日本語の授業にも参加。飛び級制度があるので、頭のいい子はどんどん伸びる。日本語のテストも、皆スラスラ答えを書いてる。凄い!

俺の講義は、全部の授業が終了した放課後、全校生徒を体育館に集めて開かれた。中には【ドール】=【パペット/人形劇】のショウと勘違いしてる子とかもいた。「Are you puppet guy?(人形劇の人?)」とか随分聞かれた(笑)違うっつーの。

ただ、講義が始まってしまえばこっちのもの。スクリーンに人形が映し出される度に歓声があがる。それは時にスピーチを妨げるほどで、時折先生から注意が与えられる。

講義の内容は、「ドールと人間の関係」として、過去にあるキャラクター、例えばミッキーマウス(ねずみ+人間)、ハローキティ(猫+人間)、機関車トーマス(列車+人間)を取り上げた。人間は、太古の昔より、動物や物などに人間の人格を与え、キャラクターとして親しんできた。動物や静物に、喋ったり、笑ったり、服を着たりといった【人間】的部分を加えてはじめて“キャラクター”が成立する。

それが実際に手を触れられる人形やぬいぐるみになると、子供達はTV画面の中で見るだけよりも、ずっと親近感をもつ。これは人間の習性で、好きなものに触れてみたい、自分のものにしたいという欲求とダイレクトに結びつくものである。

同じように、アートとドールの関係も、最初は平面の絵画を立体にしてみたいという、作家個人の欲求だったのが、近年では絵を描くことなく、最初から立体人形を制作する作家が出現している。Tokyo Dollでも、ほとんどの作家が人間+何かを合体させたキャラクターを生み出している。

以上のことを踏まえて、立体人形を扱うということは、人間を知るということに結びつく。例えば、【えんぴつ+人間】のキャラクターを作ったとして、走るポーズを想像する時は必ず「人間が走る姿」が想像のスタートラインだ。それを踏まえて「えんぴつだったらどう走るか?」という考えに発展する。

人間と合体させなくてもキャラクターは成立するかもしれないが、じゃあ洗濯機をキャラクターにしてみて、と質問すると、その名前は【洗濯機くん】や【Mr.ランドリー】と名付けられたりして、【くん】や【Mr.】が付いてる時点で、それ人間じゃん!(笑)と言いたくなってしまう。まぁ、それほど人間って部分が創造の根底にあるってことですよ。

立体を作るためには、正面、横、上などから多角的に対象を見なければいけないし、間接は180度曲がらないとか、この体勢は物理的に不可能といったことも念頭に置きながら制作する。そういう人間的に出来ることと出来ないことが最初にあるからこそ、そこから飛躍しようという新しいアイデアが浮かぶのだ。

何も無いところから、新しい創造を生むのが無理なように、ドールの歴史もまた【人間】という立脚点がなければ決して生まれ得なかったものではないだろうか?

そんな小難しい事を講義しなかったけど、一つだけ宿題を出しました。それは粘土で一つキャラクターを作ること。条件は人間+何か。立体人形を作ることで、今まで以上に人間の体や自分のことを知る切欠になるのではないでしょうか?

期限は今月末。子供たちが一体どんなキャラクターを生み出すか、今から楽しみです。

2003年10月20日(月)
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