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昨日宿について入った部屋は、スィートルームだった!スィートといっても文字通り続き部屋なだけで特に内装や家具が豪華なわけではないが、トイレが玄関脇と寝室奥のバスルームの2つあるのはポイント高い。各戸のバルコニーには電飾のついた小さなフェイクのモミの木が一つずつくくりつけられている。昨夜は外に出る気力もなく眠ってしまったので、夜明け前に目がさめる。空を仰ぐと明けの明星だろうか、ひときわ輝く星が一つ。白々と夜が明けてくると、目の前に海が見えてきた。海岸沿いに椰子の木が並ぶ。目の前には遊園地のフライングパイレーツのような白い鉄組みの巨大な物体が。クリスマスを当てこんだ移動遊園地だろうか。向こうの方に空港の滑走路が見える。こんな朝早くからすでに飛行機の離着陸は始まっている。といってももう7時を過ぎている。 朝食は7時半からなので、時間になるのを待ってロビー階へ降りていく。レストランの場所がわからないので、聞こうということになり、いよいよ私のフランス語の出番か(どきどき)と思っていると、向こうから来た従業員に夫が「いつもの」英語で「えーすみません、どこで我々は朝食を食べることができるでしょうか?」なんてまどろっこしいことを聞いている。あっさり「downstairs!」と答えられて終わり。ああ、君は私からフランス語を話すチャンスを奪うつもりか。へそを曲げながらレストランの入口へBonjour!。部屋番号をフランス語で聞かれた夫、とっさに英語で答えて後は英語の世界へ突入。こういうとき男女ペアなら普通男に聞くんだよな。だから二人旅はいやだ。 朝食を終えて、外へ。まだ街は始動前。海岸を掃除する人、海岸沿いの道路をジョギングする人、犬を連れて散歩する人、椅子に座ってぼーっと海を見つめる人。とりあえずまずはニース美術館に行くことにする。時間がたっぷりあるのでだらだらと歩いていると、向こうから何か叫びながら自転車を飛ばしてくる女性がいる。女性が追いかけているのは白いポメラニアン。あっという間もなく我々の横を駆け抜けていった。散歩の途中でリードが外れたらしい。おそらく一目散に自宅めがけて走っているのだろう。横断歩道まできて車道に飛び出す犬。信号は赤。「ぎゅぅぃい〜〜〜〜〜!!」っと女性の悲鳴が響く。まさにscream、金切り声。思わず「フランス映画みたい」と感心する。犬は2台急停車させ、巧みに車をすり抜けて坂道を駆け上がって行った。飼い主の女性は律儀に信号待ちをしていた。 海岸に下りて歩く。足元の石をみるとどの石もどの石も波に洗われてすべすべと丸い。細長いのあり、ひらべったいのあり、色のきれいなのや形の面白いものを拾う。たちまちポケットが重くなる。美術館へ行く角を曲がって坂を登っていく。まだ開館前なのでわき道に逸れて坂を登っていくと、学校があって行き止まり。学校の前で車を必死で切り返しながら「美術館はあっちよー!あっちあっちー。」とあごで方向を指しながら叫んでくれたマダム、ありがとう。 庭から美術館に入る。本体はまだ開館前なので、目の前のベンチに座って待つ。昔ウクライナのお金持ちの夫人の館だったというその建物は美術館としてはこじんまりしている。開館と同時に中に入り、1階から順にゆっくりと見ていく。床から天井まで届くような大きな両開きの窓をフレンチ窓といって、私がイギリスで住んでいた家も庭に面した窓はドア兼用のフレンチ窓になっていたが、現地ではよろい戸もついてますます本領発揮といったところ。窓から見えるよその家の庭にも椰子の木が植わっていて「なんかデュフィの絵みたい」と夫にささやく。夫は「デュフィ」と聞くと、なぜか反射的に「でへぇ」と言ってしまう変なクセがいつのまにかついていた。 2階の階段を上がりきったところにデュフィばかりを展示した部屋がある。わざと後回しにして、最後に足を踏み入れる。わぉ。門前の小僧習わぬデュフィを見る。他に誰もいないところでゆったりと椅子に座って絵を見回す。時々定期的に係員が回ってくるほかはまったくの静寂。少し開けた窓(当然フレンチ窓)、そこから見える外の景色、なるほどこういうところか、と思う。下へ降りてちょっとしたミュージアムショップで絵葉書を買う。 美術館を出て坂を降りる。太陽はすっかり上っていて、かなり暑くなってきた。坂を降りきって海岸に出てところで「あっ!」と思う。デュフィがよく波を△の連続で描いていて、それを私は常々奇異に思っていたのだが、今目の前にある波頭は、南中した日光を浴びて、一瞬の△の連続のようにぎらぎらと反射している。ああ、これか、この△か。ちょっとした発見に胸が躍る。そのまま気分よく海岸に降りて、海の家のようなテラスで食事をすることにする。ニース風サラダと、魚のグリル盛り合わせと、白ワイン。一応フランス語で通してみる。店員はどうもイタリア人みたいな感じだけど、通じたのでまあよし。日差しが強く、着ていたセーターを脱ぐ。12月というのにこのうららかさはどうだ。実に気持ちがいい。「いやぁ、ナイスなニースだね」などというオヤジなセリフが口をつく。 午後はシャガール美術館へ。こちらも徒歩で。係員の態度が悪くて気分を害す。前半は機嫌が悪かったが、シャガールの大作がずらりと並ぶ展示に心奪われる。屋外のモザイクやタペストリーなども見る。また徒歩で戻り、城址兼展望台へ。上り坂が激しくどっと疲れが出てくる。夕日を見るつもりが雲に隠れていて拝めず。代わりに夕焼けと旧市街に灯りがともっていくのを上から眺めた。旧市街を通って一旦ホテルに戻る。朝、フライングパイレーツだと思ったものは、実は観覧車の骨組みだった模様。1日でかなり作業が進んだようで、パイレーツ時代が120度とすると、すでに340度ぐらい出来上がっている。まだ作業中なので今夜中に出来上がるだろう。 夜は旧市街のシーフードレストランへ。ここでも英語で話し掛けられ、あっさり英語の世界へ。メニューまで英語版を手渡され、私は生牡蠣と貝のパスタ、夫は魚のスープと、漁師の一品、というようなものを頼む。夫おお外れ。前菜の魚のスープは3人前もあろうかという量でしかも大味。主菜は前菜に白身魚の切り身がいくつか入ったようなトホホな一品。オーダーしたときに助言してくれよ、と思う。これ以上食べられない、というぐらいに食べてデザートはアイスクリーム。満腹。疲労困憊。
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