-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 I'm Back to the artist!

数時間寝てから、ウェブの更新を済ませて、いよいよ本格的に絵の構図を考える。6日後の【Artfocus】に出品する作品だ。今から何枚描けるか分からないけど、とりあえずカンヴァスだけは大量に用意した。

午前中にRafiからミーティングの連絡があったけど、悪いが午後にしてもらう。その甲斐あって、いくつか良い構図が出てきた。何度もスケッチを繰り返して、ピンと来るのを待つ。多分、どの作業よりもこの瞬間が一番楽しい。

楽しいとは言いつつも、雑音が入ると気が散るので、この作業中だけは電話線を抜いて、音楽も止める。キャンバスに転写してからは、お気に入りの音楽を掛けて一気にテンションを上げる。最近やっとインターネット・ラジオの設定をしたので、世界中のラジオが聴ける。サイコー!

特に、アメリカの【Beatle-Rama】は24時間ビートルズなんで、日中はコレ専門。夜になってからは、落ち着いた古いJazzのチャンネルに合わせる。

午後3時にRafiとDXへ行き【Tokyo Doll】の確認作業やらを済ませる。DX側は、今回の成功に気を良くしており、企画当初にアイデアを出していた【Hype Fashion】という、日本のインディーデザイナーを紹介する展覧会を来年のスケジュールに組み入れてもいいと言ってきた。

早速来週、このミーティングを持ちたいらしいのだが、有頂天になるRafiと対照的に、俺はものすごくブルーで、どうしていいのか分からなくなった。その様子に気付いたRafiと一旦外へ出て話し合い。

立ち話で、胸の中にある想いをブチまける訳にいかないので、今日はDXを退散することにして、ケンジントンのRafiのスタジオへ歩いて帰る間、いろいろな話をした。

去年の【Hype Tokyo】と、今回話が出た【Hype Fashion】は将来的に毎年開催できるようなイベントにしたいと思っていた。もちろん、実行は俺一人で、他の誰とも手を組まずにやりたかった。

去年の年末にRafiから【Tokyo Doll】のアイデアを持ち込まれ、一旦【Hype Fashion】の準備を棚上げして一年間やってきた。そして【Tokyo Doll】が予想以上の成功を収めてから、どうも自分の中のアーティストとしての血が収まりつかなくなってきているらしい。

元々一匹狼だから、今まではどんなイベントも俺に100%の権限があった。しかし、今回の【Tokyo Doll】ではチームで物事を創り上げたので、当然100%の権限なんてものは無い。むしろ、周りに合わせすぎてストレスばかり溜まった。

来年この【Hype Fashion】をやったなら、またアーティストとして一年を棒に振ることになる。その辺のせめぎ合いなのだ。キュレーターとしての自分が、アーティストとしてよりも先行し始め、このまま行けば間違いなく次のイベントはデカくなり、そして成功する。

「おいおい、待てよ、お前キュレーターとして成功したかったのか!?」と自問自答すれば、はっきりと「NO!」という自分が今ここに居る訳で、それだったらキレイさっぱり身を引こうかな?と考え始めた次第。

日本から【Tokyo Doll】に来場したアーティスト達を見ていて、自分も頑張らなくては!と刺激を受けた事も確かだし、今年やろうと思ってて出来なかった事が山のように頭にあって、それをどこかに吐き出したい気持ちもある。

現に、今日だって、ほとんど寝ずに絵を描くことに専念できて、体は疲れてるけど、本当にやりたい事をやってるという充実感がある。これを手放す、又はおろそかにする事は愚かな行為だろう。

I'm Back to the artist!

そう宣言する。


2003年10月15日(水)
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