-A VAGRANT LIFE IN NEW YORK-
飯沼省



 光と影

午後からRafiのショールームでオープニングがあったんだけど、キャンセルして新作に取り組む。そう、やっと【Butler's】用の新作に取り掛かれた。少なくとも2枚は描きあげたいが、明日はまた予定が詰まってるので、正直難しい。

自分の中での「風景画」というものが、少しずつ明確になってきている。よく人から「色使いがイイですね」と褒められるけど、実際“色”にはそれほど執着していない。それよりも“光と影”をどう表現するかの方に比重がある。WEBでは発表してないけど、木炭のみで描いたモノクロのスケッチが山ほどあるが、それらの方がカラー版よりも的確に制作意図を表現できてるものがある。

“光と影”と一口に言っても、強いコントラストだけじゃなく、ほとんど陰影がつかないほどフラットな画面の中にも様々な対比がつくれる。それを俺ならどう表現するか?という部分にのめり込んでいるんだな。

ウディ・アレンの映画【マンハッタン】には、いつ観ても画面に釘付けにされる。映画が公開された当時、撮影監督の元に「どこのラボへ行けば、あんなに美しいモノクロに焼いてくれるんだ?」という質問が殺到したという。冒頭で花火が上がるシーンがあるけど、白黒なのに花火があんなに美しく見えるなんて凄いと思った。それを見て、「色じゃないんだな」と、改めて感じるわけだ。

“光と影”は、“静と動”にも置き換えられるけど、躍動的に動いてるものを捉えるのではなく、じっと座ったままの人間が今まさに立ち上がろうとする直前の、静から動へ変化する一瞬というのに惹かれる。100m走の時に、スタートラインに立って「よ〜い、」と聞こえた瞬間の身の強張りが、「ドン!」で弾ける。その「よ〜い、」と「ドン!」の狭間を表現する言葉は無いけど、作品の中にもそれと同じような緊張があって、それを掴めるか否かが、作品の出来に左右するのだと思う。



2003年09月13日(土)
初日 最新 目次 MAIL HOME